クラウドファンディングを利用した資金調達は、日本国内でも活用されています。
しかし、まだ利用したことがない中小企業経営者や個人事業主にとっては、クラウドファンディングと税金の関係についてはまだ理解できていない点が多いでしょう。
クラウドファンディングで調達した資金には、どのような税金がかかるのでしょうか?
クラウドファンディングのタイプ別に税金との関係を解説しましょう。
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【ライター】嶋崎 -
当サイトを運営している嶋崎と申します。
わたしは経営の経験はありませが、サイト運営に携わり約2年が経過するなかで、事業主のお金の悩みは特有であることを勉強してきました。
たとえば事業主へ実際にインタビューをしたり、実際にセミナーに参加したりするなどして、資金調達の流れやどのようなときにお金の不安を感じるのかを勉強しています。
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購入型クラウドファンディングと税金
購入型クラウドファンディングでは出資者(支援者)に対して、見返りとしてお金ではなく商品やサービスを提供する「リターン」が与えられます。
これは法律上、商品やサービスを購入したのと同じとみなされます。
法人税と所得税
購入型クラウドファンディングは商品の売買取引とみなされ、通常の売上と同じ解釈となるので、資金調達者(プロジェクト実施者)が法人の場合は「法人税」、個人事業主の場合は「所得税」として確定申告を行ないます。
資金提供者が個人の場合は税金上の処理は必要ありませんが、法人や個人事業主が事業に関わる商品として取得した場合は、支援金を経費として計上することができます。
購入型クラウドファンディングでは、通常の取引と同じように処理すれば問題ありませんが、リターンの価値によっては贈与税の対象となることもあります。
贈与税と消費税
商品価値に比べて極端にリターンの価値が低い場合は、贈与とみなされて「贈与税」の対象となります。
贈与税は、法人税や所得税と比べて税率が高いので、リターンは適切に設定する必要があります。
資金調達額を増やすためにリターンの価値を下げると、出資金が集まらないばかりか贈与税の対象にもなるので十分注意しましょう。
ちなみに年間110万円までは贈与税は非課税となります。
また、集まった支援金はクラウドファンディング業者(プラットフォーム)から支払われる際に、消費税が差し引かれます。
支援金全額を人件費のような消費税が非課税となる資金に運用しても、課税対象となるので消費税課税事業者は注意しましょう。
支援金を何に使ってもすでに消費税の対象となっているからです。
購入型クラウドファンディングの会計処理
購入型クラウドファンディングは通常の売買と同じ扱いとなるので、会計処理も通常通り行ないます。
プラットフォームに支払った手数料は経費として処理することができます。
1,000万円の資金が集まり200万円の手数料がかかった場合は次の処理となります。
プラットフォームから支援金が振り込まれたとき
借方勘定科目:普通預金 8,000,000円
手数料 2,000,000円
貸方勘定科目:前受金 10,000,000円
リターンが完了したとき
借方勘定科目:前受金 10,000,000円
貸方勘定科目:売上高 9,259,260円
消費税 740,740円
プラットフォームから振り込まれた時点では、リターンが完了していないので商品代金が未払いの状態なので前受金として処理します。
リターン完了後に取引が完了するので消費税が発生します。
10,000,000円が消費税込みの場合の処理方法となります。
投資型クラウドファンディングと税金
投資型クラウドファンディングは、匿名組合(投資家集団)を作りその組合がプロジェクトオーナー(出資を受ける企業)に出資を行なうしくみです。
投資型クラウドファンディングでは出資を受けるだけなので、この時点で課税が発生することはありません。
投資型では通常通り事業を行なって利益が発生した場合に、法人には法人税、個人には所得税が発生するだけです。
一方で投資型クラウドファンディングでは、匿名組合員に利益を分配することになりますが、この分配した利益は経費として計上することができます。
匿名組合員が受け取った分配金は雑所得として源泉徴収されます。
寄附型クラウドファンディングと税金
寄附型クラウドファンディングでは、購入型にあるリターンが存在しません。
