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2023/10/25

ビジネスにおける取引先への決済方法には、即日現金払い以外に一定期間支払いを延長する方法があります。

そのひとつに商業手形を振り出すという支払方法があります。

商業手形を受け取った場合、その手形を受取手形と呼ぶことになりますが、初めて手形を受け取った場合には処理方法にとまどうかもしれません。

今回は受取手形の扱いについて解説しましょう。

ライター嶋崎の実物写真

【ライター】嶋崎
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手形とは?

そもそも手形とはどのようなものかがわからない人もいるかもしれません。

一般的に商取引で利用されている約束手形を例にして、そのしくみから解説しましょう。

約束手形の目的

例えば仕入れ資金を支払う場合、手元に現金がなければ取引先に支払期日を引き延ばす交渉をすることになります。

取引先は口約束よりも確実なものを求めるのが普通です。

第三者に対抗したり、支払いがなかったりした場合に、法的な根拠があったほうが回収しやすいからです。

約束手形は必要な要件を記載していれば、法的な裏付けとなる債権証書となります。

つまり手形の振出は取引先に安心感を与えながら、支払期日を延長することができる決済方法と言えます。

約束手形の振出

約束手形を発行することを振り出すと表現しますが、手形の振出はだれでもできるわけではありません。

約束手形のしくみは支払期日に当座預金にある残高から、手形を持参した人に支払う流れとなります。

直接指定した銀行支店に出向くことができなければ、取引銀行などに依頼して手形交換所を通して現金化することもできます。

いずれにしても手形を振り出す人は当座預金口座を開設している必要があります。

当座開設は銀行取引が長く、銀行に信用力がなければ開設自体が難しい口座です。

そのため個人事業主が当座預金を開設するのは、一般的に法人よりも難しいのです。

しかし手形を受け取るのは法人、個人とは関係ないのでだれでも受取手形を現金に替えることができます。

約束手形は譲渡ができる

約束手形には裏書欄があり、だれがだれに譲渡したかを記録することができます。

裏書は単に譲渡の記録だけでなく、法律的な根拠も与えられるので、裏書が連続している限り最終的に譲渡された人に現金化の権利があります。

また裏書に記載されている手形を譲渡した人(裏書人)にも、手形不渡りの場合に返済の責任が生じます。

この譲渡が簡単にできる点も約束手形のメリットのひとつです。

約束手形を受け取った場合の処理方法

取引先から受け取った手形、受取手形はどのようにして現金化するのでしょうか?

