2019/01/28

約束手形をカンタンに言えば「〇〇日に××円支払います」という約束を証明する有価証券です。

昨今は流通量が激減したと言われていますが、現金払以外の決算方法の一つとして、企業間、事業者間で古くから利用されており、今でも4割程度の企業が決算方法として利用しています。

多くの現金を持ち運ぶことなく決算ができる便利なこの約束手形。発行するにしても、受け取るにしても、事前にその注意点を知っておく必要があります。

今回は約束手形がどのような仕組みになっているのか、メリットやデメリットについてわかりやすく解説します。

約束手形のしくみ

約束手形は、ただ用紙に「いつ、いくら支払います」と記入をすればいいというわけではなく、銀行の発行する専用用紙に、記入事項を全て記載しなければなりません。

約束手形を発行する人を振出人、約束手形を受け取る人を受取人と言います。

受取人は約束手形に記載された支払期日を含めた3営業日以内に銀行へ行って支払呈示を行い、手形を現金化することができます。

銀行が発行する記入用紙のみ有効

約束手形の発行は、銀行が発行する統一手形用紙を使用しなければならず、当座預金口座を開設した信用度の高い企業にしかこの統一手形用紙は発行されません。

そのため、約束手形は信用力の高い企業でしか利用できない決算方法と言えます。

約束手形はその信用力を担保として、支払いを先送りできる方法と考えてください。

約束手形の記載内容(表書)

約束手形に記載されている内容は次のとおりです。

・印刷済みの「約束手形」
・印刷済みの「振出人の管理番号」
・名宛人・受取人名(手形を受け取る社名・代表者名)
・支払期日(現金化できる日付)
・支払地(銀行の住所)
・支払場所(銀行名支店名)
・支払金額
・印刷済みの「上記金額をあなたまたはあなたの指図人へこの約束手形と引換えにお支払いたします」
・振出日(手形を振り出した日付)
・振出地(振出人の所在地)
・振出人住所・社名・代表者名・銀行印の押印
・印紙

基本的には、だれがだれに対してどこの銀行でいくら支払うかという内容が記載されています。

ただ、約束手形は自由に譲渡ができるしくみなので、受取人や振出人が変わることがよくあります。

その場合は約束手形の裏面に記載します。

約束手形の記載内容(裏書)

約束手形の裏面はその手形が譲渡された記録欄になっていて、次の記載があります。

1.譲渡した日付
2.裏書人(譲渡人)の住所・社名・代表者名・押印
3.非裏書人(譲渡を受けた人)の氏名

約束手形の裏面には上記1~3までを1セットとして5セットほど記載できるスペースがあります。

裏書は単なる記録ではなく、裏書人は支払を保証する責務を負います。

これを裏書の「担保的効力」と言いますが、裏書人は最初の譲渡先だけでなく、その後譲渡された場合でも最終的な手形所持人に対する支払義務があります。

裏書にはさらに2つの効力があります。

【権利移転的効力】
→手形を受け取った人に譲渡できる効力がある
【資格授与的効力】
→裏書が連続して記載してあれば、最後の非裏書人は約束手形を示すだけで権利を主張できる

