有限責任と無限責任の違いとは

更新日:2019/03/05
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有限責任か無限責任か。

この2つには、会社が倒産したときに、経営者がどれだけ債務を負うことになるのかという違いがあります。

基本的には、個人事業主は無限責任、株式会社や合同会社などの法人は有限責任であることが多いです。

しかし、法人の代表者であっても、無限責任同等の責任を負うこともあるとご存知でしょうか?

この記事では有限責任と無限責任の違いについて紹介します。

有限責任と無限責任の違い

言葉の並びだけで意味を理解したつもりになっていると、思わぬ落とし穴にはまるかもしれません。

まずはしっかりと意味を把握しましょう。

有限責任とは

日本大百科全書によると、有限責任とは「当事者の合意または法律の規定によって、債務者の責任を一定財産または一定額に制限すること」と定義されています。

基本的な単語の為、法律の上では有限責任自体を定義する条文はありませんが、様々な法律に登場しています。

有限責任社員は、その出資の価額(既に持分会社に対し履行した出資の価額を除く。)を限度として、持分会社の債務を弁済する責任を負う、という会社法第580条2項が有限責任に関する代表的な法律です。

有限責任の社員は出資した分に限って責任を負う必要がありますが、「出資額以上に負債を返済する必要がない」という事です。

株主は有限責任

例えば、ある会社の株を買ったとします。

その会社が不祥事を起こして巨大な損失を負って倒産したとしても、購入した分の株の価値がゼロになるだけで会社の損失を返済する必要がないという事です。

このように債務者の責任を一定に制限することが有限責任です。

株式上場している大企業はたくさんの株主が分担して有限責任を負っているのです。

無限責任とは

有限責任に対して無限責任とは、債務者の全財産が債務の引当て(担保)となっている事を意味します。

大日本百科全書によれば、「有限責任にあたらない場合には、無限責任となり、債権者は債務者の他の財産(一般財産)に対しても強制執行をすることができる」と定義されています。

つまり、事業が巨大な損失を抱えて倒産した時、自分の出資金額だけで足りない場合は、自分個人の財産までも返済に充てる必要があり、取り立ては強制執行されるという事です。

これは会社の財布と個人の財布が分かれていない事業形態の場合に当てはまり、主に個人事業主や中小企業に多いです。

個人事業主は無限責任

上記の定義をふまえた上でビジネスに戻りましょう。

白色申告・青色申告事業者の個人事業主は、事業の負債について無限責任を負っています。

自分個人の財布と事業体(会社)の財布が分かれていない為、ビジネスで得た利益も損失も全て事業主に返ってくるのです。

事業資金を借りるのは自分ですし、返すのも自分です。

もし何らかの理由で融資の返済ができなくなった場合は、条件を変更してもらって少しずつ長期間かかって返済するか、財産をすべて処分し、破産するしかありません。

法人代表は必ず有限責任なのか

一般論として、個人事業主に対して法人の代表は、損失が出資金の範囲に限られる有限責任だと言われています。

これはある意味では正しいのですが、補足が必要です。

法人にも種類があり、経営者が有限責任にならないケースがあるからです。

株式会社の場合

株式会社の場合は出資者(株主)が法律上の社員であり、出資金の範囲で責任を負います。

つまり個人事業主から法人成りしたケースで多い経営者と出資者が同一の場合は、自分が出資した金額の分だけ責任を負うので、社員(株主)が一人でも有限責任となります。

ただし、会社の財布と自分の財布は分かれているので、会社の負債を返済しきれなくなったとしても会社が倒産するだけで済みます。

有限責任を悪用した計画倒産について

もちろん、計画的に負債(借金)を踏み倒すことが倫理的に許されるか、作為はなくても法律上は許されるからといって債務者がすんなりと受け入れてくれるか、という問題は別です。

破産法第14条 破産犯罪

破産法という法律の第14条に破産犯罪という項目があります。

これは破産に関する犯罪行為をまとめたもので、破産することを予期して債務者の財産を移動させたり、特定の債務だけを支払ったりした場合に訴えられるというものです。

会社が債務超過になるという事は貸付金が焦げ付くという事ですから、債権者は全力で貸付金を取り返しに来ます。

細かく精査された場合、口座が別だからといって経営者本人が無傷でいられる保証はありませんし、悪質性が認められて罪に問われれば逮捕されます。

また、融資を受けずに倒産を選んだ場合、有限責任という法律は経営者自身への金銭面でのバリアーとはなりますが、お金を回収できなくなった取引相手から恨まれますし、業界内での人間的信用は無くなります。

