手形貸付と証書貸付の違いとは

更新日:2017/10/11
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一般的に銀行融資の融資形態には4種類あり、短期融資には手形割引、手形貸付、当座貸越の3タイプが、長期融資には証書貸付が使われています。

このうち手形割引は、取引先が保有する約束手形・為替手形等を銀行に買い取ってもらい、銀行は手形額面から割引料を差し引いて残金を取引口座に振り込むことで取引先に資金調達を行う方法なので、厳密には手形の売買で融資とは言えませんが、他の3タイプは典型的な融資の形態と言えます。

そこでこの記事では、融資の中核をなす手形貸付と証書貸付に焦点をあて、その両者の違いや個々の融資形態のメリット・デメリット、また手形貸付と対比した当座貸越の利用法、併せて金利や税金にも触れてみたいと思います。

手形貸付とは

銀行イメージ

手形貸付とは短期借入金の一種で、会社(企業)や個人事業主が発行した約束手形を銀行に差し入れ、銀行はそれと交換に融資を実行する形態の資金調達方法を言います。

また手形貸付を行う前に、銀行と融資取引を行う基本の取り決めを決めた「銀行取引約定書」を交わし、以後は手形貸付を行う都度、約束手形だけを銀行に差し入れて融資を受けるルールになっています。

ただし、この約束手形は、銀行が用意した手形貸付専用の手形に事業者が署名捺印して振出した手形であり、銀行取引で当座預金を利用している事業者が、取引先に交付する決済用の約束手形とは異なるので間違わないよう注意して下さい。

通常、手形貸付に使う約束手形の支払期日は1年以内に設定され、銀行は融資実行に際し、支払期日までの利息を先取りして徴収します。

具体的に言うと、たとえば融資額500万円、金利年2.0%、融資期間1年の条件で手形貸付を実行すると、銀行はまず利息10万円差し引き、残りの490万円を融資先の取引口座に振り込んで融資を行い、1年後に500万円で融資先から一括返済を受けます。

さらに手形貸付に関しては、会社が手形の返済期日前にお金ができて早く返済したい場合、期日前返済ができるので、返済と同時に前払いした利息の一部が計算されて戻し利息として返ってきます。

手形貸付に伴う融資金は主に運転資金として利用されています。

また運転資金にも色々な種類があり、商取引での売上金の資金回収日と仕入れ業者への支払い日の違いから発生する資金ショートをカバーする運転資金のほか、従業員への賞与資金、税務署への納税資金など、季節資金と言われるものにも利用されています。

手形貸付に伴う審査では、主に「その手形を何で返済するのか」「返済は確実か」などをメインに審査が行われるので、例えば建設会社への融資なら引当工事明細書がチェックの対象となります。

また不動産会社への融資では、販売先との契約の事実や販売金額、物件の引渡日及び売上代金入金日など、システム会社なら契約内容とシステムの受注代金、その販売代金の入金日などがチェックされます。

手形貸付の取り扱い先としては、主に民間金融機関である銀行や信用金庫があり、プロパー融資のほか、信用保証協会を利用した保証付き融資で利用することもできます。

また不動産等の担保を差し入れることで手形貸付の金利を安くしてもらえることもあります。

ただし公的融資機関である日本政策金融公庫では、長期資金のみ取扱いしており、手形割引や手形貸付等の短期資金融資には対応していないので注意が必要です。

証書貸付とは

証書貸付とは手形貸付等の短期借入金と異なり、融資期間1年以上の長期借入金に利用する融資形態のことのことを言います。

貸付方法は金銭消費貸借契約書によるものが一般的で、昔は契約書を取引先が銀行に差し入れする形で行われましたが、近年は銀行と取引先が同じ契約書を2部作成し、相互に持ち合う形が一般的となっています。

