2006年の会社法改正によって誕生した合同会社(LLC)とよばれる企業形態は、スモールビジネスやスタートアップに適した会社の形として注目を集め、今では1年で新設される会社の2割を占めるほどになりました。
合同会社は株式会社と比較して、設立にかかる費用などのコストが低く、それでいて株式会社と同等の法人格を有することができます。
ただし、会社を設立する限りは、合同会社であっても株式会社であっても、必要な書類を用意して法務局に届け出なければなりません。
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【ライター】嶋崎 -
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合同会社設立のための必要書類一覧
合同会社を設立する場合、もっとも手っ取り早いのが税理士や司法書士、社会保険労務士に依頼することです。
プロに依頼すれば必要書類や記入項目、記載事項などを全部用意してくれるので、法務局に出向く必要がなく、時間コストの面で最も楽です。
用意する書類は、絶対に必要なものと、場合によっては必要なもの、現物出資をした場合のみ必要なものの3種類です。
絶対に必要な書類
・登記すべき事項(CD-Rも可)
・定款(会社保存用・CD-Rも可)
・定款(法務局提出用・CD-Rも可)
・代表社員の印鑑証明書
・払込証明書
・印鑑届書
・台紙(書類をまとめて印紙を貼るだけの紙)
場合によっては必要となる事もありうるので作成したほうがいい書類
・本店所在地及び資本金決定書
現物出資をした場合に必要な書類
・資本金の額の計上に関する証明書
これらの内、最もシンプルな形で合同会社を設立するには下記の7枚を書類として作成し、登記すべき事項と定款(会社保存用と提出用)はCD-Rで作成します。
- 1.合同会社設立登記申請書
- 2.代表社員の印鑑証明書
- 3.払込証明書
- 4.印鑑届書
- 5.台紙(書類をまとめて印紙を貼るだけの紙)
- 6.代表社員就任承諾書
- 7.本店所在地及び資本金決定書
また、条件によっては最大で下記の12枚か、現物出資の数に応じた証明書を用意してください。
- 1.合同会社設立登記申請書
- 2.登記すべき事項
- 3.定款(会社保存用)
- 4.定款(提出用)
- 5.代表社員の印鑑証明書
- 6.払込証明書
- 7.印鑑届書
- 8.台紙(書類をまとめて印紙を貼るだけの紙)
- 9.代表社員就任承諾書
- 10.本店所在地及び資本金決定書
- 11.財産引継書
- 12.資本金の額の計上に関する証明書
ただし、この中で絶対に必要な書類の一つである定款に関しては、電子定款認証をする事で印紙代4万円を節約できるので、書類ではなくCD-Rがおすすめです。
電子定款認証を行った場合は、書類10枚と定款のCD-R(提出用・保存用)が2枚という構成になります。
DVDやフラシュメモリでの提出は出来ないので注意して下さい。
また、費用はかかりませんが、登記すべき事項についても下記3種類の提出方法があります。
・電磁的記録媒体(CD-R等)に記録して提出する方法
・用紙で提出する方法
オンラインでの登録は煩雑なので、定款と一緒にCD-Rで作成しましょう。
書類作成の手順
書類を準備する手順と合わせて、個別に解説します。
印鑑証明の作成
まずは社員(出資者)の印鑑証明を用意します。
社員というと、一般的には会社に雇用されて給料をもらっている勤務形態の人を意味しますが、法律上は会社に出資している人の事を社員と言います。
その為、株式会社であれば経営実務に一切携わっていなかったとしても、株主が法律上の社員にあたります。
合同会社なら実際に起業した人か、その後に出資をして事業に参加した人だけが社員です。
単に雇用されている人は従業員や被雇用者と呼ばれ、社員ではないのです。
合同会社設立を行う場合は、出資者の印鑑証明が必要ですが、自分ひとりの場合は自分の分だけで良いです。
印鑑証明は市役所で登録できます。
定款の作成
次に定款を作成します。
定款の作成は合同会社設立をする上で、最も記載事項が多くてややこしいところです。
定款とは会社の基本ルールや設立の目的を記したもので、絶対的記載事項、相対的記載事項、任意的記載事項の3つに分けられます。
この中でも絶対的記載事項にあたる下記の6項目は必ず記入する必要があります。これらの項目が抜けていた場合、定款そのものが無効となるので注意して下さい。
絶対的記載事項
・事業の目的
・本店の所在地(最小行政区画まで記載する必要がありますが、番地や建物名は不要)
・社員の氏名または名称及び所在地(一人起業なら、本名と住所を番地や建物名まで)
・社員全員が有限責任社員である旨
・社員の出資の目的とその価格(出資金額)または評価の基準
これらの項目は下記の言葉で言い換えることが出来ます。
・どんな目的で事業をするのか?
・会社の本店はどこにあるのか?
・設立する出資者の名前は何か?
・出資者はどこに住んでいるのか?
・出資者は有限責任であり、何を目的としていくら出資したのか?
