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2023/11/21

助成金や補助金は、国や地方自治体から付与される給付金です。
そのため、企業にとっては返済の必要がない資金調達方法として活用していきたいところ。

その一方で、申請のための手続きが複雑だったり、会計処理や税務処理が面倒だったりするのが助成金・補助金です。

手続きや仕訳の事を考えると、せっかくもらえる助成金・補助金があっても、その申請を後回しにしている経営者・事業主さんも多いのではないでしょうか。

どうせ助成金や補助金を受けるのなら、もらった後の仕訳までスムーズに進行させたいですよね?

そこでこの記事では、助成金と補助金の仕訳についてわかりやすく解説していきます。

補助金にかかる法人税を繰り延べできる圧縮記帳についてもしっかりと解説します。
ここで助成金と補助金に対して感じている壁を壊してしまいましょう!

ビズローン編集長の田中です

ビズローン編集長:田中
当サイト「ビズローン」の運営をしております、田中と申します。
中学3年生のとき、父親の借金によって家庭が崩壊・・・。
その後、母親の勤務している医療法人の奨学金制度を利用して4年制大学へ。
毎月5万円ずつの奨学金の返済を継続中。
しかし、この借金を背負ってでも、大学に行った経験はかけがえのないものとなっています。
借金の酸いも甘いも知るオトコとして、みなさんの資金調達のお困りごとを解決するサポートをしていきます!

ライター嶋崎の実物写真

【ライター】嶋崎
当サイトを運営している嶋崎と申します。
わたしは経営の経験はありませが、サイト運営に携わり約2年が経過するなかで、事業主のお金の悩みは特有であることを勉強してきました。
たとえば事業主へ実際にインタビューをしたり、実際にセミナーに参加したりするなどして、資金調達の流れやどのようなときにお金の不安を感じるのかを勉強しています。
資金繰りの悩みを解決するためのサービスをすべてを網羅するのは大変です。
一から資金繰りの悩みを調べずとも、「ビズローンで解決できた」が叶うように、全力でサポートします。