基本的には寄付型は見返りがないため、贈与税の対象となりますが、個人と法人では扱いが違うため、いくつかのパターンに分かれます。
プロジェクトオーナーが個人の場合
プロジェクトオーナーは受け取った寄付金は、支援者が個人か法人によって扱いが違います。
支援者が個人の場合
プロジェクトオーナーが受け取った寄附金は贈与税の対象となるので、年間110万円を超えると申告の必要があります。
プロジェクトを起案する前に目標金額の設定には十分配慮しましょう。
また、プラットフォームに支払う手数料も経費にはならないので注意しましょう。
支援者にはもちろん課税されませんが、寄附の対象が個人のため、寄付金控除などは受けることはできません。
支援者が法人の場合
プロジェクトオーナーが受け取った寄付金は一時所得扱いとなり、課税所得とみなされます。
一時所得の特別控除額は50万円となるので、50万円を超えた部分に課税されます。
法人支援者は寄付金として一定の範囲内は経費として処理することができます。
プロジェクトオーナーが法人の場合
プロジェクトオーナーが法人の場合は事業所得として法人税の対象となりますが、支援者は個人と法人で違いがあります。
支援者が個人の場合
プロジェクトオーナーにとって寄附金は受増益として利益になるため、法人税の対象となります。
ただし、利益として処理するためプラットフォームへの支払手数料も経費として認められます。
支援者に税金は発生しませんが、寄付金控除の対象となる可能性があります。
プロジェクトオーナーがNPO法人や学校法人、自治体などの場合は特に可能性が高いので事前に確認しておきましょう。
支援者が法人の場合
法人支援者は寄付金を必要経費として処理することが認められています。
寄付型クラウドファンディングの会計処理
寄付型クラウドファンディングの会計処理は、個人と法人でそれぞれ処理方法が違います。
個人から個人への寄附
寄付金ではなく贈与とみなされるので、個人事業者であっても受け取った時点では個人に対する贈与なので、会計処理は必要ありません。
事業用として利用した場合に、「事業主借」とそれぞれの勘定科目で処理しましょう。
法人から個人への寄附
一時所得の扱いとなるので、上記のケース同様「事業主借」と利用した事業費の科目で処理します。
個人(法人)から法人への寄附
寄附を受け取った法人は「受贈益」の勘定科目に振り替えます。
法人出資者は損金扱いとなるため「寄付金」の科目で振り替えます。
個人出資者は個人事業者であっても経費としては認められません。
クラウドファンディングと控除
クラウドファンディングを利用して出資した金額が、確定申告の控除に該当する可能性があるのは、寄付型クラウドファンディングだけとなります。
対象となる控除は「寄附金控除」「寄付金特別控除」となりますが、そのプロジェクトが対象になるかどうかはプロジェクトの説明に明記されています。
控除が目的で寄付する場合は必ず確認しておきましょう。
寄附金控除と寄付金特別控除の違い
寄付型クラウドファンディングでは、「寄附金控除」「寄付金特別控除」のどちらかを選択して確定申告することができます。
寄附金控除は「所得控除」、寄付金特別控除は「税額控除」となり、次の違いがあります。
所得控除は税率をかける前に収入から寄付金を差し引きます。
一方、税額控除はいったん仮に税額を計算した後に、寄付金を差し引く方法です。
どちらが節税になるかは実際に計算して確かめてみましょう。
寄附金控除と寄付金特別控除の計算方法
▼寄付金控除の計算式
寄附金控除額=申告前年に寄付した金額-2,000円
納税額=課税所得(収入金額ー諸控除[寄付金控除含む])×税率
▼寄付金特別控除額の計算
寄付金特別控除額=(申告前年に寄付した金額-2,000円)✕40%
納税額=課税所得(収入金額ー諸控除)✕税率-寄付金特別控除
どちらも所得金額の40%が限度となります。
どちらにメリットがあるかは税率や寄付金額によって違うので、両方計算して比較してみましょう。
まとめ
クラウドファンディングで資金を調達した場合でも、一定の税金がかかることがおわかりいただけたでしょうか?
とはいえ、クラウドファンディングとしてのシェアが最も高い投資型クラウドファンディングでは、利用時点で課税が発生することはありません。
税金の面でも高いシェアとなった理由があるのかもしれません。
一方で順調にシェアを延ばしている購入型クラウドファンディングも、売買契約とみなされるので特にクラウドファンディングを利用したから発生する税金はありません。
まだクラウドファンディングを利用していない経営者や個人事業主は、資金調達方法のひとつとして検討してみましょう。