国民金融公庫は1999年10月1日まで存在していた政策系金融機関です。
間に国民生活金融公庫(国金)を挟んで現在は日本政策金融公庫に業務を引き継いでいます。
今回は国民金融公庫が果たしてきた役割や、日本政策金融公庫に業務移管した内容などを歴史とともに考察した上で、日本政策金融公庫の融資制度をご紹介しましょう。
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【ライター】嶋崎 -
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政策金融公庫の変遷
1949年6月1日に国民金融公庫が設立し、それ以前にあった庶民金庫および恩給金庫の業務を継承しています。
さらに1967年9月2日に環境衛生金融公庫法に基づいて設立した環境衛生金融公庫を吸収して、1999年10月1日国民生活金融公庫法に基づいて国民生活金融公庫が設立しています。
政策金融はその時代によって目的が違ってくるので、時代の節目で法律を新設して適切な政府系金融機関の設立をしています。
国民金融公庫の設立と目的
国民金融公庫の設立目的は下記のようなものでした。
「銀行その他の金融機関から融資を受けにくい小企業や個人に対し、必要な小口の事業資金などを融通する業務を行なう」
つまり、現在の日本政策金融公庫と違い、個人に対しての消費者金融的な役割も担っていました。
時代背景としては戦後の混乱時期で、生活も安定していない国民を救済するというという目的が大きかったようです。
しかし時代も変わり高度成長期を迎えると、国民の救済から中小企業の成長を促すための金融機関としてその性格を変えています。
当時は公害問題もあり公害対策の設備資金なども必要とされていました。
1967年に設立した環境衛生金融公庫にもそうした背景があります。
国民生活金融公庫への継承
国民金融公庫と環境衛生金融公庫が統合して国民生活金融公庫が設立していますが、このとき行なわれていた業務は次のとおりです。
・小口事業資金
・小口教育資金
・生活衛生関係営業者に対する施設や設備の設置または整備に要する資金
・生活衛生関係営業に使用される者の独立資金
・理容師養成施設または美容師養成施設の整備に要する資金
現在の日本政策金融公庫の融資事業に比べるとシンプルな業務内容に見えます。
しかし実際には国民生活金融公庫以外に農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫が存在していました。
中小企業に対する融資は中小企業金融公庫が対応して、国民生活金融公庫では個人事業主・自営業者に対する資金調達に対応していたということでしょう。
日本政策金融公庫(日本公庫)の意義
2008年からは国民生活金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫が統合し、日本政策金融公庫が設立し多様化する中小企業の資金調達に対応しています。
国内金融業務
国民生活事業:国民一般の資金調達支援
中小企業事業:中小企業の資金調達支援、信用保険制度
農林水産事業:農林水産事業者の資金調達支援
危機対応円滑化業務
金融秩序の混乱、大規模な災害等による被害への対処
日本政策金融公庫は日本生活金融公庫から引き継いだ業務を国民生活事業として運営しています。
また、中小企業金融公庫からは中小企業事業、農林漁業金融公庫からは農林水産事業を継承しています。
当初は国際協力銀行も統合されましたが、2012年に再分離し、現在の形となっています。
そのため日本政策金融公庫のメインは国民生活事業、中小企業事業、農林水産事業の3本柱といっていいでしょう。
日本政策金融公庫が旧国民金融公庫から引き継いだ融資制度
政府系金融機関の歴史を振り返ってきましたが、これからは現在の日本政策金融公庫で借りることができる融資について解説しましょう。
国民生活事業
日本政策金融公庫の融資制度の中で、旧国民金融公庫から引き継いでいる融資事業が国民生活事業です。
日本の政策による融資事業の根幹と言ってもいいでしょう。
・普通貸付
・セーフティネット貸付
・新企業育成貸付
・企業活力強化貸付
・環境・エネルギー対策貸付
・企業再生貸付
・その他の融資制度
・生活衛生貸付
・国の教育ローン
・恩給・共済年金担保融資
上記の貸付制度の中にさらに個別の融資制度もあるので、融資の種類は豊富で、無担保・無保証人での貸付も可能です。
中小企業事業
中小企業に対する貸付制度も国の政策として古くから存在します。
日本の企業の大半が中小企業であることを考えると当然と言えるでしょう。
・新企業育成貸付
・企業活力強化貸付
・環境・エネルギー対策貸付
・セーフティネット貸付
・企業再生貸付
・その他の融資制度
農林水産事業
農林水産業も日本の重要な産業のひとつです。
最近では海外からの輸入も増えているので、海外資本との競合力も強化する必要があり、ますます農林水産業保護の重要性が高まっています。
