約束手形とは?わかりやすく解説

更新日:2017/12/07
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企業や事業者同士で決済をする手段としては、現金払いの他に売掛や手形、小切手などがあります。

その中でも約束手形と呼ばれている決済方法は古くから利用されていて、今でも使われている決済方法です。

しかし、約束手形を利用したことがない事業主にとっては、そのしくみやメリットがわからないことでしょう。

今回は約束手形についてどのようなしくみで、どのように活用するのかをわかりやすく解説します。

約束手形のしくみ

まずは約束手形がどのようなしくみで運用されているのかを解説しましょう。

約束手形は信用取引

約束手形は本来現金で支払うべき金額を数ヶ月後まで支払を延長するときに使用します。

基本的にビジネスで使われ、取引先や銀行の信用がなければ約束手形の振出や受取を拒否されてしまいます。

その意味では信用力がなければ使えない決済方法ということができます。

約束手形は小切手と同じように「○月○日に☓☓万円支払います」という約束を証書として発行します。

手形を受け取る取引先は数カ月後に支払えるという信用力があると判断すれば、一種の売掛金として手形を受け取ります。

約束手形の支払は銀行の当座預金から支払われるので、当座預金を開設していなければ利用できません。

当座預金の開設は一定の銀行取引があり銀行から信用されていなければ開設することができません。

つまり銀行と取引先の双方からの信用力があることが、約束手形を使用する大前提となっているのです。

約束手形の記載内容(表書)

約束手形は銀行が発行する約束手形用紙を使用しますが、記載されている内容は次のとおりです。

・印刷済みの「約束手形」
・印刷済みの「振出人の管理番号」
・名宛人・受取人名(手形を受け取る社名・代表者名)
・支払期日(現金化できる日付)
・支払地(銀行の住所)
・支払場所(銀行名支店名)
・支払金額
・印刷済みの「上記金額をあなたまたはあなたの指図人へこの約束手形と引換えにお支払いたします」
・振出日(手形を振り出した日付)
・振出地(振出人の所在地)
・振出人住所・社名・代表者名・銀行印の押印
・印紙

上記のように基本的には、だれがだれに対してどこの銀行でいくら支払うかという内容が記載されています。

しかし、約束手形は自由に譲渡ができるしくみなので、受取人や振出人が変わることがよくあります。

その場合は約束手形の裏面に記載します。

約束手形の記載内容(裏書)