証書貸付では手形貸付の一括返済と異なり、分割で返済できることが特徴のひとつです。

そのため金銭消費貸借契約には融資金額、金利のほか、当初借入日、最終返済日、返済回数、返済方法、毎月返済額等が盛り込まれ、分割返済の方法が明確化されています。

また毎月の返済額には返済元金とともに支払い利息も含まれており、証書貸付における返済方法は主に以下の2つのタイプからなっています。

⒜元金均等分割返済

元金均等返済では、元金が毎月均等に返済される一方で金利は融資残高にスライドして支払われます。

そのため元金均等返済では、元金の返済は早く進みますが当初の毎月返済額が多くなるので、事業利益が十分でなく返済財源が乏しい先には返済が厳しい返済方法です。

経営内容が健全な事業先向きの返済方法と言えるでしょう。

この方式は主に事業性資金を借入時の返済方法として活用されています。

⒝元利均等分割返済

事業資金の融資の返済方法として利用できないことはないが、主に住宅ローンや教育ローン等の個人ローン(長期借入金)の返済方法として使われている返済方式がこの元利均等返済です。

元利均等返済の特徴としては、毎月返済額が一定なので、入ってくる収入が毎月定額のサラリーマンなどには計画的に返済ができ便利な返済方式になっています。

ただこの返済方式では、常に利息の返済が元金に先行して支払われるので、元金均等返済方式に比べて元金の償還が遅くなります。

また元金の償還が遅れる分、元金均等返済方式より元利均等返済方式の方が利息を含む総支払額が増えるのも特徴のひとつです。

証書貸付における資金使途は主に長期運転資金か設備資金です。

また事業融資の返済財源は事業から生み出される利益と減価償却相当額です。

銀行の融資審査では、この事業利益と減価償却相当額をベースに、事業計画書や売上・利益の動向なども勘案し、証書貸付で実行された長期借入金が最後まできちんと返済できるかチェックします。

さらに同じ証書貸付を利用する住宅ローンや目的別個人ローン等の場合も、最終返済期限まで延滞せずきちんと返済できるか、本人収入の安定性・継続性をしっかり審査します。

手形貸付のメリット・デメリット

手形貸付のメリット・デメリットをまとめると以下のようになります。

メリット

・返済財源をある程度特定して融資を行うため、借入の目的が明確化される
・返済財源や返済期日等、融資条件を明確にして借入するため、ほぼ決済確実であり、一時的に借入が増えても最終では借入総額が増えない
・短期借入であるため証書貸付に比べて利息負担が少ない
・一度手形貸付で借入実績を作ると、その範囲において繰り返し、後の手形貸付が利用しやすくなる
・手形貸付の場合、仮に事業利益があまり出てなくても、返済財源だけ特定できれば、証書貸付に比べて審査も通過しやすい

デメリット

・手形貸付の基本の返済は一括返済であり、一度に多くの資金が必要になる
・取引相手の都合で資金回収期間が延ばされるなど、突発的なケースに弱く、銀行等に依頼して返済期間や返済期日を延長しなければならないケースもある
・融資形態の性格上、1回の審査で完了する証書貸付と比べて、都度の審査や手形の書き換えなど、どうしても手続きの数が多くなり管理が煩雑
・何らかの理由で手形の決済ができず延滞してしまうと、ルールに基づき不渡り処分制度が適用され、当座預金取引や融資取引が一定期間できなくなり、事業者としての信用を失う

証書貸付のメリット・デメリット

証書貸付のメリット・デメリットは以下のようになります。

メリット

・事業に証書貸付で長期運転資金を取り組むと、資金繰りが安定し、返済は分割返済なので利益からの計画的な返済ができる
・返済は長期に渡るため、手形貸付などの一括返済による資金繰りなど特に気にせず経営者が事業に専念できる
・証書貸付では返済で据え置き期間の設定が可能であり、その間元金支払いが猶予されるので、創業から間がなく事業が不安定な時、新事業立ち上げで売上が安定的になるまでの間など、この据え置き期間をうまく利用すれば返済が軽減され、事業に注力できる
・長期資金の返済中で仮に業況が悪化しても、毎月返済を延滞しない限り、金融機関にその事実を気づかれないので、その間に経営の立て直しを図ることができる
・住宅ローン利用の場合、証書貸付を利用することで、お金を貯める前に大きな物件を先に手にすることができる