受取手形の処理方法はいくつかあるのでご紹介しましょう。

支払期日まで待つ

資金繰りに余裕がある場合は、手形に記載されている支払日まで待つことで、それほど費用をかけずに現金化できます。

しかし、その前に受取手形が有効なものかどうかをチェックしましょう。

・約束手形要件
・受取人の名前(名宛人)
・支払金額
・振出人(支払人)の署名
・振出日・振出地
・支払日(満期日)・支払地

上記の他に支払条件が記載されていると約束手形は無効となります。

例えば、分割で支払う、商品到着後に支払う、免責が記載されているなどの場合、手形は無効です。

ただし白地手形を呼ばれる一部必要要件の記載がないものは、商慣習上認められていますが、最終的にはすべて記載する必要があります。

受取手形が有効であることを確認したら、支払期日に指定された銀行で現金化することができます。

指定銀行が遠隔地であれば自社で取引をしている銀行に、手形の取立を依頼します。

手形を現金に変えることができるのは支払期日を含めて3営業日となるので、取立依頼は支払期日前に行ないましょう。

1,000円程度の取立手数料がかかりますが、遠隔地に出向く交通費と手間を考えると取立を依頼するほうがお得です。

裏書譲渡して支払いする

受取手形は譲渡することができるので、金額によってはそのまま譲渡して支払に充当するという方法もあります。

受取手形の金額は分割することはできませんが、額面金額と一致する、または額面金額以上の支払いがあればその一部として支払うことができます。

約束手形のメリットは譲渡可能なことなので、それを生かして取引先への支払に使用することができます。

手形の裏面には裏書人(譲渡する法人や個人)と被裏書人(譲渡される側)を記載できるようになっています。

裏書人は法人の場合、社名・代表者名を記載して捺印しますが、特に実印・銀行印である必要はありません。

非裏書人は譲渡する相手の社名や氏名を記入しますが、未記入でも手形としての効力はあります。

受取手形の譲渡によって支払う場合は、もちろん取引先の承諾が必要です。

手形割引で現金化する

銀行イメージ

手形振出日から支払日までの期間を支払サイトと呼んでいます。

支払サイトは30日単位となっていて平均90日サイトで支払うのが一般的です。

しかし、手形の支払期日前に他の支払いがあり、取引先から手形での支払いを拒まれた場合には、手形を早期に現金化する方法もあります。

これを「手形割引」とよんでいますが、銀行や手形割引業者が取り扱っています。

手形割引には手数料(手形割引料)がかかりますが、早期に現金化することで資金繰りが楽になるメリットがあります。

銀行の手形割引は融資の扱いとなります。

手形の金額は当座預金口座から支払いますが、支払期日前には当座預金に残高がない状態です。

そのため銀行としては返済財源がない状態で支払うことになるので、融資扱いとなり審査をすることになります。

つまり銀行で手形割引の依頼をすると、手形を持ち込みした法人や個人の信用力によっては断られるケースもあります。

銀行取引が浅い場合や初めての場合は、銀行ではなく業者に依頼するしかありません。

業者での手形割引は手数料が高くなりますが、審査はなく手形そのものの信用力で判断します。

また、手形は現金化のスピードも銀行よりも速いというメリットもあります。

ただし、貸金業者でなければ手形割引はできないので、貸金業の登録番号は必ず確認しましょう。

手形不渡りのリスク

受取手形には手形不渡りのリスクがあり、受け取り後にそれを回避する方法はありません。

手形を受け取ってから支払日までが長期間になるほど、不渡りのリスクは高くなります。

手形割引で現金化したとしても、手形が不渡りになると手形割引の利用者に支払う義務があります。

裏書譲渡した場合は裏書人に支払義務がありますが、裏書人が複数いる場合はすべての裏書人に責任が生じるので、必ずしも単独で責任を負うものではありません。

受取手形が不渡りになった場合は、裁判などで争うことも考えないといけないので、受取前に充分取引先の経営状態を調査する必要があります。

特に取引歴の浅い、または新規取引先の場合は手形を受け取る場合は慎重に考慮しましょう。

受取手形の仕訳

手形を受け取ったり振り出したりした場合の会計処理は、現金とは違う仕訳になります。

手形に関する仕訳についても解説しましょう。

受取手形の処理

商品代金支払いとして100,000円の手形を受け取った場合、仕訳勘定科目は次のようになります。

借方 受取手形100,000円
貸方 売上100,000円

その後支払期日が到来して現金化された場合は次のように処理します。

借方 当座預金100,000円
貸方 受取手形100,000円

また、手形割引により現金化した場合は次の処理となります(手形割引料10,000円の場合)。

借方 当座預金90,000円
手形売却損10,000円
貸方 受取手形100,000円

なお受取手形を現金化する場合は、普通用金でも受け取れるので、当座預金勘定ではなく普通預金勘定でも構いません。

手形を振り出した場合の仕訳

手形を振り出すことは手形債務となり、貸借対照表の債務が増加します。

仕入代金として100,000円で振り出した支払手形は次のように処理します。

借方 仕入100,000円
貸方 支払手形100,000円

さらに手形を決済した場合には次の処理となります。

借方 支払手形100,000円
貸方 当座預金100,000円

裏書譲渡の場合の仕訳

受取手形を現金化せずに譲渡した場合でも、もちろん仕訳が必要になります。

A社からの受取手形(100,000円)をB社の仕入金として譲渡する場合は次の処理となります。

借方 仕入100,000円
貸方 受取手形100,000円

売上代金の支払いが裏書譲渡の手形の場合は次のとおりです。

借方 受取手形100,000円
貸方 売上100,000円

まとめ

受取手形についてはおわかりいただけたでしょうか?

約束手形はお金ではありませんが、同じ価値を持つ有価証券です。

しかし約束手形にはいろいろルールがあるので、その点をよく理解しておかないと価値がなくなることもあるので注意しましょう。

また、受取手形をそのまま支払期日まで待つよりも、手形割引で早期現金化を図るとメリットが大きくなります。

手形を受け取ったらそれを活用することを考えましょう。

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