約束手形の裏面はその手形が譲渡された記録欄になっていて、次の記載があります。

1.譲渡した日付
2.裏書人(譲渡人)の住所・社名・代表者名・押印
3.非裏書人(譲渡を受けた人)の氏名

約束手形の裏面には上記1~3までを1セットとして5セットほど記載できるスペースがあります。

裏書は単なる記録ではなく、裏書人は支払を保証する責務を負います。

これを裏書の「担保的効力」と言いますが、裏書人は最初の譲渡先だけでなく、その後譲渡された場合でも最終的な手形所持人に対する支払義務があります。

裏書にはさらに2つの効力があります。

権利移転的効力

手形を受け取った人に譲渡できる効力がある

資格授与的効力

裏書が連続して記載してあれば、最後の非裏書人は約束手形を示すだけで権利を主張できる

これら裏書の効力のおかげで約束手形がビジネスにおいてスムーズな決済手段として流通しているのです。

約束手形の支払期日

約束手形は将来の支払を約束する証書ですが、具体的にどれくらい先まで支払を延ばすことができるのでしょうか。

振出日から支払期日までの期間を「支払サイト」と言いますが、受取人が納得すれば期間に上限はありません。

しかし一般的には120日が最長で、通常は90日が平均と考えておきましょう。

210日や300日といった長期の支払サイトは、取引先にも嫌われ信用力を失う可能性もあるので避けましょう。

約束手形を現金化する方法

約束手形の振出には当座預金の開設が必要なので、法人と違って個人事業主は口座開設自体が困難です。

そのため個人事業主が振り出すケースは少ないですが、約束手形を受け取るケースはあるでしょう。

その時のために個人事業者も受取手形を現金化する方法についても覚えておきましょう。

支払期日に現金化する方法

基本的に約束手形を現金化する場合は、手形に記載してある銀行(A)の支店に手形を渡して現金化します。

しかし、支払場所が遠隔地であれば、自分の取引銀行(B)に手形の取立を依頼することになります(取立委任裏書をする)。

手形取立の流れは次のようになります。

・B銀行は手形交換所に約束手形を持ち出す
・A銀行(支払銀行)が手形を持ち帰る
・A銀行は振出人の当座預金からお金を引き出しA銀行に振り込む

銀行に取立を依頼する場合は支払期日に手形交換所に持ち込む必要があるので、支払期日前に依頼しなければいけません。

あらかじめ何日前に依頼する必要があるのかを確認しておきましょう。

また、銀行に支払を要求できるのは支払期日から2日(営業日)以内となります。

これを「支払呈示期間」とよんでいますが、支払呈示期間が過ぎても約束手形の効力がなくなるわけではありません。

しかし、支払呈示期間を過ぎてから手形不渡りになった場合は、請求することができません。

支払呈示期間が過ぎたら振出人に直接支払ってもらうしか方法はありません。

銀行に支払義務はありませんが、振出人の承諾があれば現金化に応じるのが一般的です。

手形割引で早期現金化

手形を受け取った場合、支払期日前に現金化をすることで売掛債権を早期に回収することができます。

支払期日前に現金化する方法として一般的なので「手形割引」です。

手形割引を取り扱っているのは、銀行などの金融機関や手形割引業者です。

いずれの場合も手形割引料を支払って手形の現金化をしますが、不渡りになった場合のリスクは手形割引の利用者となります。

銀行を利用すると割引率は低くなりますが、基本的には融資扱いとなるため審査があり、取引や信用がなければ手形割引はできません。

業者を利用する場合は手形を持ち込んだ人の審査は不要で、振出人の信用力で判断します。

そのため手数料は高くなりますが、手形割引で現金化できる可能性は高くなります。

手形割引のメリット

手形割引のメリットは早期に現金化ができることで、売掛債権を現金化するファクタリングと同じ効果があります。

手形を早期現金化すると運転資金として回すことができ、資金繰りが良くなります。

さらに手形割引は銀行融資のような借入ではないため、貸借対照表やキャッシュフローの内容も改善に結びつきます。

手形割引をしても手形不渡りのリスクは回避できませんが、それは手形を支払期日に現金化する場合も同じリスクがあります。

リスクが同じであれば早期に現金化して事業資金調達方法として活用しましょう。

約束手形のメリット・デメリット

約束手形は振出人と受取人の双方にメリット・デメリットがあるので、それらを踏まえた上で活用しましょう。

振出人のメリット・デメリット

振出人のメリットはもちろん支払を延長することができるという点です。

支払を先延ばしにできれば、その間に売掛金も現金化され資金繰りが良くなります。

また、手形を振り出さずに融資でお金を借りて支払うと利息がかかりますが、約束手形の振出によって利息がかかることはありません。

デメリットとしては手形が不渡りになった場合、取引先だけでなく金融機関からの信用も失うという点です。

特に6ヶ月以内に2回手形不渡りになると2年間は銀行取引ができなくなり、融資を受けることも不可能となります。

これが原因で倒産するケースが多いので手形不渡りには十分注意しましょう。

受取人のメリット・デメリット

受取人は現金の受取が先延ばしになるので、現金払いに比べるとメリットはないと言ってもいいでしょう。

しかし約束手形を受け取ることで、手形割引で早期現金化の可能性があるので、口約束で支払を延長されるよりはメリットがあります。

また手形不渡りは振出人にとってもデメリットですが、受取人にとっても大きなデメリットです。

最終的に回収できないリスクがある上に、支払期日があるので期日管理も必要になります。

確実に手形を現金化するためには、早めに取引銀行に取立を依頼しておきましょう。

取立手数料はかかりますが、期日管理の手間とリスクを回避できます。

受取人は自由に譲渡することができるという点ではメリットですが、金額を分割して譲渡できないことがデメリットとなります。

しかし最近では電子記録債権のシステムが普及し、電子手形として発行されていれば分割譲渡も可能です。

まとめ

経営者にとって売掛金は早く回収し、支払はなるべく引き延ばすということが、資金繰りを良くする方法のひとつです。

その点で約束手形は支払を先送りにできるので、資金繰りを良くする手段として活用できます。

特に「でんさいネット」といった電子債権記録機関を利用すれば、分割譲渡などメリットのある使い方もできます。

これから手形を活用しようとしている事業者は、電子取引も検討してみましょう。

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