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2023/10/25

「財政投融資」という言葉を耳にしたことがある人は多いでしょう。

しかし、財政投融資はどんな制度で何のために存在しているのかを詳しく説明できる人は少ないのではないでしょうか。

財政投融資は民間企業や個人事業主にも間接的な関わりがあるため、その仕組みを知っておくことは経営にも役立ちます。

今回は財政投融資の仕組みについて解説しましょう。

ライター嶋崎の実物写真

【ライター】嶋崎
当サイトを運営している嶋崎と申します。
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財政投融資とは

財政投融資は簡単にいうと、民間企業では困難な低金利融資や大規模プロジェクトを実施するために国が行なう投資活動のことです。

まずは財政投融資の内容や対象となる機関からご紹介しましょう。

財政投融資の目的

日本政策金融公庫イメージ

政府系機関は民間企業と違って利益追求を目的としていません。

例えば日本政策金融公庫は銀行と同じように融資を実行しますが、銀行とは違って利益を求めていないため低金利の融資を提供することができます。

しかし、やっていることは民間金融機関と同じなので、資金調達の必要や事業を維持するための経費もかかります。

財政投融資はこうした政府機関が税金に頼ることなく、独立採算で事業を継続できるようにした制度です。

財政投融資は政府財政政策を行なうためのひとつの手段ともいえます。

具体的には国債のひとつである「財投債」を発行することで資金調達をしています。

財政投融資には3つの手法があるので、次章でそれらをご紹介しましょう。

財政投融資3つの手法

財政投融資には以下の3つの手法があります。

財政融資

財政融資は財政融資資金を政府系金融機関・地方公共団体・独立行政法人などを経由して、低金利で必要な分野に融資を行なうことです。

役所イメージ

融資に必要な資金は、かつて旧大蔵省資金運用部が郵便貯金・公的年金積立金を中心に調達していました。

これは資金運用部預託金と呼ばれていましたが、2001年財政投融資制度の改革が行なわれ廃止されています。

現在では財投債の発行による資金や政府の特別会計から預託された積立金・余裕金が資金となっています。

この改革には郵便局の民営化や年金問題なども大きく影響しているようです。

なお資金に関しては「財政資金融資法」「資金運用部資金法」の2つの法律によって規制されています。

産業投資

産業投資は政策性が高くリターンも期待できますが、リスクも高いため民間だけでは資金供給が困難な事業に対して国が行なう投資のことです。

資金源としては国が保有しているNTT株、JT株の配当金や日本政策金融公庫の国庫納付金などとなっています。

なお日本政策金融公庫では利益金の一部を国庫に納付しています。

具体的な分野としてはベンチャー支援、レアメタル等の探鉱・開発があります。

政府保証

政府系金融機関や独立行政法人が金融市場で資金調達する場合、政府が保証することで資金調達をスムーズにします。

政府保証とは言っても、具体的には「政府保証債」を発行するということになります。

しかし政府保証債の発行はコスト高となるため限定的となっています。

財政投融資の対象

財政投融資の対象となり財政投融資を活用している機関を「財投機関」と呼んでいます。

財政投融資には財政融資、産業投資、政府保証の3つがありますが、それぞれ対象機関が決まっています。

財投融資の対象機関は「財政融資資金法」という法律によって定められていて、次の機関が対象となっています。

・国の特別会計
・地方公共団体
・政府関係機関
・独立行政法人
・特殊法人等(特別の法律により設立された法人で民間からの出資を受けていないもの)

「産業投資」の対象は、「産業の開発及び貿易の振興」の目的に合致し、国からの出資・収益還元に必要な規定を備えている政府関係機関や独立行政法人等などが対象となります。