クレジットの信用情報にも倒産歴ありという傷がつきます。

どちらにせよ、会社を倒産させなくてはいけない程の負債を抱えた場合は厳しい選択を迫られます。

有限責任だからといって、事業が失敗しそうになったら事前に負債だけ会社に残してお金は自分の口座へ移す、というのは簡単には出来ないようになっているのです。

合同会社の場合

おそらく個人事業主が法人成りするケースとして最も多く選ばれるのが合同会社です。

合同会社の場合は株を発行しませんが、やはり会社の財布と経営者である代表社員の財布は分かれています。

その為、会社に投資した分だけの有限責任となるので、株式会社と同様、最悪は会社の倒産だけで済みます。

合資会社の場合

今では非常に少なくなった法人の形態です。合資会社の場合は有限責任社員と無限責任社員の2種類がいます。

設立には現在は無限責任社員が1名を含む最低2名以上の社員が必要です

設立する際に現金ではなく、現物出資で設立できるメリットがありますが、現在は1円株式会社も可能なので、無限責任の法人を作るメリットはほとんどありません。

しかも社員(出資者)が1名になった場合は合資会社の形態を保てず、合名会社へ組織変更する必要があります。

合資会社は知名度も低いため、取引間での信用が獲得しづらいです。設立人数の面でも個人事業では不可能なので、あえて合資会社を作る理由は無いでしょう。

合名会社の場合

合名会社とは複数の個人事業主が共同事業化したものです。そのため、一人では設立できません。複数の個人事業主が同じ会社の看板を使ってビジネスを行う場合に設立するからです。

合資会社と同様に個人事業主が設立するメリットがない会社形態です。

合名会社の社員は全員個人事業主の集まりなので、法人ですが、全員が無限責任を負っています。

このように会社の形態によっては法人といっても必ずしも有限責任となるわけではないので注意してください。

運用上の実態について

法律上は有限責任である株式会社や合同会社においても、中小零細企業や個人事業の法人の場合は事情が異なります。

法律上の原則論では有限責任ですが、事実上は無限責任に近いからです。

例えば、事業の資金繰りが厳しくなった場合、何もせずに倒産を選ぶ人はいないでしょう。

金融機関から融資を受けたり、ビジネスローンを利用したり、事業の継続と立て直しをはかるのが普通です。

何もせずに倒産を選んだ場合は様々な信用を失い、再起できなくなる可能性が高いからです。

融資を受ける条件

問題は融資を受ける際、必ず連帯保証人が必要になる点です。

連帯保証人とは、債務者(自分)が負債を返せなくなった時に債務者に代わって支払い義務を負う人の事です。

しかも連帯保証人には催告の抗弁権と検索の抗弁権がありません。

催告の抗弁権とは、債務者に請求して欲しいと反論する権利で、検索の抗弁権とは、債務者がお金を持っていると知っている場合に、そちらに請求して欲しいと反論する権利です。

