2017/07/31

事業性融資を受けられる金融業者といえば、銀行、信用金庫等の金融機関、あるいは消費者金融やビジネスローン会社等の金融会社、さらに公的機関である日本政策金融公庫まで色々あります。

しかしあまり一般的に知られていない融資制度があり、それが都道府県あるいは市区町村等の地方自治体が運営している制度融資です。

今回はその制度融資に焦点をあてて、その仕組みや利用上のメリット・デメリット、さらに同じ公的融資である日本政策金融公庫の融資と比較しながら、制度融資を詳しく解説します。

制度融資とは?

制度融資とは地域の産業経済振興や企業の育成等を目的に、地方自治体によって作られている信用保証協会保証付き融資のシステムです。

制度融資の当事者は、地方自治体である都道府県や市区町村、融資申込者である中小企業や個人事業主等の小規模企業者、銀行・信用金庫等の民間金融機関、そして公的機関である信用保証協会です。

・地方自治体
・事業者
・金融機関
・信用保証協会

制度融資利用の申し込みを受けた地方自治体は、地域の民間金融機関に対し制度融資のあっせんを行い、金融機関はその融資に対し、信用保証協会から公的な債務保証をしてもらうことで融資に応じます。

こうすることで、中小企業者は長期で低利・固定の金利の融資を受けられ事業資金として活用できる一方、銀行等は信用保証協会の保証を得て、事業者の経営リスクをあまり考慮することなく、融資に応じるメリットがあります。

制度融資の特徴とは?

制度融資が公的金融機関の日本政策金融公庫や銀行等の民間金融機関と異なる点は、預託金や利子補給がある点です。

ここで預託金とは、地方自治体から制度融資に応じてくれる金融機関に対し、融資額に応じて税金から預けられる預金で、制度融資の原資として活用できるのでその分金融機関の負担が軽くなります。

また利子補給とは、同じく地方自治体が、本来利用者が支払うべき制度融資に掛かる金利や保証協会に必要な保証料の支払い負担分の一部をカバーするために使うもので、その原資も我々の税金です。

これらの仕組みがうまく機能することで、制度融資の申込者は低金利の融資を安心して利用することができるのです。

制度融資の流れと申し込み方法

制度融資のチャート図

制度融資の流れと解説

【1】会社経営者・個人事業主は、事業所がある地域の地方自治体の制度融資取扱窓口から融資の申し込みを行います。

【2】申し込みを受け付けた自治体窓口は、書面審査を行い申込者が制度融資の対象要件(資本金、従業員数、融資限度額等)に合うかどうか確認の上で、合格なら地域の民間金融機関向けに紹介状もしくはあっせん書を発行します。

【3】あっせん書等の交付を受けた申込者は、自分の取引銀行かまたは地方自治体から紹介を受けた金融機関に出向き、あっせん書・紹介状等を呈示して制度融資の申し込みをします。

また申し込みを受け付けた金融機関の担当者は、審査に必要な必要書類を申込者に依頼するとともに、必要なら事業計画書等の作成要領についてアドバイスも行います。

また制度融資は一般的に信用保証協会の保証付き融資なので、信用保証協会用の提出資料も金融機関が顧客からの書類を基にして準備します。

【4】全ての審査書類が整ったところで、金融機関は地域の信用保証協会に向けて書類を送付します。

また書類を受け取った信用保証協会は審査を行い諾否を決定するとともに、必要に合わせて申込者を保証協会に呼び出し面談しながら申込内容の確認・精査を行います。

【5】最終的に保証が決定されると、信用保証協会は金融機関宛て保証書の発行を行います。

また保証の通知を受けた金融機関では改めて行内で審査を行い最終的な金融機関としての諾否を決定します。※

【6】全ての審査の手続きを終えた金融機関は、申込者と融資契約を締結し、本人の銀行取引口座に融資を実行して振込します。

※現在民間金融機関と信用保証協会の間には責任共有制度というものがあります。

以前信用保証協会の保証融資で取り扱いしていた分は全て100%保証でしたが、2007年10月以降この制度が改定され、新しく責任共有制度が取り入れられました。

その結果、一部の100%保証の協会付き融資を除き、金融機関も保証協会付き融資に対して20%相当のリスクを責任共有しなくてはならなくなりました。

そのため、地方自治体の制度融資と言えど、仮に信用保証協会が融資にゴーサインを出しても、上記の理由から金融機関によっては融資に応じないなど、対応が異なることもありますので注意が必要です。