例えば、日本政策投資銀行、日本政策投資銀行、国際協力銀行などが、産業投資の対象機関です。

「政府保証」については、基本的にそれぞれの設立法において政府保証を受けることができる旨の規定が存在する政府関係機関や独立行政法人等が対象となります。

政府保証債には具体的に日本政策投資銀行債券、国際協力銀行債券などがあります。

なお財投機関が個別に発行する政府保証のない公募社債は「財投機関債」と呼ばれています。

財政投融資のメリット

財政投融資は政府が民間では難しい低金利融資や事業への投資を行なうために存在していることがわかりました。

それでは財政投融資を行なうことで、具体的にどんなメリットがあるでしょうか。

租税負担の抑制

基本的に国や行政の活動や事業は税金によってまかなわれています。

しかし税金だけに頼っていては、国民の負担が大きくなることも事実です。

財政融資の資金源は財投債の発行によるものですが、財投債の償還・利払いには財政融資の貸付先からの償還・利払いで充当できます。

つまり税金を使うことがないので、税金負担を抑制するメリットがあります。

ただし、財政融資を活用して政策金融機関や独立行政法人等が事業を実施するときは、同時に補助金・補給金等も支出されていることがあります。

補助金・補給金等は税金により支出されますが、それでも全額補助金・補給金等でまかなうよりは税金抑制効果は高いといえます。

事業の効率的な実施

政府が特定事業を支援する方法としては融資以外にも補助金を支給するという方法もあります。

補助金は返済の必要がないので事業者にとっては大きなメリットがありますが、事業の効果という点ではデメリットになる場合があります。

返済しなくてもよいお金なので、無計画に使ってしまうことがあるからです。

その点、財政融資で貸付を行なう場合は、返済が必要なためコスト意識が高くなり、補助金支給よりも効果が高くなります。

特に中小企業対策やODA(政府開発援助)などは財政融資が適切だといわれています。

受益者負担の実現

税金、特に国税の使いみちは国民に公平に還元されることが重要です。

しかし事業によっては特定の地域や住民に大きな恩恵があるケースが存在します。

こうした事業に国税を投入することは不公平になるため、受益者負担の見地から地域住民が負担するというのが原則です。

財政投融資の中でも有償資金を利用すれば、こうした受益者負担が実現できるといわれています。

具体的には高速道路や空港などの建設を思い浮かべると理解できるでしょう。

財政投融資はどのような分野で利用されているか?

財政投融資は民間金融機関では資金供給が難しい分野などで、国民生活や経済に貢献しています。

中小企業・農林水産業

ただのビル

中小企業は信用力が弱いことが多いので、銀行などの民間金融機関では融資できないケースもあります。

そのため財政投融資を活用した日本政策金融公庫を通じて中小企業に低金利で長期の融資を行っています。

また農林水産業も自然災害などに左右されやすいため、民間金融機関では対処が難しいこともあり、日本政策金融公庫での融資は重要です。

教育・福祉・医療

教育の面では日本学生支援機構の有利子奨学金では財政投融資の資金が活用されています。

また福祉・医療の分野では少子高齢化への対応や医療体制の強化のために、児童福祉施設・老人福祉施設及び病院・診療所等の整備にも財政投融資を活用しています。

社会資本

空港、高速道路、都市再開発などは大規模リスクが高く資金調達も高額となります。

こうした社会資本となる事業では財政投融資は必要不可欠といえます。

産業・研究開発

日本は資源が少ないため技術革新は日本が世界市場で競争力を発揮できる重要な分野です。

しかし産業・研究開発の分野では、長期的に資金が必要となり民間だけでの資金調達は困難です。

日本の産業力を維持するためにも財政投融資は必要です。

国際金融・ODA

国際金融の分野では民業を圧迫しないように、民業の補完に徹するというのが基本です。

しかし、日本にとって重要な資源の海外における開発及び取得の促進、産業の国際競争力の維持・向上、国際金融秩序の混乱への対処にかかる業務については、財政投融資が活用されています。

また、開発途上国の経済社会開発支援にも財政投融資が利用されています。

地方公共団体

同じ地方公共団体でも資金調達力に差があるため、災害復旧や廃棄物処理など、政策的な重要性や国の責任の割合が高い投資的な事業では財政投融資によって資金の安定的確保を行なっています。

まとめ

財政投融資そのものは直接消費者や事業者にとっては無関係と思っていた人も、間接的にその恩恵を受けていることに気づいたのではないでしょうか?

何気なく利用していた日本政策投資銀行の貸付金は、財政投融資によって調達された資金を活用していることになります。

このように財政投融資は民間企業ではできない低金利融資や事業の援助を行なって国民生活や日本経済を支えているのです。

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