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2023/10/25

サラリーマンにとって年末調整は毎年必要となりますが、個人事業主は確定申告をするので一般的には年末調整は不要です。

しかし、個人事業主でも年末調整が必要な場合があることをご存じでしょうか。

今回は個人事業主の年末調整と確定申告の関係について解説していきます。

ライター嶋崎の実物写真

【ライター】嶋崎
当サイトを運営している嶋崎と申します。
わたしは経営の経験はありませが、サイト運営に携わり約2年が経過するなかで、事業主のお金の悩みは特有であることを勉強してきました。
たとえば事業主へ実際にインタビューをしたり、実際にセミナーに参加したりするなどして、資金調達の流れやどのようなときにお金の不安を感じるのかを勉強しています。
資金繰りの悩みを解決するためのサービスをすべてを網羅するのは大変です。
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年末調整とは?

まず、年末調整はどのようなときに必要なのか、という点からみていきます。

年末調整で給与所得者の納税額を調整

会社員などの給与所得者は毎月の給与から所得税を差し引かれているので、基本的に個人事業主のように確定申告書の提出は必要ありません。

給与所得者が確定申告をするシステムにすると、税務署が人でいっぱいになり、処理が追い付かなくなります。

そのため税徴収を簡単に確実に実行する方法として、給与天引きという方法を採用しています。

しかし、給与所得者にも認められている税金の控除があるので、そのまま申告無しで処理をすると税金を納め過ぎてしまいます。

その調整方法として、年内に控除を申告して課税所得を調整するのが年末調整です。

年末調整対象者

年末調整の対象となる人は、1年を通じて勤務している人や中途採用され年末まで勤務している人で、青色申告の専従者も含みます。

例外となるのは次の人です。

  • 1年間に支払うべきことが確定した給与の総額が2,000万円を超える人
  • 災害減免法の規定により、その年の給与に対する所得税及び復興特別所得税の源泉徴収について徴収猶予や還付を受けた人

上記の例外はかなり特殊な例なので、一般的には1年を通じて勤務している従業員はすべて対象となります。

給与所得者の控除・経費

給与所得者の場合、自営業者に比べると認められる経費がほとんどないと言われていますが、そのかわり数多くの控除が認められています。

例えば給与所得者というだけで「給与所得者控除」が年収に応じて認められています。

源泉徴収票には収入金額のとなりに必ず「給与所得者控除後の所得金額」が記載されるので、それで「給与所得者控除額」を確認することができます。

それ以外にも次の各種所得控除が認められています。

  • 基礎控除(一律38万円)
  • 配偶者控除(一律38万円)
  • 配偶者特別控除(最大38万円)
  • 扶養控除(38万円~63万円)
  • 生命保険料控除(最大12万円)
  • 小規模企業共済等掛金控除(掛金全額)
  • 地震保険料控除(最大5万円)
  • 社会保険料控除(保険料全額)
  • 障害者控除(27万円~75万円)
  • 寡婦・寡夫控除(27万特定寡婦は35万円)
  • 勤労学生控除(一律27万円)

※( )内は所得控除額

上記の控除は年末調整時に控除対象となりますが、確定申告をしなければ認められない以下の控除もあります。

  • ふるさと納税などの寄附金控除
  • 医療費控除
  • 雑損控除

さらに住宅ローンを利用した場合、初年度は確定申告によって控除を受けることができ、次年度以降は年末調整で控除ができます。

なお控除額は所得税法の改正などで変わる可能性があるので、常に最新の情報で確認しましょう。

給与所得者の経費

サラリーマンは2012年の税制改正によって「特定支出控除」が認められています。

サラリーマンにはすでに給与所得者控除が認められていますが、特定支出は給与所得者控除の1/2以上なければ認められないのでハードルが高い控除です。

もともと給与所得者控除という経費が認められているので、それでは足りないくらいの経費が発生しないと認められないという趣旨があるためです。

特定支出として認められるのは以下のとおりです。

1.通勤交通費
2.転勤に伴う転勤費用
3.職務上で直接必要な技術・知識習得のための支出
4.職務上で直接必要な資格取得費用
 税理士や弁護士資格の取得費用も対象
5.単身赴任者の自宅との間の旅行のための費用(帰宅旅費)
6.下記の費用のうち65万円までの額(職務上直接的に必要な場合)
 ・書籍費用
 ・制服・事務服・作業着等の勤務場所で着用することが必要な衣服費
 ・交際費・接待費の内、職務上関係のあるものに対する費用(交際費)