デメリット

・証書貸付の金利は長期貸付のため手形貸付の金利より高めである
・返済が長期化することで、金利を含む総支払額が膨らむ
・証書貸付の借り過ぎは、毎月返済額が増えることで返済が負担になり資金繰りを圧迫する
・事業業績が悪化もしくは利益が出なくなると、多くの金融業者は融資に慎重になり、事業者は手形貸付を除き証書貸付による長期資金を借りにくくなる
・手形貸付による短期借入と比べて、証書貸付による長期借入は長期間、借入リスクを背負うことにつながり経営の不安定さが増加する

当座貸越とは

手形貸付とともに資金調達方法のひとつに当座貸越があります。

これは短期資金の借入の方法のひとつで、取引先ごとに金融機関が貸出の限度額(極度額ともいいます)を設定し、その範囲内で事業者は繰り返し資金を借入・返済することができます。

当座貸越は極度額方式なので、直ぐに資金が必要でなく、都度事業資金を自分の都合に合わせて利用したい人向きの融資制度とも言えます。

ただ銀行側から言えば、その顧客のために常に極度額以内の融資金を用意しておかねばならないため、資金の効率性が落ちる点や、かつ資金使途で個人の生活資金、遊興費など、事業者に何に使われるか分からないリスクがあるなどのデメリットもあります。

そのため、手形貸付・証書貸付等の審査と比べて、どうしても当座貸越の審査はやや難しくなりますし、貸出リスクを反映して金利も割高になります。

手形貸付とは異なる当座貸越の効果的利用方法

銀行側にとってのデメリットは裏返せば顧客側のメリットでもあります。

当座貸越契約によりいったん極度額を設定すれば、後は限度額内で繰り返し利用できるので、手形貸付のように毎回資金が必要になるたびに銀行に相談する必要もありません。

また当座貸越の審査は1度限り、後は業況の悪化や返済の延滞でもしない限り、1年~3年程度のサイクルで極度額は自動更新されますので安心して利用できます。

さらに資金が必要な時以外、利用極度額は使わなくてもいいので、融資残高以上の金利負担がないのも顧客のメリットです。

ただしダメな利用方法として、手貸貸付・証書貸付等に比べて金利が割高なため、利用しやすいと極度額いっぱいまで借りっ放しにしておくと、支払利息ばかり膨らむ元凶となります。

極度額をきちんとコントロールして利用するリテラシィが顧客には求められています。

一方、預金者として当座預金を利用している場合、当座貸越は単独で融資枠として使う以外にうまい活用方法があります。

当座取引では発行した小切手・手形の支払いや、クレジットカード等の決済で、預金残高が知らないうちに資金不足の状態になっている時があります。

しかしそんな場合でも、当座貸越枠を当座預金にセットしておくと、貸越枠から自動的に決済してくれるので安心なのです。

当座貸越にはこのような便利な利用方法もあります。

当座貸越は単独で融資枠として使う方法以外に、預金者として当座預金を利用している場合、うまい活用方法があります。

当座貸越枠を取引銀行の当座預金にセットしておくと、当座預金で発行した小切手・手形の支払い、クレジットカード・公共料金等の決済等で当座預金の残高がマイナスになっていても、当座貸越枠から自動的に決済してくれるので安心です。

