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2019/10/09

助成金とは、国や地方自治体から、企業や個人事業主を支援する目的で支給される、返済不要のお金です。

返済する必要のないお金のため、中小企業や個人事業主の方は積極的に活用していきたいところですよね?

ところが、助成金についてあまり把握できていない経営者の方は多いのではないでしょうか。

「助成金って手続きが難しそう…」
「助成金の種類がありすぎて、どれを申請すればいいのかわからない…」

こんな不安があると、なかなか助成金に手を付けづらいですよね?

そんな方のために、この記事では、助成金の基本のキから、助成金の種類までわかりやすく解説していきます。

助成金は、返す必要がないのが大きなメリット!せっかくなので、助成金についてしっかり把握して、もらえるものはもらっておきましょう。

助成金とは?補助金との違い

助成金とは、厚生労働省や地方自治体が行う、企業や個人事業主に対する支援制度です。

助成金には様々な種類があり、それぞれの助成金ごとに要件があります。

要件を満たしている場合は、申請によって助成金が給付され、返済の必要はありません。

要件については、雇用に関するものや、社員教育、働き方に関するものが多くなっています。

雇用の安定化を目指す国から、雇用の安定化を推進する企業へのご褒美のようなものだと考えてみてください。

また、助成金と似た国や地方自治体の企業支援に、補助金制度があります。

補助金とは?

補助金とは、経済産業省や地方自治体が行う、企業や個人事業主に対する支援制度です。

国が掲げる事業者のための政策目標を達成するために、その目的に合った事業に取り組む企業や個人事業主を支援するのが、補助金の役割です。

補助金は助成金と同様に、要件を満たしていれば申請によって給付され、給付された補助金は返済する必要がありません。

補助金の金額は、補助事業にかかった経費に対して金額が決定します。

助成金と補助金の違い

ただし、補助金は助成金とは違い、要件を満たしただけでは給付されません。
要件を満たした事業の中から審査によって、給付すべき事業が選定されます。そのため、要件を満たしていたとしても、選定の結果次第では、補助金を受け取ることができないのです。

また、助成金が要件を満たした企業や個人事業主に対して給付されるのに対し、補助金は要件を満たした事業に対して給付されると考える方が適切です。

申請できる期間にも違いがあり、助成金は随時募集をかけているの対し、補助金は数週間から1ヶ月程度で募集が締め切られてしまいます。

助成金と補助金の違いを表にまとめたので、確認しておいてください。

助成金と補助金の違い
  助成金 補助金
運営元 厚生労働省、他 経済産業省、他
給付条件 あり
要件を満たせば給付
あり
要件を満たし、審査に通過できれば給付
目的 雇用の安定 経済の活性化
申請期間 通年 数週間程度~1ヶ月程度
給付対象 企業、事業主 事業

助成金の種類

助成金の基本が把握できたなら、続いて助成金にはどんなものがあるのかを紹介します。

助成金のメインは厚生労働省。その他にも各地方自治体や民間団体が行っている助成金制度もあるので、合わせて紹介します。

厚生労働省の助成金制度

助成金の種類は厚生労働省が管轄するものが最も多く、目的や対象となる事業者もさまざまです。

まずは、厚生労働省の助成金をご紹介します。

  • 新たに中小企業退職金共済制度に加入する等の事業主に対する助成
  • 業務改善助成金
  • 職場定着支援助成金
  • 最低賃金引上げに向けた中小企業への支援事業(業種別中小企業団体助成金)
  • 建設労働者確保育成助成金
  • 障害者福祉施設設置等助成金
  • 重度障害者等通勤対策助成金
  • 障害者能力開発助成金
  • キャリアアップ助成金
  • キャリア形成促進助成金
  • 雇用調整助成金