・農業
・林業
・漁業
・農林漁業共通
・食品産業
日本政策金融公庫の金利体系
政策融資であるため、金利に関しても銀行などの金融機関と比べると低金利となっているのが、日本政策金融公庫の特長です。
銀行融資で低金利の場合は担保を提供し、なおかつ変動金利というケースがほとんどです。
しかし、日本政策金融公庫では無担保でも固定金利で低金利の融資が受けられます。
日本政策金融公庫の金利体系は基準利率が設定されていて、さらに条件をみたす場合は特別利率が適用されます。
特別利率もひとつではなく特別利率A、B、C、Eというように全部で10種類あり、豊富な金利体系となっています。
例として国民生活事業の無担保金利を紹介しましょう。
基準 利率 |
特別 利率A |
特別 利率B |
特別 利率C |
特別 利率E |
特別 利率J |
---|---|---|---|---|---|
1.81 ~ 2.4 |
1.41 ~ 2.0 |
1.16 ~ 1.75 |
0.91 ~ 1.5 |
0.41 ~ 1.0 |
0.76 ~ 1.35 |
特別 利率N |
特別 利率R |
特別 利率T |
特別 利率U |
特別 利率Z |
|
1.51 ~ 1.7 |
1.61 ~ 1.8 |
1.41 ~ 1.41 |
1.31 ~ 1.7 |
2.61 ~ 3.0 |
(平成29年3月10日現在、年利%)
無担保の固定金利で上記の金利は民間の金融機関ではとても適用できない低金利です。
さらに担保提供がある場合の基準利率は1.16%から2.35%とさらに低金利となります。
日本政策金融公庫の審査
国の政策によって行なわれている融資制度なので、民間企業のように利益を確保することが目的ではありません。
民間金融機関では補填できない部分で国民、中小企業、農林水産業の従事者をバックアップするという趣旨があります。
そのため審査も基本的に融資条件をクリアすれば通過します。
それでも最低限度の基準をクリアしなければ、融資が実行されないのは当然のことです。
審査に必要な書類
まずは審査に必要な書類から解説しましょう。
基本的な必要書類は次のとおりです。
・借入申込書
・直近二期分の確定申告書
・決算後半年以上経過している場合、直近の試算表(開業したばかりの場合も)
・法人の登記簿謄本
・身分証明書(運転免許証やパスポート等)
借入申込書は日本政策金融公庫のホームページからダウンロードすることができます。
さらに融資の種類によって添付書類が必要となります。
・創業計画書(ホームページからダウンロード可)
・設備資金申込の場合は見積書
・担保融資の場合は、不動産の登記簿謄本または登記事項証明書
・生活衛生関係の事業を営む方は、都道府県知事の「推せん書」または、生活衛生同業組合の「振興事業に係る資金証明書」
わからない点について相談したい場合はフリーダイヤルもあるので気軽に相談してみましょう。
審査の基本
日本公庫も金融機関なので基本的な審査はしっかりと行ないます。
政府系金融機関だからといっても、資金源は税金なので返済の見込みがない企業や個人には貸付しないのは当然のことです。
日本公庫は銀行系個人信用情報機関のKSCに加盟しています。
少なくてもKSCに金融事故が登録されていれば、審査は通過しません。
事故登録から5年間は融資の申し込みができないので注意しましょう。
また、教育ローンなどの個人融資の場合は年収によって融資額・返済額が決まるので、返済能力を超えた貸付は受けられません。
しかし事業資金専用の融資の場合は、融資を受けることで売上が増えて返済能力が高まることも考慮した審査が行なわれます。
特に創業融資の場合は開業計画書(事業計画書)などで、事業によってどれくらいの収益が得られるかをしっかりと説明できる書類を作りましょう。
日本公庫では面接もあるので、書類だけではなく口頭でも説明できるようにしておきましょう。
日本政策金融公庫の面接
日本公庫の審査には面接もあります。
日本公庫の審査基準のひとつに経営者の人柄という項目があるためです。
面談審査のポイントのひとつは嘘をつかないということです。
当たり前のことですが、日本公庫の融資は低金利なので、虚偽申請によって低金利のの融資を受けようという詐欺まがいの行為が多いのです。
そのため面談担当者は虚偽に対しては敏感になっているので、書類上も整合性がない記述はしないようにしましょう。
面談時に矛盾を指摘されると審査は通らなくなります。
書類提出前には十分チェックして矛盾の内容にして面談に臨みましょう。
まとめ
政策金融機関は、旧国民金融公庫から現在の日本政策金融公庫に至るまで長い間国民の生活や事業のサポートをしてきました。
特に中小企業や小規模事業経営者の運転資金、開業資金を低金利で支えてきたのです。
必ずしも希望通りの融資を受けられるわけではありませんが、民間金融機関に比べると有利な条件で融資が受けられる制度です。
幅広い融資制度と有利な金利の適用がある日本政策金融公庫は、事業資金調達先としては最優先で考えましょう。