助成金・補助金とは

助成金や補助金は国や地方自治体が事業者に対して給付する資金の事を言います。

融資ではないため利息はもちろんなく、返済する必要もないという点が大きなメリットですね。

助成金と補助金は基本的に国や自治体が給付する資金という点で大きな違いはありません。

しかし、給付の仕方など細かい点で違いがあるので、その違いを含めてまずは助成金について説明します。

助成金とは

助成金は主に厚生労働省が人材育成、雇用増加を目的として給付する資金です。

助成金はほぼ1年中申請することが可能で、補助金に比べて条件さえクリアすれば支給されるのでハードルが低いというメリットがあります。

厚生労働省の各種助成金については下記のサイトを参考にしてください。

各種助成金・奨励金等の制度|厚生労働省

補助金とは

補助金も助成金と同じで国や自治体が給付する資金ですが、助成金と比べるとややハードルが高くなります。

その理由は予算が決められているため基準を満たした上で、審査を受ける必要があるからです。

しかも募集回数も少なく募集期間も短いので倍率も高く、合格率は40%前後とも言われています。

しかし、助成金と比較すると以下のメリットもあります。

  • 種類が豊富
  • 助成金と比べると比較的支給額が大きい
  • 助成金は使い道が限られるが、補助金は経費の適用範囲が広い

補助金と助成金のどちらを利用するかは必要な資金の内容によって違いますが、もちろんどちらも同時に利用することもできます。

参考までに中小企業庁の補助金については以下のサイトをご覧ください。

中小企業庁:補助金等公募案内

助成金・補助金給付後の会計処理

助成金と補助金には内容や条件に違いもありますが、国や自治体から支給される資金という点では同じです。

そのため会計処理の仕方には違いがありません。

補助金・助成金は借り入れではないので、基本的に収入として取り扱います。

ただし、本業の売上による収入とも違うので、「雑収入」という勘定科目で処理をします。

借方 貸方
2019.10.1 普通預金または
当座預金
100万円 2019.10.1 雑収入 100万円

上記の表は助成金・補助金が口座に入金されたときの仕訳方法です。

口座の種類は入金された口座の種類を記載し、助成金・補助金も「雑収入」で処理します。

助成金・補助金も給付が決定されてから、実際に振り込まれるまで時間がかかります。

これは給付条件を完全に満たしてから事後の給付となるからで、長い場合は1年以上かかるのが現状です。

そのため、給付決定から給付まで決算期をまたいでしまうことも普通にあります。

決算期をまたいだ場合の処理方法は後述します。ここでは入金されたときの勘定科目を覚えておいてください。

仕訳する方法と注意点

助成金や補助金を仕訳する場合の勘定科目について、収入として扱うと説明しました。

しかし、同じ収入でも助成金や補助金は売上による収入とは少し事情が違いますよね。

その違いは仕訳する場合にも意識する必要があります。

特に大きな違いは助成金・補助金が支給されるまでの期間が長いという点なので、まずはこの点から解説します。

給付のタイミングが決算期をまたぐ場合(給付まで長期間となる場合)の処理

助成金・補助金を仕訳するタイミングは、国や自治体から「支給決定通知書」が到着したときです。

しかし、決定通知書が届いてから実際に支給されるまでは、長期間かかるのが一般的です。

場合によっては、助成金・補助金が実際に支給されるタイミングが決算期をまたいでしまうこともあるので、通知書が届いたときに以下の仕訳をします。

借方 貸方
2019.10.1 未収金 100万円 2019.10.1 雑収入 100万円

上記のように「雑収入」の科目ではなく「未収金」として計上します。
そして実際に支給された日付で以下のように処理をしましょう。

借方 貸方
2019.10.1 普通預金 100万円 2019.10.1 未収金または
長期未収金
100万円

助成金・補助金が給付されるタイミングが決算期をまたぐ場合の会計処理の注意点は、決算期をまたぐことがわかっている場合でも支給される決算期になってから計上するのではないという点です。

たとえ1年以上先に支給される補助金であっても、通知書が届いたときに未払金として計上するのが正しい処理方法だという点を忘れないようにしましょう。

また法人の場合、1年を超える未収金については「長期未収金」として処理をします。

こうすることで「未収金」は流動資産、「長期未収金」は固定資産として区別されることになります。

ただし個人事業主の青色決算報告書では、固定資産と流動資産を区別する必要はありません。

総額主義とは

助成金・補助金の使い道は大きく分けて経費に充当する場合と、固定資産を購入する場合があります。

ここで考えられるのは、経費に充当する場合に補助金等と経費を直接相殺してしまえば処理が楽になるのではということです。

しかしこの考え方は企業会計の原則である総額主義に反する考え方なのです。

総額主義は損益計算書において、費用と収益を総額で記載する方式になります。

補助金を個別に経費などと相殺してしまうと、第三者が見たときにいくらの売上があっていくらの経費があったのか、その流れがわかりません。

総額主義で処理することは法律で義務付けられたものではありませんが、企業の決算書は株主のために決算内容をわかりやすく記載する必要があります。
そのため法人の場合は総額主義で処理するのが一般的です。

助成金・補助金に関する税金

助成金・補助金であっても収入であることは間違いないので、当然課税対象になります。

個人事業主であれば所得税、法人であれば法人税の対象です。

ただし、消費税に関しては助成金・補助金は非課税となっています。

国や自治体が事業者に援助をした資金に税金がかかるというのは、納得できないという人もいるかもしれませんね。

しかし、実際に法人税法や所得税法でも、助成金・補助金は非課税という規定はないのです。

これには明確な理由があります。結論から先に言いましょう。

助成金・補助金を所得税や法人税の非課税としてしまうと、支給を受けた事業者が二重に得をしてしまうからです。

もし非課税の助成金があってそれを人件費に充当したとします。

助成金には税金がかからず、人件費という経費も税金の対象にならないので、二重に得をしてしまうということがわかります。

一方で助成金・補助金に課税されてもその使い道は経費として認められるので、事業者は余分に税金を払うことはありません。

ただし、助成金・補助金を経費にしたときではなく、固定資産を購入した場合は少し事情が違いますよね。

というのは、経費の場合は助成金・補助金の支給を受けた同じ年度に全額経費計上ができるから。

固定資産を購入した場合は、減価償却によって毎年少しずつ経費計上することになりますね。

そのため補助金の給付年度に一時的に税金が増えてしまっては、肝心の固定資産を購入できないこともありえます。

これを回避する方法が次に解説する「圧縮記帳」です。

仕分けするときの注意点まとめ

仕分けするときの注意点をお伝えしましたが、分かりやすくまとめてみました。

助成金・補助金が給付されるタイミングが決算期をまたぐ場合の会計処理の注意点

  • 決算期をまたぐことがわかっている場合でも支給される決算期になってから計上するのではない
  • 1年以上先に支給される補助金であっても、通知書が届いたときに未払金として計上するのが正しい処理方法だという点を忘れないように
  • 法人の場合、1年を超える未収金については「長期未収金」として処理

経費に充当する場合と、固定資産を購入する場合の注意点

  • 第三者が見たときにいくらの売上と経費があったか流れがわかるように、補助金と経費はまとめて計算(個別にしない)
  • 法人の場合は株主のために決算内容をわかりやすく記載する必要が総額主義(損益計算書に費用と収益を総額で記載する)で処理・