制度融資のメリット・デメリット

制度融資を受ける企業側のメリット・デメリットについてまとめてみました。

メリット

【1】低利の固定金利融資が長期間利用できる

【2】信用保証協会の公的保証が受けられることで、起業・開業で営業実績がない場合やあるいは民間金融機関に対して信用力に乏しい事業主でも利用できる

【3】制度融資によっては、金利・保証料の本人支払い分の一部を地方自治体がカバーしてくれる融資もある

【4】返済方法において、他の民間金融機関の融資では、元金を支払わないで良い据置期間が短いか、あるいはない所が多いが、制度融資では平均して6ケ月~1年間据置期間が設定でき、融資当初の返済条件が緩和されている

【5】原則として担保保証に関しては無担保で融資が受けられる(大きい融資額の制度融資は担保が必要になるケースがある)

デメリット

【1】制度融資の仕組み上、当事者の数も多く、審査から融資実行まで2ケ月以上時間が掛かることが多いので、融資を急ぐ人には不向きな融資である

【2】他の金融機関融資に比べて、制度融資は資金調達方法で自己資金の求められる割合が高くなっており、条件面で使いづらい面がある(事例として総必要額の20%~50%自己資金が必要な場合がある)

制度融資のご案内

信用保証協会というのは信用保証協会法に基づき設立された公益法人で現在全国に51法人あり(著者調べ)、またその保証対象事業も幅広くほぼ全分野をカバーしています。

そのため、各地方自治体が運営している制度融資についても、基本的に信用保証協付き融資であることから、ほとんどの自治体にあります。

ただし、自治体の規模や地域によって制度融資のスペックは様々であり、一律に解説することには無理があります。

そこでここでは地方自治体のうち、地域の事業先数も多く、その影響力も大きい東京都と大阪府の制度融資で、中小企業経営者や小規模事業者、あるいは開業予定者に利用できる融資を一部抜粋してご案内いたします。

なお、各地方自治体の制度融資については、地域の地方公共団体サイトの関連ページを参考にして下さい。

東京都の制度融資

制度融資名 小口零細企業保証制度
資金使途 運転・設備資金
融資限度額 1,250万円
融資利率(年) 固定金利 ・3年以内年1.9%以内
・3年超5年以内年2.1%以内
・5年超7年以内年2.3%以内
・7年超年2.5%以内
変動金利 短プラ+年0.7%以内
返済方法 分割返済(元金据置期間は6ケ月以内)
融資形式 証書貸付
保証料率 信用保証協会の所定利率
信用保証料補助 信用保証料の2分の1
連帯保証人・保証人 ・個人は原則不要
・法人は法人代表者のみ必要
※関連記事サイト:東京都産業労働局

大阪府の制度融資

制度融資名 開業サポート資金
資金使途 新規開業資金またはその後に必要な運転資金・設備資金
融資限度額 1,000万円
融資期間 7年以内
返済方法 毎月元金均等分割返済(据置期間12ケ月以内)
貸付形式 証書貸付
金利 年1.4%(固定金利)
保証利率 年1.0%
自己資金要件 事業開始に必要な総資金の5分の1の自己資金を持っていること
金利優遇あり 女性、若者(35歳未満)、シニア(55歳以上)等は定率より0.2%割引
連帯保証人・保証人 ・個人は原則不要
・法人は法人代表者のみ必要
※関連記事サイト:制度融資(大阪府)

日本政策金融公庫の融資

日本政策金融公庫とは ? またその特徴は ?