これら裏書の効力のおかげで約束手形がビジネスにおいてスムーズな決済手段として流通しているのです。

約束手形の支払期日

約束手形の振出日から支払期日までの期間を「支払サイト」と言い、受取人が納得すれば期間に上限はありません。

しかし一般的には120日が最長で、通常は90日が平均的な期間になります。

210日や300日といった長期の支払サイトは、取引先にも嫌われ信用力を失う可能性もあるので避けるようにしてください。

振り出しまでの期間

約束手形は支払期日に銀行へ持ち込んだとしても、即現金化されるわけではありません。

振出人の当座預金口座に、振出金が入っているかどうかが確認されるため、最短でも3営業日ほどの時間が必要です。

また、手形を発行した銀行と、持ち込んだ銀行が異なる場合、手形交換所を経由することになりますので、さらに現金化までに日数が伸び10日程度かかる場合もあります。

小切手や為替手形、売掛金との違い

約束手形と混同されがちなのが、小切手と為替手形です。

また、「期日に支払いがある」という面では、売掛金と混同してしまうパターンもあるかも知れません。

それぞれの違いについてわかりやすく解説します。

小切手との違い

約束手形と小切手の決定的な違いは、支払いまでの期間です。

約束手形は、記載された支払期日になるまでは現金化することができません。

それに対して小切手の場合は、受け取り後すぐに現金化することができます。

なお、小切手の呈示期間は、小切手を受けとった翌日から10営業日以内となります。

為替手形との違い

為替手形は約束手形と違って、3社間の決算を一括で行うための決算方法です。

ケーススタディ:A社で仕入れを行っているB社から納品を受けたC社

お金の流れは、C社→B社→A社となります。

このとき、B社はC社に「〇〇までに××円をA社に支払ってください」という手形を発行します。

そうすることで、お金の流れがスムーズにすることと、振出人BがAに対する支払いをしなくて済むことが狙いです。

このとき発行される手形を為替手形と言います。

 売掛金との違い

売掛金も約束手形同様に「〇〇までに××円支払います」という約束ではありますが、その信用力に違いがあります。

売掛金を証明するものは、納品書や請求書など各自企業が発行した用紙です。

一方、約束手形は銀行が発行する統一手形用紙に記載されることで、銀行のお墨付きという信用がつきます。

約束手形の不渡りはすなわち企業の倒産

いずれも支払い義務があることには変わりませんが、売掛金の方が不渡りになるリスクが高いと言えるのではないでしょうか。

売掛先の都合で支払いが伸びるということも起きやすく、それを請求したところで売掛先に支払う姿勢がなければ平行線です。

一方の約束手形の場合、不渡りがあればその事実が全銀行に通達されます。

万が一半年間で2回の不渡りを起こしてしまうと、2年間銀行との取引が停止となり、企業を存続させることが不可能な状況になります。

不渡りのリスクを考えると、売掛金と約束手形の違いは歴然です。

売掛債権を持っていて不渡りが不安な場合は、売掛金を早期現金化できるファクタリングを利用することをおすすめします。

約束手形を現金化する方法

ここからは、約束手形を現金化する方法について説明します。

約束手形は、支払期日がくれば現金化することができる決済方法ですが、支払期日より前に現金化する方法として手形割引というものもあります。

それぞれわかりやすく解説します。

支払期日に現金化する方法

基本的に約束手形を現金化する場合は、手形に記載してある銀行(A)の支店に手形を渡して現金化します。

しかし、支払場所が遠隔地であれば、自分の取引銀行(B)に手形の取立を依頼することになります(取立委任裏書をする)。

手形取立の流れは次のようになります。

・B銀行は手形交換所に約束手形を持ち出す
・A銀行(支払銀行)が手形を持ち帰る
・A銀行は振出人の当座預金からお金を引き出しA銀行に振り込む

銀行に取立を依頼する場合は支払期日に手形交換所に持ち込む必要があるので、支払期日前に依頼しなければいけません。

あらかじめ何日前に依頼する必要があるのかを確認しておきましょう。

また、銀行に支払を要求できるのは支払期日から2日(営業日)以内となります。

これを「支払呈示期間」とよんでいますが、支払呈示期間が過ぎても約束手形の効力がなくなるわけではありません。

しかし、支払呈示期間を過ぎてから手形不渡りになった場合は、請求することができません。

支払呈示期間が過ぎたら振出人に直接支払ってもらうしか方法はありません。

銀行に支払義務はありませんが、振出人の承諾があれば現金化に応じるのが一般的です。

手形割引で早期現金化

手形を受け取った場合、手形割引を利用すれば、支払期日前に現金化をすることで売掛債権を早期に回収することができます。

手形割引を取り扱っているのは、銀行などの金融機関や手形割引業者です。

いずれの場合も手形割引料を支払って手形の現金化をしますが、不渡りになった場合のリスクは手形割引の利用者となります。

銀行を利用すると割引率は低くなりますが、基本的には融資扱いとなるため審査があり、取引や信用がなければ手形割引はできません。

業者を利用する場合は手形を持ち込んだ人の審査は不要で、振出人の信用力で判断します。

そのため手数料は高くなりますが、手形割引で現金化できる可能性は高くなります。

手形割引のメリット

手形割引のメリットは早期に現金化ができることで、売掛債権を現金化するファクタリングと同じ効果があります。

手形を早期現金化すると運転資金として回すことができ、資金繰りが良くなります。

さらに手形割引は銀行融資のような借入ではないため、貸借対照表やキャッシュフローの内容も改善に結びつきます。

手形割引をしても手形不渡りのリスクは回避できませんが、それは手形を支払期日に現金化する場合も同じリスクがあります。

リスクが同じであれば早期に現金化して事業資金調達方法として活用しましょう。

約束手形のメリット・デメリット

約束手形は振出人と受取人の双方にメリット・デメリットがあるので、それらを踏まえた上で活用しましょう。

振出人のメリット・デメリット

振出人のメリットはもちろん支払を延長することができるという点です。

支払を先延ばしにできれば、その間に売掛金も現金化され資金繰りが良くなります。

また、手形を振り出さずに融資でお金を借りて支払うと利息がかかりますが、約束手形の振出によって利息がかかることはありません。

デメリットとしては手形が不渡りになった場合、取引先だけでなく金融機関からの信用も失うという点です。

特に6ヶ月以内に2回手形不渡りになると2年間は銀行取引ができなくなり、融資を受けることも不可能となります。

これが原因で倒産するケースが多いので手形不渡りには十分注意してください。

支払いを先送りにするよりも、支払いのための資金調達を行う方が有益な場合もあります。

緊急時の資金調達方法として少額・短期の利用に最適なビジネスローンも検討するようにしましょう。

受取人のメリット・デメリット

受取人は現金の受取が先延ばしになるので、現金払いに比べるとメリットはないと言ってもいいでしょう。

しかし約束手形を受け取ることで、手形割引で早期現金化の可能性があるので、口約束で支払を延長されるよりはメリットがあります。

また手形不渡りは振出人にとってもデメリットですが、受取人にとっても大きなデメリットです。

最終的に回収できないリスクがある上に、支払期日があるので期日管理も必要になります。

確実に手形を現金化するためには、早めに取引銀行に取立を依頼しておきましょう。

取立手数料はかかりますが、期日管理の手間とリスクを回避できます。

受取人は自由に譲渡することができるという点ではメリットですが、金額を分割して譲渡できないことがデメリットとなります。

しかし最近では電子記録債権のシステムが普及し、電子手形として発行されていれば分割譲渡も可能です。

まとめ

経営者にとって売掛金は早く回収し、支払はなるべく引き延ばすということが、資金繰りを良くする方法のひとつです。

その点で約束手形は支払を先送りにできるので、資金繰りを良くする手段として活用できます。

ただし、不渡りのリスクなどを考慮した上で、「支払いを先送りにすること」と「すぐに支払うための短期的な融資を利用すること」のどちらが有益なのかをよく検討してから利用しましょう。

受取人となった場合は、特に支払期日を過ぎてしまわないように十分気をつけることです。

 

 

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