また銀行・消費者金融等の消費性カードローンは当座貸越制度を個人向けローンに活用したものです。

以上、当座貸越は企業融資、個人ローンにもうまく活用されています。

手形貸付から証書貸付への借り換え

手形貸付から証書貸付への借り換えで、良し悪しの判断はケースバイケースです。

手形貸付を繰り返し継続して利用していると、やがて銀行から証書貸付への借り換えをすすめられることが多くなります。

同じ手形貸付のみの取引を繰り返すことは、実質融資金を返済していないに等しいので、銀行としては一度でも返済して返済実績を作ってもらいたいのが本音です。

またこれは支店から本店へ審査を通りやすくするためのテクニックでもあります。

そのため取引銀行は手形貸付から証書貸付への借り換えで返済を図ろうとします。

ところがその場合、銀行は長期の証書貸付への借り換えを理由に、同時に金利も引き上げようとするので、手形貸付の利用者にとってはデメリットとなることが多くなります。

さらに借り換えでこれまでは必要なかった毎月返済という負担も乗じるので、ダブルで手形貸付の利用者には負担につながってきます。

もちろん必ずしも銀行の要請に応じなければならないわけでもありませんが、切り替えに応じなかったことを契機に、次の手形貸付の更新で銀行が素直に応じてくれるかどうかも流動的になってきます。

最悪の場合、更新を銀行に拒否されて、融資残高の一括返済を求められるかもしれません。

その可能性を考えれば、証書貸付への借り換えに応じるのも考え方のひとつだと考えます。

ただその場合でも、素直に応じるだけでなく、依頼してきたのは銀行側であるという事実を逆手にとって、できるだけ毎月返済額が少なくなるよう、より長期の返済期間や、低い融資金利を交渉で勝ち取ることが肝心だと思います。

それはひいては会社の資金繰りの安定につながるので、安易に妥協すべきではないというのが私の考えです。

手形貸付・証書貸付と金利

一般的に手形貸付の金利は証書貸付の金利に比べて安いのが相場です。

また貸出リスクは、貸出日から融資期日までが長期になればなるほど高まるので、金利の水準もそれに沿って高くなっています。

ただし、証書貸付の金利は事業性資金の場合、融資先の業況、利益の幅や傾向、担保・保証人の有無等によってかなりその水準に幅があります。

担保のイメージ

一方、証書貸付のうち、個人ローンの住宅ローン金利は安く、教育ローンやカーローン等の目的別ローンはやや割高なのが一般的です。

融資取引で手形貸付を利用するか、証書貸付を利用するかは、人それぞれにより事情が異なるので一概に言うことは難しいのですが、最初は手形貸付で実績を積み、徐々に証書貸付に切り替えて、最後は手形貸付と証書貸付を資金使途に合わせてうまく使い分けて利用する、というのが理想的な金融機関の使い方だと考えています。

結局はそれが最も効率的な融資制度の使い方だし、金利も安くつくことにつながるでしょう。

手形貸付・証書貸付と印紙税

銀行取引において手形や金銭消費貸借契約証書を利用する場合、印紙税がかかります。

手形貸付・証書貸付等の融資形態を通じて、手形や消費貸借契約に関する印紙税の金額は、融資金額によって段階的に分かれており、国税庁のサイトを見るとその税額が区分表示されています。

そこで一般的な融資額の範囲でその区分表示額を抜き出してみると以下のようになります。 

・100万円超500万円以下、2,000円
・500万円超1,000万円以下、10,000円
・1,000万円超5,000万円以下、20,000円
・5,000万円超1億円以下、60,000円

手形貸付・証書貸付のどちらで印紙代が多く掛かるかは、各々の1回あたりの融資金額や手形貸付・証書貸付の利用頻度等、ケースバイケースなので一概には言えませんが、金額や利用頻度をうまくコントロールすることで印紙税の節約は可能です。

まとめ

融資取引において最も代表的な手形貸付・証書貸付取引を中心にその違いやメリット・デメリット等解説してきました。

最近の傾向として事業者を取り巻く資金調達方法はどんどん多様化しています。

銀行融資や公的融資以外にも、消費者金融・金融会社のビジネスローン、売掛債権活用によるファクタリングなどもさらに制度が整備され使いやすくなってきました。

しかし時代は変わっても、短期資金融資の主要な融資形態である手形貸付や長期資金融資の証書貸付がなくなることはないと考えています。

事業経営者であれば、仮に融資の専門家でなくても、まずはこの二つは最低限マスターしておかねばならない最低限の知識です。

この記事がその理解のための参考になれば幸いです。

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