上記のように助成金といってもそれぞれ目的が違うので、厚生労働省の目的とマッチしていなければ助成金を受けることはできません。

まずは自社が対象となる助成金を探すことが先決となります。

地方自治体の助成金制度

役所イメージ

地方公共団体にも助成金制度があります。

その地域で発展させたい産業を中心に、補助金制度でさらに発展させようという目的があります。

地元産業に密着した事業を展開している企業であれば、各自治体の助成金を利用するのが最も近道です。

自治体別に助成金の一部をご紹介しましょう。

北海道 札幌型ものづくり開発推進事業(札幌市)
東北 青森県知的財産事業展開促進事業費補助金(青森県)
海外取引支援補助事業(秋田県)
発明考案奨励条例に基づく奨励金交付(山形県米沢市)
関東 埼玉県次世代産業参入支援事業費補助金(埼玉県)
中小企業外国出願支援事業(千葉県)
外国特許出願費用助成事業(東京都)

上記はほんの一部ですが、自治体によって特色がよく表れています。

例えば秋田県では日本酒や米を海外に広めようとする姿勢が、海外取引支援補助事業という形に現れているといえるでしょう。

このように助成金の目的にあった事業をしている場合は、比較的に簡単に助成金を受けることができます。

民間団体の助成金制度

主に企業が運営する助成金制度はNPO法人なども活用できるようになっています。

いくつかご紹介します。

  • アーティスト・クリエーターのための事務所等開設支援助成(アーツコミッション・ヨコハマ)
  • 学生を対象とした人材育成活動への助成事業(公益財団法人 電通育英会)
  • 環境NPO助成金(日立環境財団)
  • 環境市民活動助成制度(一般財団法人セブン‒イレブン記念財団)
  • 公益財団法人京都市国際交流協会助成事業

民間団体の助成制度は区や自治体以上にバラエティに富んでいる特徴があります。

民間企業の支援が多いため、事業資金ではなく社会貢献のための助成金制度であることがわかります。

活用しやすい助成金

ほとんどの中小企業が申請可能な助成金を例にとって、その申請から助成金の受取までの流れを解説します。

雇用促進につながる厚生労働省の助成金「キャリアアップ助成金」は、従業員を持つ企業であればどこでも活用できる可能性があります。

非正規雇用労働者から正規雇用労働者へ雇用形態をキャリアアップすることで補助金が給付されます。

対象となる企業

キャリアップ助成金の対象となるのは一定規模以下の中小企業です。

業種によって対象となる規模が違うのでよく確認しておきましょう。

小売業(飲食店含む) 資本金の額・出資の総額:5,000万円以下
常時雇用する労働者の数:50人以下
サービス業 資本金の額・出資の総額:5,000万円以下
常時雇用する労働者の数:100人以下
卸売業 資本金の額・出資の総額:1億円以下
常時雇用する労働者の数:100人以下
その他の業種 資本金の額・出資の総額:3億円以下
常時雇用する労働者の数:300人以下

キャリアアップ助成金に限らず、助成金制度は対象企業が明確に決まっているので、自社が対象になるかどうかは必ず確認しましょう。

キャリアアップ助成金の制度内容

キャリアアップ助成金には7つのコースがあるので、それぞれチェックして自社の状況にあっているコースを選びましょう。

  1. 有期契約労働者等の正規雇用労働者・多様な正社員等への転換等を助成する「正社員化コース」
  2. 有期契約労働者等の賃金規定等を改定した場合に助成する「賃金規定等改定コース」
  3. 有期契約労働者等に対し、労働安全衛生法上義務づけられている健康診断以外の一定の健康診断制度を新たに規定し、適用した場合に助成する「健康診断制度コース」
  4. 有期契約労働者等に関して、正規雇用労働者と共通の職務等に応じた賃金規定等を新たに設け、適用した場合に助成する「賃金規定等共通化コース」
  5. 有期契約労働者等に関して、正規雇用労働者と共通の諸手当に関する制度を新たに設け、適用した場合に助成する「諸手当制度共通化コース」
  6. 労使合意に基づき社会保険の適用拡大の措置を講じ、新たに被保険者とした有期契約労働者等の基本給を増額した場合に助成する「選択的適用拡大導入時処遇改善コース」
  7. 短時間労働者の週所定労働時間を5時間以上延長し、当該労働者が新たに社会保険適用となった場合に助成する「短時間労働者労働時間延長コース」

この中から正規雇用転換コースを選択したとして、制度の詳細や申請方法を解説していきます。

正社員コースの詳細と申請方法

有期雇用・無期雇用の従業員を正社員に転換、または直接雇用したとき、勤務地限定正社員や時短正社員など、多様な働き方に合致した正社員に転換したときに助成金が支払われます。