年収500万円であれば、500万円×20%+54万円=154万円が給与所得者控除額となります。

特定支出は154万円÷2=77万円以上なければ認められません。

上記の対象から考えるとよほど高額な交通費や資格取得費用が必要となるので、サラリーマンが現実的に経費を認められるケースはそれほど多くないでしょう。

個人事業主が自分の所得を年末調整するケース

年末調整は給与所得者だけが行なう所得の調整方法なので、個人事業主は原則として自分の所得に関して年末調整を行なうことはありません。

しかし個人事業主でもアルバイトなどで給与所得がある場合や副業として個人事業を営んでいる場合は、年末調整をするケースもあります。

つまり、個人事業主が年末調整をするのは、給与所得があり給与所得者として行なう場合のみです。

個人事業主が自分の所得を年末調整するケース

個人事業主が営む事業とは別に給与所得がある場合、年末調整をしなければなりません。

その主なケースを紹介します。

アルバイトで給与所得があるケース

アルバイトやパートそしてお給料をもらっている場合は、年末調整をしなければなりません。

ただし実質年末調整を行うのは、アルバイト先の会社になります。

アルバイト先から必要書類の記入と提出を求められるはずなので、指示に従って年末調整を行いましょう。

年末調整ができるのは1社のみなので、2社以上を掛け持ちでアルバイトをしていた場合、年末調整をしない会社すべての源泉徴収票を持って確定申告を行う必要があります。

副業として個人事業を営んでいるケース

本業は会社員をしながら副業で個人事業を営み事業所得を得ている場合、本業で得ている所得の年末調整が必要です。

この場合、本業の給与のみ年末調整を行い、個人事業主としての所得は事業所得もしくは雑所得として計上、本業の会社からもらう源泉徴収票とともに確定申告を行います。

従業員の年末調整

個人事業主自身の所得を年末調整するのは、個人で営む事業とは別に給与所得がある場合でした。

ただ、実務としては給与をもらっている会社に書類を提出するのみなので、実際に年末調整を行っているのは個人事業主本人ではありません。

しかし、個人事業主が従業員を雇っている場合は、従業員の年末調整をしなければなりません。

年末調整は給与所得者であればアルバイトであっても必要となるので、個人事業主でもアルバイトや従業員の年末調整をする義務があります。

従業員を雇う前に従業員に対する年末調整に必要な基礎知識を身につけておきましょう。

年末調整のスケジュール

年末調整のスケジュールはタイトで時間的な余裕はありません。

そのためなるべく前倒しで行なうようにしましょう。

11月初旬

年末調整について従業員にアナウンスをして必要書類や証明書類を準備してもらいましょう。

11月下旬

個人事業主は税務署で次の各種書類を準備し、従業員に記入してもらいます。

12月下旬

事業主は12月の給与に年末調整後の所得税を反映させた給与を支払います。

年末調整によって毎月源泉徴収した年税額よりも低くなり、還付するのが一般的ですが、場合によっては徴収が必要なときもあります。

翌年1月10日

従業員から預かった徴収税額(源泉所得税)を税務署所定の納付書で納付します。

1月末日

従業員への源泉徴収票の交付や税務署・市区町村へ書類の提出が必要となります。

年末調整の必要書類

年末調整をするためには従業員も各種書類や証明書を準備する必要があります。

従業員に準備してもらう書類(スケジュール1)

 

  • 中途入社の場合、以前の会社の源泉徴収票
  • 生命保険料控除証明書
  • 地震保険料控除証明書
  • 国民健康保険、国民年金保険料の金額
  • 小規模企業共済・心身障害者扶養共済制度の掛金額
  • 住宅借入金等特別控除の明細書

事業者が準備して従業員が記入する書類(スケジュール2)

▼給与所得者の扶養控除等申告書
所得控除の対象となる扶養者や配偶者の状況について記載

▼給与所得者の保険料控除申告書
生命保険料、地震保険料などの保険料控除に必要

▼配偶者特別控除申告書
配偶者のパート収入等が141万円未満の場合必要

▼給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書
税務署の証明書と借入金の残高証明証を添付し提出(初回は確定申告が必要)

年末調整後に事業者が提出する書類

事業者は年末調整が終了すると、次は税務署や市町村へ源泉徴収税額の報告のために書類を提出します。

源泉徴収票

1社員につき4枚作成します。

1枚は本人に交付し、2枚は市区町村への提出用(給与支払報告書)、1枚は、会社保管用。

給与支払報告書

毎年市町村に源泉徴収票と同じ書式の給与支払報告書を提出。

法定調書合計表

毎年税務署に提出する法定調書合計表は、提出しないと懲役等の刑事罰を科される可能性もあるので注意しましょう。

記載する内容は次のとおりです。

A) 給与所得の源泉徴収票合計表
B) 退職所得の源泉徴収票合計
C) 報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書合計表
D) 不動産の使用料等の支払調書
E) 不動産等の譲受けの対価の支払調書
F) 不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書

 従業員の年末調整は個人も法人も同じ

個人事業主が従業員を雇っている場合に行う必要がある年末調整について見ていきましたが、今後個人事業を法人化した場合でもやることは同じです。

事業を大きくしていく計画があるのであれば、現在雇用している従業員がいなくとも、年末調整のやり方を覚えておきましょう。

年末調整や確定申告をサポートしてくれる会計ソフトの導入も要検討です。

まとめ

個人事業主と年末調整の関係についてはおわかりいただけたでしょうか。

個人事業主がアルバイトをしている場合や副業として事業を行なっている場合は年末調整は必須となります。

また従業員を雇っている場合、彼らの年末調整は事業者の義務となるので個人事業主もきちんとした知識を身につけましょう。

年に一度のこととはいえ、油断しないようにしてください。

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