フリーランスとして働いているみなさん、こんな経験をしたことがありませんか?
「クライアントに送った請求書に書いた金額より支払われた金額が少ない…なぜ!?」
フリーランスになりたての人なら、たいていこのような経験をしたことがあると思います。
クライアントに送った請求金額よりも支払われた報酬が少ない。
こんなときは、クライアントが源泉徴収を行っているはずです(振込手数料の可能性もありますが…)。
源泉徴収とは、報酬の支払元が、あらかじめ報酬の中に含まれる所得税を天引きして国に納める制度のことを言います。
つまりクライアントは源泉徴収をすることで、みなさんの代わりに前もって所得税を国に納めてくれているというわけです。
この記事では、フリーランスなら知っておきたい源泉徴収の仕組みについて、わかりやすく解説していきます。
源泉徴収をしっかり管理しておけば、確定申告で払いすぎた税金分のお金が返ってくることも!
この記事でしっかりと源泉徴収について理解してもらえると嬉しいです。
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森野ミヤ子 -
フリーランスライターとして活躍する2児の母です。
労務・人事・マネジメントの経験あり。
その経験を活かして記事を執筆しています。
秘書検定も取得しているのでビジネスマナーもお任せください!
源泉徴収の仕組み
フリーランスはもちろん、働いて報酬や給与の支払いを受ければ、得た所得金額に応じて所得税を納税する義務が私たちにはあります。
報酬や給与を支払う側がこの所得税を報酬として支払われる金額から天引きし、あらかじめ国に納めておく制度が源泉徴収です。
人を雇って給与を支払う企業や事業者は、給与などの支払いを受ける人(従業員など)ごとに源泉徴収票を2通作成します。
1通を翌年の1月31日までに所轄の税務署長に、1通を給与などの支払いを受ける本人に交付しなければいけないと、法律で定められています。
このように人を雇う立場にある企業や事業者で働く会社員などには、源泉徴収が義務付けられています。
しかしフリーランスの報酬の場合は、源泉徴収の対象となる場合と、ならない場合があります。
また源泉徴収をするのは、あくまで報酬や給与を支払う側のため、報酬を受け取る側のフリーランスは税務署で何かをするといった必要はありません。
ただし請求書の発行時や確定申告の際には、この源泉徴収と関わることになります。
支払調書と源泉徴収票の違い
フリーランスは報酬を受け取る内容によっては、源泉徴収の対象となり所得税が天引きされる場合があります。
ただし会社員のように源泉徴収票が発行される、というわけではありません。
フリーランスが源泉徴収額を確認する方法に【支払調書】があります。
支払調書と源泉徴収票の違いを見てみましょう。
支払調書とは【交付が義務付けられていない】
報酬や給与を支払う事業者には、源泉徴収の範囲に該当する内容の報酬を支払った場合、その内容の範囲に応じた支払調書を税務署へ提出する義務を負います。
簡単に言えば、フリーランスとして支払った報酬のなかに、源泉徴収の対象となる内容があれば、報酬を支払ったクライアントはその分の支払調書を作成して、税務署へ提出しなければいけない、ということです。
フリーランスが確定申告を行うとき、源泉徴収額を確定申告書へ記載します。
その源泉徴収額の参考として支払調書を活用できるのです。
ただし支払調書はあくまで税務署への提出書類のため、給与を受け取る側への交付は義務付けられていません。
確定申告のために支払調書を参考にしたい場合は、あらかじめクライアントに交付を依頼しておくようにしましょう。
源泉徴収票は【交付が義務付けられている】
人を雇って給与を支払う企業や事業者は、法律で給与の源泉徴収が定められています。
このとき企業や事業者は源泉徴収票を2通作成し、1通は税務署、もう1通は給与の支払いを受ける本人への交付が義務付けられています。
源泉徴収票は支払調書と同じく、「きちんと源泉徴収を行いました」という証明のために税務署へ提出する書類として使うだけでなく、給与を受けた本人へも必ず交付されるものです。
源泉徴収される報酬とは?