正社員化コースの支給条件は、以下の条件を満たした従業員を正社員に転換させたときです。

正社員コースの条件

  • 雇用期間が通算して6ヵ月以上の有期契約労働者
  • 雇用期間が6ヵ月以上の無期雇用労働者(下記4に該当する者を除く)
  • 同一業務に6ヵ月以上継続して労働者派遣に従事している派遣労働者
  • 事業主が実施した有期実習型訓練を受講し、修了した有期契約労働者等

正社員化コースの支給額

正社員化コースの支給額は以下の通りです。

  中小企業での支給額
(1人当たり)
中小企業以外での支給額
(1人当たり)
有期雇用労働者を
正規雇用へ転換
57万円<72万円> 42万7,500円<54万円>
有期雇用労働者を
無期雇用へ転換
28万5,000円<36万円> 21万3,750円<27万円>
無期雇用労働者を
正規雇用へ転換
28万5,000円<36万円> 21万3,750円<27万円>

※<>は生産性の向上が認められた生産性要件に該当する場合、上乗せで支給してもらえる金額になります。

なお1年度あたり1事業所で、上記3要件合算で支給申請上限人数20人までと決まっています。

さらに、派遣社員を正規雇用、ひとり親世帯を正規雇用または無期雇用へ転換させた場合はさらに加算が発生します。

正社員化コース申請の流れ

正社員化コースの申請は以下の流れで行います。

対象労働者を6ヶ月以上雇用(入社時に正規雇用にすると約束するのは不可)
キャリアアップ計画書の作成および提出
就業規則の整備
該当従業員の正社員等への転換
転換後の賃金を6ヵ月分支給した日の翌日から起算して2ヵ月以内に申請する

その他のコースに関しても、以下の記事で詳しく解説しているので、キャリアアップ助成金を申請する前に確認しておいてください。

助成金の申請と受給

基本的に助成金は実施後に給付されるので、助成金をもらってから実施するということはできません。

あくまで実施したことに対して助成金の給付が行われるのです。

事前にキャリアアップ計画書を作成し認定を受けてから、計画書通りに6ヶ月間給与を支払います。

それから支給申請をして審査後に助成金が振り込まれます。

なお制度に関する問い合わせは労働局やハローワークで受け付けています。

助成金申請のポイント

補助金の場合は審査があるので、審査を通過するコツなどがあるかもしれませんが、助成金にはありません。

対象となる事業者なのか、助成制度の内容に沿って実施されているかどうかがポイントです。

助成制度の内容どおりに実施すれば、確実に助成金が給付されるので、事前に情報をよく調査することが重要となります。

その意味では助成金のほうが補助金に比べて利用しやすいので、補助金の趣旨に沿った利用であれば積極的に活用しましょう。

助成金にも税金がかかる

助成金は返済の必要がない国や自治体からの援助金という意味があるので、税金がかかるというのは納得出来ないかもしれません。

しかし経理上は収入扱いとなるので、正しい処理をしないと計上漏れで延滞税がかかることになります。

また、申請してから受給するまでにタイムラグがあるので、期をまたいでしまうこともあるので注意しましょう。

1,000,000円の助成金を受け取った場合の処理は次のとおりです。

助成金決定通知書が届いた日付で、下記の処理をします。

借方 貸方
未収金 1,000,000円 雑収入 1,000,000円

その後1,000,000円が普通預金に振り込まれたときに下記の処理をします。

借方 貸方
普通預金 1,000,000円 未収金 1,000,000円

これで期をまたいだとしても適正な処理が行われます。

まとめ

特に小規模事業者は助成金の基礎知識を身につけて十分活用できるようにしましょう。

税金の対象になるとはいえ、返済の必要がない事業資金は経営にとって大きなプラスとなります。

助成金は公募期間もなく申請しやすいというメリットがあるので、助成金を活用して経費の節減に努めましょう。

また、キャリア形成促進助成金やトライアル雇用奨励金等は個人事業主でも受け取ることができる助成金です。

個人事業主の方も、「自分には助成金はまだ早い」とは思わずに、まずは要件を満たしている助成金がないか探してみることからはじめてみてください。

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