助成金や補助金を受けたときの税金に関する注意点

  • 補助金や助成金は課税対象となり個人事業主であれば所得税、法人であれば法人税の対象になる。
  • 課税対象ではあるものの消費税の課税対象ではない。
  • 課税対象の理由としては助成金や補助金を所得税や法人税の非課税としてしまうと、支給を受けた事業者が二重に得をしてしまうから税金がかかる。

補助金で固定資産を購入した場合の圧縮記帳とは

圧縮記帳は補助金を受け取った年度に一度に課税されることを回避する方法です。

課税を完全に回避する方法ではなく、次年度以降に繰り越す方法なので間違えないようにしましょう。

それでは具体的な例で、圧縮記帳をした場合としない場合を比較してみましょう。

1,000万円の設備機器(科目:機械装置)を補助金400万円と現金600万円で支払った場合

1,000万円の設備機器(科目:機械装置)を補助金400万円と現金600万円で支払った場合を例として。圧縮記帳する場合としない場合を考えてみます。

 A)圧縮記帳をしない場合(通常の処理)

設備機器の購入に関しては1,000万円の現金で購入したという処理をする。

補助金の受取から設備機器の購入までの会計処理は以下の通り。

日付 借方 貸方
2019.10.1
(給付日)
普通預金 400万円 雑収入 400万円
2019.11.1
(購入日)
機械装置 1,000万円 普通預金 1,000万円

減価償却費を定率法の償却率0.25で計算すると、初年度は250万円となる。

減価償却費:250万円
法人税(40%):(400万円-250万円)×40%=60万円

補助金も収入となるので、その収入に対する法人税の対象額は上記の通り60万円。

つまり400万円の補助金を受けても340万円(400万円-60万円)に目減りすることになる。

 B)圧縮記帳による処理

圧縮記帳をした場合の処理は以下の通り。

日付 借方 貸方
2019.10.1(給付日) 普通預金 400万円 雑収入 400万円
2019.11.1(購入日) 機械装置 600万円 普通預金 600万円
固定資産圧縮損 400万円 機械装置 400万円

上記の場合の減価償却費は以下の通り。

減価償却費=(1,000万円-400万円)×0.25=150万円

減価償却費はAよりも減額される上に圧縮損を計上しているので、助成金400万円が相殺されて、収入は0円。

減価償却費150万円分の赤字となるので課税対象外、助成金の目減りはない。

上記ABを比較すると少なくても助成金を受け取った年度に、まとめて課税されるということがないので固定資産の購入に影響はありません。

補助金を受け取って消費税がかかる場合とは

補助金は消費に関わるものではないので原則として消費税の対象外となります。

ただし場合によっては消費税分を国や自治体に返還するケースがあります。

つまりこの場合に限っては消費税を負担するのと同じということになりますよね。

補助金を受け取って実質的に消費税がかかるのは以下のケースに限られます。

  • 補助金を受け取った事業者が消費税の課税事業者
  • 原則課税方式で申告している
  • 仕入税額控除をしている

消費税は消費者が負担をして事業者が納付する仕組みです。

課税が義務付けられる課税事業者が「原則課税方式」で申告していると、受け取った消費税から仕入れで支払った消費税を控除できます。

これを仕入税額控除と呼んでいます。

しかし助成金で機械設備を購入(仕入)した場合に仕入税額控除してしまうと、課税売上がないのに仕入税額控除を受けることになります。

したがって上記の条件を満たす場合は、助成金を給付した国や自治体に消費税額分を返還する義務が生じるのです。

消費税額は現在10%なので、補助金を1割増しにすることはできないということですね。

なお、返還しなかった場合にはペナルティを受ける可能性もあるので注意しましょう。

まとめ

今回の記事では助成金・補助金の仕訳を中心に以下の項目を解説しました。

  1. 助成金・補助金を給付されたときの会計処理
  2. 仕訳するときの注意点
  3. 補助金で固定資産を購入した場合の圧縮記帳とは
  4. 補助金を受け取って消費税がかかる場合とは

助成金・補助金の会計処理では助成金や補助金の解説をしています。

また、助成金・補助金の勘定科目は原則「雑収入」にすることは覚えておきましょう。

仕訳するときの注意点では決算期をまたぐ場合の処理、総額主義、や税金に関する点を解説しています。

いずれも重要なのでよく理解しておきましょう。

また、圧縮記帳は助成金による一時的な課税を、先送りにできる重要な手法なのできちんと覚えることが大切です。

例外として補助金にも消費税がかかるケースがあることも覚えておきましょう。

この記事を読むことで、助成金・補助金の仕訳の知識を身につけていただければ嬉しいです。