2017/09/27

サラリーマンなど給与所得者は所得税額を毎月源泉徴収という方法で納付しています。

会社が社員の代わりに給与から差し引いて税務署に納めるので、会社員は直接申告する必要はありません。

個人事業主は自分の所得税を確定申告によって支払いますが、従業員を雇っている場合は源泉徴収する側になります。

今回は個人事業主と源泉徴収について解説しましょう。

源泉徴収が必要な場合・不要な場合

すべての個人事業主に源泉徴収が必要なわけではありません。

基本的に従業員やアルバイトを雇っている場合に源泉徴収が必要となりますが、それ以外にも源泉徴収が必要な報酬があります。

どんな場合に源泉徴収が必要となるか解説しましょう。

源泉徴収義務者とは?

根本的に源泉徴収をしなくてもよい個人事業主が存在します。

それは従業員や青色申告の事業専従者に給与を支払っていない個人事業主です。

家事使用人(家政婦)への給与や弁護士報酬といった報酬・料金だけの支払いだけであれば源泉徴収義務者にはなりません。

それに対して従業員などに給与を支払っている個人事業主は「源泉徴収義務者」となるので、報酬や料金に対しても源泉徴収義務があります。

つまり、源泉徴収の義務が生じるかどうかは従業員や専従者に給与を支払っているかどうかがポイントです。

同じ弁護士への報酬でも源泉徴収義務者でなければ源泉徴収は不要なのです。

例外としては水商売(バー、クラブなど)の個人事業主で、ホステスへの報酬に対しては源泉徴収義務者でなくても源泉徴収義務があります。

源泉徴収義務者はどんな支払いに源泉徴収が必要か?

従業員や専従者に支払う給与に源泉徴収の必要があるだけでなく、弁護士への報酬や料金にも源泉徴収義務があります。

どんな報酬や料金に対して源泉徴収が必要でしょうか?

■源泉徴収が必要な報酬等

  1. 原稿料、講演料、デザイン料、作曲料、指導料、通訳料など
  2. 弁護士、公認会計士などの特定資格者に支払う報酬
  3. 社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬
  4. プロスポーツ選手やモデル、外交員などに支払う報酬
  5. 芸能人や芸能プロダクションを営む個人に支払う報酬
  6. 旅館などの宴会で、客に接待をする仕事(ホステスなど)に支払う報酬
  7. プロ野球選手の契約金など
  8. 宣伝のための賞金や馬主に支払う競馬の賞金

基本的に支払う相手が法人の場合は、源泉徴収は不要です。

但し法人の馬主の場合は8のケースとして源泉徴収が必要となります。

大多数の個人事業主は上記の中でも1と2に気をつけていれば問題ないでしょう。

ちなみにカメラマンへの報酬は明記されていませんが、雑誌等の印刷物に掲載するために撮影した場合のみ源泉徴収が必要です。

源泉徴収から納付まで

具体的に源泉徴収はどのように計算して、いつまでに納付しなければいけないでしょうか?

具体的な計算方法から納付までを解説します。

従業員給与に対する源泉徴収税額の計算

従業員給与の源泉徴収額は「源泉徴収税額表」によって算出します。

源泉徴収税額表は3種類あり、給与の支払方法によって分けられています。

  • 月額表—- 月ごとに支払うもの半月ごと、または10日ごとに支払うもの、月の整数倍の期間ごとに支払うもの
  • 日額表—- 毎日支払うもの、週ごとに支払うもの、日割で支払うもの
  • 賞与—— 賞与(ただし、以下の場合は月額表を利用する)

前月中に普通給与の支払がない場合

給与が前月の普通給与の10倍を超える場合

最も一般的な月額給与の源泉徴収額の確認方法をご紹介します。

月額給与365,000円、社会保険料等50,587円、扶養家族2名の場合は月額表で下記のように確認します。

月額表は社会保険料などを差し引いた金額(365,000円-50,587円=314,413円)が該当する欄と、扶養家族の人数が交わる欄にある金額が月額給与の徴収税額となります。

報酬に対する源泉徴収税額の計算式

源泉徴収額は報酬金額が100万円以下と100万円超とで違いがあります。

■100万以下の場合

1,000,000円✕10.21%=102,100円

■100万円超の場合

(1,300,000円-1,000,000円)✕20.42%+102,100円=163,360円

基本的に源泉徴収税率は10%ですが、平成49年までは復興特別所得税が0.21%加わるので、復興税額も含めて納税します。

100万円超の場合は100万円を超えた部分に対して2倍の税率をかけて計算します。

源泉徴収税の納付方法と期限

源泉徴収した税金は「所得税徴収高計算書」に必要事項を記載して税務署または金融機関で納付します。

e-Tax(電子納税)でネット納付することも可能です。

納付期限は翌月10日となるので月末が給料日の場合はそれほど時間がないので注意しましょう。

ただし、毎月ではなく年2回にまとめて納付することもできます。

給与を支払っている人数が10人未満の個人事業主は「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出すると、年2回の納付ができます。