同じ融資を取り扱う金融業でも民間金融機関と異なり、幅広い業種、種々な段階の事業主を支援する公的金融機関があります。

それが日本政策金融公庫です。

日本政策金融公庫は、2008年にそれまで融資対象別に分かれていた国民金融公庫、中小企業金融公庫、農林漁業金融公庫が合体されて設立された国100%出資の特殊法人です。

日本政策金融公庫の融資の特徴は、一般的な融資だけでなく、起業・開業前でまだ事業実績もない企業家に対する創業資金や、会社設立後数年以内で事業実績に乏しい事業先にも積極的に融資を行っている点です。

もちろん事業開始前から融資に応じてくれるので、創業者や中小企業事業家には大変頼もしい融資機関です。

ただし日本政策金融公庫で融資を受けるのに最も重要な点は、「どのような目的にどの位資金が必要になるか」について、きちんと合理的な説明が含まれた創業計画書あるいは事業計画書を提出することです。

書類について厳格な審査をするのが日本政策金融公庫の特徴なので、あいまいな計画書では融資は通りません。

場合によっては顧問の税理士や中小企業診断士等、専門家のアドバイスを受けて事業計画書を作成したほうが、多少指導料を負担したとしても結局早く融資を受けられる近道になります。

日本政策金融公庫の融資制度

日本政策金融公庫・国民生活事業部で中小企業者が利用できる融資のうち、目的別にいくつかの融資をピックアップして一覧表にまとめたのでご覧下さい。

  融資制度名 利用対象者 融資限度額 融資期間
(うち据置期間)
普通貸付 普通貸付 事業を営む方(ほとんどの業種に対応) 4,800万円 運転資金7年以内(1年以内)
設備資金10年以内(2年以内)
企業活力強化貸付 企業活力強化資金 卸売業、小売業、飲食サービス業、サービス業、または不動産賃貸業で店舗の新築・増改築や機械設備の導入を行う方 7,200万円(うち運転資金4,800万円) 運転資金7年以内(2年以内)
設備資金20年以内(2年以内)
新企業育成貸付 新規開業資金 新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方 7,200万円(うち運転資金4,800万円) 運転資金7年以内(2年以内)
設備資金20年以内(2年以内)
企業再生貸付 企業再建資金 中小企業再生支援協議会の関与もしくは民事再生法に基づく再生計画の認可などにより企業の再建を図る方 7,200万円(うち運転資金4,800万円) 運転資金20年以内(2年以内)
設備資金20年以内(2年以内)

なお詳しい融資制度については、日本政策金融公庫のページを参照下さい。

また関連する金利についてはこちらです。

地方自治体の制度融資と日本政策金融公庫融資の比較

【1】どちらも同じ公的融資であるが、日本公庫融資は直接貸付であるため、複数の機関の審査を必要とする制度融資に比べて審査から融資実行までが短い。

日本公庫融資では平均して1~2ケ月、地方自治体の制度融資では2~3ケ月必要である。

【2】金利は日本公庫融資の場合、低利の固定金利だが、制度融資では低金利の上にさらに利子補給、保証料の一部カバーなど税金からの補てんもあり、融資のタイミングや各自治体のスペック次第で日本公庫融資より安く借れる。

【3】必要な総融資額に対して、制度融資の方が日本公庫融資より自己資金の要求される割合が高い場合が多い。

【4】返済方法において、制度融資も元金返済の据置期間6ケ月~1年と長く取れてメリットがあるが、日本公庫融資では最長2年まで据置期間が取れるのでさらに返済面が弾力的である。

【5】創業資金融資に関しては、日本公庫の貸出実績が多く、同じ創業資金を申し込みした場合、日本公庫の場合が地方自治体の制度融資よりも借れる可能性が高い。

まとめ

制度融資について、その仕組みとメリット・デメリット、および利用上の注意点、さらに日本政策金融公庫の融資と比較して両者の特徴を解説してきましたがいかがでしたか。

制度融資はあまり一般的に知られていないこともあり、また他の融資に比べて手続きがやや複雑な面もあって、利用するのを敬遠される方もいると思います。

しかしうまく活用すれば、低金利でかつ利用上の特典がたくさんあるので、使い方次第では事業者の資金調達においてとても頼もしい味方になると考えます。

しかしとにかく実際利用してみないことにはその良さも分かりません。

制度融資の利用を考えている方は、まずは近くの地方自治体の専用窓口へ出かけて、じっくり時間をかけて利用相談されることをおススメします。

関連記事