国税局のサイトに記載されている、源泉徴収の対象となる報酬は以下の通りです。
- 原稿料や講演料など
- 弁護士、公認会計士、司法書士等の特定の資格を持つ人などに支払う報酬・料金
- 社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬
- プロスポーツ選手、モデルや外交員などに支払う報酬・料金
- 映画やテレビの出演等の報酬・料金や芸能プロダクションを営む個人に支払う報酬・料金
- ホテル、旅館などの宴会等において、客に対して接待等を行うことを業務とするいわゆるバンケットホステス・コンパニオンやバー、キャバレーなどに勤めるホステスなどに支払う報酬・料金
- プロ野球選手の契約金など、役務の提供を約することにより一時に支払う契約金
- 広告宣伝のための賞金や馬主に支払う競馬の賞金
この内、「原稿料や講演料など」がフリーランスの報酬で、源泉徴収の対象となる可能性のあるものです。
具体的には以下の報酬が該当します。
- ライターが記事を作成する原稿料
- デザイナーが作成したデザイン料(イラスト、WEBサイト、広告、パッケージ、インテリアなど「デザイン」と名の付くもの全般)
- 講師として開いたセミナーの講演料 など
源泉徴収について理解しておかないとトラブルとなる場合も
フリーランスの場合は、まず自分の受けている仕事の報酬が源泉徴収に該当するか、該当しないかをきちんと把握しておくのが重要です。
たとえばWEBサイトの作成については、【WEBサイトのデザイン】を手掛けた場合、デザイン料として報酬が入るため源泉徴収の対象となります。
いっぽうでプログラミングやコーディングなどの【WEBサイトそのものの構築】の場合は、源泉徴収の対象となりません。
源泉徴収はフリーランスにとって所得税に関わる重要な要素です。
きちんと自分の報酬に関して源泉徴収の有無を確認しないと、確定申告時に還付を受けられなかったり、逆に支払うべき所得税を納められなかったりすることとなり、源泉徴収をしたか・しないかをめぐってクライアントとトラブルになってしまう可能性もあります。
あらためて、源泉徴収のことを正しく理解しておきましょう。
源泉徴収額の計算方法
源泉徴収される所得税額は報酬として支払われる金額の合計が100万円以下の場合10.21%、100万円超の場合20.42%になります。
計算方法の式は以下の通りです。
100万円超…(支払金額-100万円)×20.42%+102,100円
・50万円×10.21=5,105円
【例2:支払金額が150万円の源泉徴収額】
・(150万円-100万円)×20.42%+102,100円=204,200円
クライアントに親切な請求書の書き方
ライターやデザイナーなど、クライアントから支払われる報酬が源泉徴収対象のフリーランスの場合、源泉徴収を記載したうえで請求書を作成します。
源泉徴収対象の場合、以下3つのポイントを踏まえて請求書を作成すると、クライアント側からもわかりやすくなります。
- 源泉徴収対象を分かりやすくする
- 先に源泉徴収額を計算しておく
- 小計、源泉徴収、消費税、合計を分けて記述する
源泉徴収対象を分かりやすくする
クライアントに請求する金額の中には、源泉徴収の対象になる項目と、ならない項目があります。
たとえばライターの場合、【原稿料】は源泉徴収の対象となりますが、以下は源泉徴収の対象となりません。
- 【図書代】
- 【取材交通費」
- 【事務手数料】
源泉徴収の対象となるものには印をつける、項目をわけるなど、わかりやすく記載するようにしましょう。
源泉徴収額を先に計算しておく
源泉徴収は、報酬合計で消費税別の金額に対してかかります。
まず源泉徴収の対象となる項目をわけておき、先に源泉徴収額を計算し、記載しておくとミスを防げます。
小計、源泉徴収、消費税、合計を分けて記述する
報酬金額の小計(消費税別の合計-源泉徴収額)、源泉徴収額、消費税、請求する合計金額(小計+消費税)は、項目を分けて記載しておきます。
請求書に源泉徴収額を明記すればクライアントからも好印象
源泉徴収は、支払う側(クライアント)が行うべき制度です。
そのため、フリーランスの報酬で源泉徴収の対象になる範囲であるにも関わらず、源泉徴収がきちんとなされないと、支払い側であるクライアント側に不納付加算税と延滞税が別途課税される恐れがあります。
事前のトラブル防止のために、報酬をもらう側であるフリーランスが源泉徴収額を理解して、請求書に明記しておくとクライアントに好印象を与えることができますよ。
源泉徴収をまとめておけば確定申告で還付金が戻ってくる
フリーランスの場合、毎年2~3月の確定申告にて所得申請を行い、申告した所得額によって支払うべき所得税が決定します。
ただし、報酬のなかで源泉徴収が発生している場合は、すでにクライアントによって一定額の所得税を前もって支払われていることになります。
そのため源泉徴収額を把握し確定申告で反映させないと、二重で所得税を支払うことになるのです。