・1月~6月までの源泉所得税は、7月10日までに納付
・7月~12月までの源泉所得税は、翌年の1月20日までに納付

上記の納付は従業員の給与だけではなく弁護士などへの報酬に対する源泉徴収税の納付も行えます含みます。

給与の仕訳方法

複式簿記での給与の仕訳方法を簡単に説明しましょう。

給与は基本的に支給額から社会保険料などの控除の金額を差し引いて支払われます。

300,000円のうち社会保険料などが60,000円だとすると下記のように仕分けます。

その後社会保険料10,000円を支払ったときに、下記の仕訳を行ない預り金がなくなるまで仕訳を続けます。

青色申告では専従者給与の場合勘定科目は給与賃金ではなく「専従者給与」を使います。

なお白色申告での専従者給与は経費ではなく控除となるので、経費として仕訳はできません。

源泉徴収と関連して事業主が行なうこと

源泉徴収した所得税の納付以外にも関連して管理しなければならないことや提出する書類などがあります。

支払調書

個人事業主が特定の報酬を支払った場合、「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」を税務署に提出しなければいけません。

これは報酬の支払先がきちんと申告しているかどうかを税務署が確認するためにあります。

支払調書は源泉徴収義務者の個人事業主が下記の報酬を支払った場合に提出義務があります。

  1. 外交員、集金人、電力量計の検針人、プロボクサー、ホステスなどの報酬、料金、広告宣伝のための賞金(年間の支払合計額が50万円を超える場合)
  2. 馬主に支払う競馬の賞金(その年中の1回の賞金額が75万円を超えた馬主に関わる、その年中の全ての支払金額)
  3. プロ野球の選手などに支払う報酬、契約金(年間の支払い合計額が5万円を超える場合)
  4. 弁護士や税理士への報酬、作家やデザイナーの原稿料や画料、講演料など(年間の支払合計額が5万円を超える場合)
  5. 社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬(年間の支払合計額が50万円を超える場合)

一般的な個人事業主に関係するのは4の報酬でしょう。

年間の支払合計が5万円以上の場合は必ず支払調書を作成して提出しましょう。

マイナンバーの取得や管理

2016年1月からマイナンバーの利用が開始されています。

このマイナンバーは個人事業主が仕事をする場合や発注する場合、従業員を雇っている場合にも必要となります。

  • 受注時にマイナンバーが必要なケース

源泉徴収が必要な仕事を請け負う場合は報酬の支払元に自分のマイナンバーを提出する場合があります。

  • 発注時にマイナンバーが必要なケース

源泉徴収が必要な仕事を発注する場合も、支払先のマイナンバーが必要な場合があります。

支払先が法人の場合は「法人番号公表サイト」で法人番号(法人用マイナンバー)を調べることができます。

上記のケースいずれも支払調書作成義務がある場合に、マイナンバーが必要となります。

  • 従業員のマイナンバーを管理

パート・アルバイトを含む従業員のマイナンバーは個人事業主が取得して保管しなければいけません。

従業員のマイナンバーの保管が必要な理由は年金事務所や税務署に提出する書類に記載するためです(源泉徴収票、給与支払報告書、社会保険関係の書類など)

なお、個人事業主も2017年3月15日までの行なう確定申告書にはマイナンバーを記載します。

源泉徴収と消費税

源泉徴収がある場合の請求書や領収書は消費税もあるのでややこしくなります。

一度整理しておきましょう。

  • 請求書

税込みの報酬金額の場合はその金額に10.21%をかけて源泉徴収金額を算出します。

報酬金額と消費税が別の場合は、報酬金額に10.21%をかけます。

・消費税込み10,000円の報酬の場合 

10,000円(請求金額・消費税込み金額)✕10.21%=1,021円(源泉徴収額)

10,000円―1,021円=8,979円(実際の支払い金額)

・報酬額10,000円消費税800円の場合

10,000円(消費税別の金額)✕10.21%=1,021円(源泉徴収額)

10,800円(請求金額)-1,021円=9,779円(実際の支払い金額)

請求書に記載する場合は税込みの場合でも消費税と分けて記載するほうがていねいです。

  • 領収書

基本的に受け取った金額を記載するのが領収書ですが、源泉徴収金額は含めて記載します。

源泉徴収税は報酬を受け取ったあとで発生するものなので、報酬を受け取った時点の領収書の金額には直接関係ありません。

つまり報酬金額を受け取って領収書を発行し、後日源泉徴収税を相手に振り込むのを省略して相殺しただけなのです。

領収書には報酬金額を記載し、但し書きとして「但し、源泉徴収税○○円を含む」と記載しておきましょう。

消費税は市販の領収書でも内訳として記載できるようになっています。

源泉徴収と還付金

源泉徴収の税率は一律に10.21%として納付しますが、源泉徴収される報酬がある個人事業主は場合によっては還付金が発生することもあります。

還付金が発生するのは課税所得が少なく確定申告時に10.21%を下回る税率が適用されたとき、もしくは赤字の場合です。

その場合はすでに10.21%の税率で支払っているので、支払いすぎた税金が還付される可能性があります。

高額な医療費がかかるほど長期入院をした場合は、所得も下がるうえに医療費控除の金額も大きくなるので還付の可能性も高くなります。

源泉徴収金額があるときは、赤字の場合は必ず還付されます。

また控除には特に注意して確定申告書を作成しましょう。

まとめ

サラリーマンから個人事業主になった場合は源泉徴収される側から、源泉徴収する側になります。

実際に源泉徴収する側の立場に立つと、勤務していた会社側の苦労がよく分かることでしょう。

個人事業主によっては源泉徴収金額を支払う立場、徴収する立場の両方という場合もあります。

いずれにしても従業員を雇う立場になれば源泉徴収の知識は不可欠となります。

今はひとりで行なっている個人事業主でも、早めに源泉徴収に関する知識は身につけておきましょう。

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