つまり、債務者がお金を払えるのに踏み倒した場合でも、一切反論できずに払うしかないという事です。

しかも債権者はどちらに請求してもいいのですから、抗弁権がない連帯保証人が残債をかぶる事になります。

このように連帯保証人は非常にハイリスクなので、一定の知識を持っている人がなってくれる期待はできません。

経営者本人が会社の連帯保証人

会社としてお金が必要になっても連帯保証人を立てられない場合、経営者自身が連帯保証人となってお金を借りる事になります。

会社として返済できない場合は、経営者自身が返済する必要があるので、会社と自分自身の財布が事実上は一体化してしまい、無限責任になってしまうのです。

有限責任は会社と自分の財布が別、という言葉だけが独り歩きした結果、放漫経営につながっては意味がありません。

あくまでも有限責任は法人の運営形態に付帯する条件であって、負債を擦り付ける為の制度ではないのです。

法人化するメリットは有限責任を得る為だけではなく、金融機関や取引先からの信用獲得や税法面にあるのです。

有限責任のメリット

ここまで解説してきた内容をふまえた上で無限責任と有限責任のどちらが良いか、と問われれば、明らかに有限責任の方が好ましいです。

個人事業主でも法人経営者でも結局は融資を受ければ、無限責任ではないか、と思われますが明らかに違います。

経営者が直接、連帯保証人になる事を求められない負債があるのです。

それは取引先への債務です。

取引先への債務は経営者の財布と関係ない

仕入れ代金を払えずに会社が倒産した場合、その負債は経営者に及びません。

仕入れ代金を払うために、金融機関やビジネスローンで融資を受ける場合は連帯保証人が必要ですが、取引先への負債それ自体は会社に付属するので経営者自身の財布とは関係がないのです。

この点だけでも有限責任の法人になるメリットがあると言えるでしょう。

もちろんどんなビジネスを行うかによって得られるメリットは異なりますが、初期段階でまとまった仕入れが必要な事業は有限責任の法人で行うべきです。

個人事業主はすべてにおいて無限責任

仮に無限責任の個人事業主の業態で、多額の仕入れが必要なビジネスを始めて失敗した場合、経営者本人が負債を返済する義務を負います。

しかし有限責任なら仕入れ代金を払えなくなり、ビジネスに成功が見いだせなくなった場合、そのまま倒産すれば負債は会社で止まるので、経営者本人には及びません。

有限責任は最後の命綱

もちろん事業が失敗すれば信用失墜など、経済面以外の点でダメージを負いますが、無限責任の場合は信用と経済面の両方にダメージを受けます。

万が一にも事業が失敗した場合、どちらが良いかは明らかなので、有限責任はビジネス撤退時に最後の命綱となるのです。

有限責任をうまく利用する方法

金融機関から融資を受ける際に知人や親戚が連帯保証人になってくれる場合、もう一つの選択肢を考慮してみてはいかがでしょうか?

不利益だけの連帯保証人

たしかに連帯保証人になってもらうだけなら、融資の際に書類にサインをしてもらうだけで済みます。

実際にお金を貸し付けるのは金融機関なので、サインをした段階で連帯保証人の懐は痛みません。

ところが、万が一にも事業が上手くいかなくなって融資が焦げ付き、経営者が自分の財産をつかって負債をカバーしない場合、残債は連帯保証人が負う事になります。

このようなリスクを負っているにも関わらず、会社経営が成功した時に何のメリットもないのが連帯保証人です。

株を買ってもらうメリット

そこで事業を株式会社の形態にして、発行した株に出資してもらってみてはいかがでしょうか?

株式会社を設立して最初から自分の会社の株を買う形でお金を投資してもらえば、事業が失敗しても投資した金額だけの有限責任になります。

連帯保証人になってもらいお金を借りるのではく、直接出資を受けるのです。

出資者は事業の株主となるので、ビジネスが継続しているうちは株の配当金を獲得できます。

このプランでは実際にお金を出してもらう必要がありますが、株主には経営状態の報告を受ける権利があるので、「いきなり会社がつぶれて債権者がやってくる」ことは無くなります。

・リスクは出資金だけの有限責任になる
・株主なので会社の経営状態の報告を受けられる
・出資金の額に応じて配当金がもらえる
・会社の経営状態が良くなれば、オーナー社長に株を買い取ってもらえる

株主になってもらえば、出資者にこれら4つのメリットを提示できます。

会社と経営者は一心同体

もちろん、連帯保証人になってくれる人がお金を持っていない場合、出資者となってもらうプランは不可能です。

しかし、お金に余裕がない人を連帯保証人に立てて、自分のビジネスの融資を受けるのは如何なものでしょうか?

第三者の善意にすがって融資を受けるのだったら、潔く自分自身が連帯保証人となってビジネスローンを利用したほうが真剣に仕事に邁進出来ますし、まっとうな経営が出来るかと思います。

まとめ

有限責任であれば、会社が負債を抱えて倒産をした際も、自分自身を連帯保証人として融資を受けていなければ、私財を投げうって残債を何とかする必要はありません。

しかし、大抵の場合は自分の会社の融資の連帯保証人は経営者本人です。

事業資金の融資だったから個人には関係ないと思わないように、ビジネスローンなどは計画性を持って利用するようにしてください。

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