確定申告は正しい所得額を申請するため、源泉徴収によってすでに所得税を払いすぎている場合は、払いすぎた所得税の還付を受けられます。
そのため確定申告では、必ず源泉徴収額を把握しておきましょう。
会計ソフトを使えば確定申告の源泉徴収の還付も簡単
確定申告は、所定の申告用紙に所得や経費、その他の税金控除などを計算・記載して税務署へ提出します。
「一年間の収入や経費、源泉徴収などをまとめて記載するのは無理…」と考えるかもしれませんが、会計ソフトを使えば源泉徴収をまとめるのも、確定申告も簡単かつ正確に行えます。
たとえば私は「MFクラウド確定申告(マネーフォワード)」を使用しています。
日々の帳簿付けも銀行口座やクレジットカードとも連動していますので、設定をしておけば自動仕訳ができ、経費ごとに打ち込む必要はありません。
また都度打ち込みができる手動仕訳もできます。
細かい経費はもちろん、源泉徴収の管理も可能です。
源泉徴収を踏まえた会計ソフトへの仕訳方法を解説します。
請求タイミングと振込タイミングが一緒の場合
報酬ごとに請求書を発行し、報酬を受け取る都度請求の場合、請求から振り込みのタイミングがほぼ一緒です。
この場合は、売上と源泉徴収の2つの仕訳を振り込み日ですることになります。
例:都度請求で報酬が4万円、源泉徴収額が5,000円の場合
振り込み日の日付で
収入:売上(実際に振りこまれた金額)=40,000円を入力
借方:銀行口座
貸方:売上
支出:源泉徴収額=5,000円を入力
借方:事業主貸
貸方:売上
メモ欄:9/5源泉徴収分などと記載しておく。
請求タイミングと振込タイミングが別の場合
月末締め15日支払いなど、売り上げが確定して請求するタイミングと実際に振りこまれるタイミングが別の場合の仕訳方法を解説します。
売上が確定する日付
収入:売上(実際に振りこまれる予定の金額)+源泉徴収額=45,000円
借方:売掛金
貸方:売上
メモ欄:○○株式会社分8月売り上げ4万円+源泉徴収5,000円と記載しておく
実際に振り込みが行われたら…
振り込みされた日付
収入:売上(実際に振りこまれた金額)=40,000円
借方:普通預金
貸方:売掛金
メモ欄:○○株式会社8月売り上げ分などと記載しておく
収入:源泉徴収5,000円=5,000円
借方:事業主貸
貸方:売掛金
メモ欄:○○株式会社8月源泉徴収分などと記載しておく
MFクラウド確定申告があれば、難しく考えずとも確定申告に備えることができます。
もしまだ会計ソフトを導入していないという方、MFクラウド確定申告おすすめですよ。
フリーランスも源泉徴収する側になる?
通常源泉徴収される側のフリーランスですが、以下の場合フリーランスでも源泉徴収する側となります。
- 2人以上の従業員または専従者を雇って給料支払いが発生した場合
- ホステス等への報酬・料金の支払い
それぞれ詳しく解説します。
2人以上の従業員または専従者を雇って給料支払いが発生した場合
フリーランス、つまり個人事業主でも2人以上の従業員または専従者を雇い、給料の支払いが発生した場合は源泉徴収義務者となります。
なお、専従者とは自分の親族で事業を手伝い、給料を支払っている人を指します。
例えば、ライターとして働く個人事業主が、事務作業や営業活動のために、パート従業員1人を雇う+自分の奥さんをパート従業員と同じ仕事をやる代わりに同じ給料を支払う、とします。
この場合、パート従業員1人と専従者1人を雇うことになるので、フリーランスでも【源泉徴収義務者=源泉徴収する側】になるのです。
源泉徴収義務者となると、弁護士や税理士へ税務処理を、デザイナーへWEBサイトのデザインを外注するなど源泉徴収が必要な報酬が発生した場合、源泉徴収を行う義務を負います。
ホステス等への報酬・料金の支払い
フリーランスが2人以上の従業員を雇うなどして源泉徴収義務者になるとすべての源泉徴収を行わなければいけません。
しかし、自分1人で仕事をしている=源泉徴収義務者ではない場合は、源泉徴収の範囲にある報酬を支払っても源泉徴収は行う必要はありません。
ただし、源泉徴収の適応となる範囲の中で「ホステス等への報酬・料金の支払い」は、源泉徴収義務者でなくても源泉徴収をしなければいけません。
例えば、個人事業主でスナックやバー、クラブを経営する場合、お店で働くホステスさんなどは従業員ではないため給与ではなく報酬を支払うことになります。
この場合、源泉徴収が発生します。
まとめ
源泉徴収はフリーランスの請け負った依頼の内容によって対象になる場合とならない場合があります。
まずは自分が請け負った依頼で源泉徴収が発生する報酬があるかどうかを把握し、請求書などで適切に処理できるようにしましょう。
源泉徴収を把握しておけば、確定申告で払いすぎた還付金が受けられるだけでなく、クライアントと源泉徴収をめぐる事前のトラブルも回避できます。
源泉徴収額の管理や確定申告も、会計ソフトを取り入れると効率よく確実に処理ができます。
ぜひフリーランスとして今後も活動するために、会計ソフトの利用も検討してみましょう。