会社を設立する上でこれらの不明点は絶対に埋めておく必要があるので、絶対的記載事項となります
相対的記載事項
一方、定款に記載してあることで効力を発揮する項目を相対的記載事項と言います。
絶対的記載事項のように項目が決まっていませんが、主に下記の内容が記載されることが多いです。
・会社を解散する場合
・出資金の払い戻し方法
任的記載事項
最後の任意的記載事項とは、その他の会社ルールの事です。役員報酬の決定方法等が当てはまります。
相対的記載事項や任意的記載事項は複数の社員(出資者)がいる場合は必ず必要となりますが、一人で起業する場合は不要の部分が多いと言えるでしょう。
起業時に最低限の記載事項しかなくても問題ありません。
定款は社員の過半数が同意すれば変更可能だからです。
ビジネスの成長に伴って社員(出資者)が増えるなどして、相対的記載事項や任意的記載事項が必要となったら、社員が増える前に定款を変更することをお勧めします
出資後に定款を変える場合は多数決で決を採るので、自分の思った通りのルールを作れなくなる可能性があるからです。
また、実際に手続きをする時は別途下記の書類が必要となるので参考にして下さい。
定款は書類で提出するケースと電子定款で提出するケースの2つがあります。
電子定款の場合はテキストに定款を記載してCD-Rに保存、提出すればよいですが、書類で提出したい場合は4万円分の印紙を書類に添付する必要があります。
メリットは全くないので電子定款を行いましょう。
代表社員、本店所在地及び資本金決定書の作成
代表社員、本店所在地及び資本金決定書は、定款に出資金額や本店の住所が番地まで記載されていない場合のみ必要となる書類ですが、作成して持参したほうがよいです。
定款に会社の所在地が特定できるほど細かい住所までは記載する必要がありませんが、一人で起業する場合は定款に全部記載することをおすすめします。
代表社員の就任承諾書の作成
代表社員の就任承諾書とは、代表になる社員が代表になる事を承認している事を証明する書類です。無理やり代表に押し込まれたわけでは無い事を意味します。
一人起業の場合は社員が自分だけなので不要ですが、やはり作成して持参したほうがよいです。
代表社員の口座に出資金を払い込んだ後、払い込み証明書の作
出資金を銀行口座に振り込んで、払い込み証明書を作ります。
銀行口座は会社用でも個人用でも構いませんが、既存の口座を使う場合、既に資本金に相当するお金があっても、明記した出資金額を振り込みます
この時、注意点が2つあります。
一つ目は、いつ、だれがいくら通帳の口座に振り込んだのか分かる形にする事。通帳に正しく記帳されるように振り込めば問題ありません。
二つ目は振り込み日時が定款作成日より後になる事です。定款を作る前に出資金が集まっていたら時系列的におかしいからです。
会社設立時の際は作成した書類をまとめて申請を行いますが、書類に記載される日付には正しい順番があるので注意して下さい。
財産引継書を作成
出資金として現物出資をした場合は財産引継所を作成する必要があります。
現物出資とは、現金を口座に振り込むだけでなく自動車やパソコン、不動産や株(有価証券)など、会社に資本となるものを売る事によって会社の資本金額を増やす事です。
現物出資を行えば、手元の現金が少なくても書類上の資本金額が大きくなります。
資本金が大きくなることで、社会的な信用が増しますし、大企業のような取引できる会社の資本金額に制限がある相手とも付き合えるようになるメリットがあります。
自動車などを現物出資として会社の資本金に組み込む場合は、耐用年数が残っている事が条件となりますし、煩雑な手続きが必要です。
例えば、普通自動車であれば6年、大型乗用車(トラック)であれば5年が限度です。
自分と自分のトラックだけで起業して配送業を行う合同会社を作る場合、トラックを会社の資本に換算できるのは購入してから5年までという事を意味します。
同時に現物が出資金額に相当するだけの価値があるか、市場調査して報告書をあげる必要がありますし、不動産なら不動産鑑定士の鑑定評価が必要です。
これらは財産引き継ぎ書に付随する調査報告書として作成する必要があり、さらに資本が移動した会社側に固定資産税などの税金がかかります。
前述のトラックで例えると、トラックの持ち主は自分ではなく、自分が設立した会社という事になるので、トラックにかかる税金は全部会社宛です。
一人起業の場合、払うのは自分なのでどちらでも出ていくお金は変わりませんが、手続きが変わるのです。
このように現物出資を行った場合は、財産引き継ぎ書と合わせて、記載されている現物が確かに資産価値を持っている事を示す証明書が必要です
なお、これらの手続きは現金のみで出資した場合は不要となります
合同会社は資本金1円でも設立できるのが利点です。
取引上の問題で一定の資本金額が必要という事でもない限り、煩雑な書類が必要な現物出資をするメリットは無いでしょう。
登記申請書類の作成
合同会社設立登記申請書を作ります。定款に比べるとテンプレート作業なので非常に簡単です。
法務局では下記のテンプレートを用意しているので参考にしてください。
その他、テンプレートが必要な書類に関しては、法務局が用意したテンプレートを利用してください。
書類に記載する項目は下記の通りです。
商
定款の記載と同一である必要があります。
本店所在地:会社の住所を番地まで含めて記入する必要があります。(番地まで記入された定款か、代表社員、本店所在地及び資本金決定書と同一の記述となります)
登記の事由
設立の手続き終了と記入します。
課税標準金額
資本金額を記載します。
登録免許税
資本金×0.7%で記載しますが、計算結果が6万円未満の場合は一律6万円と記載します。
添付書類
当申請書に添付する書類を箇条書きで記入しますが、現物出資の有無などによって作成した書類の数が変わります。
最終的に必要な枚数が異なるので、数え間違えない様に注意しましょう。
日付
法務局に申請書を提出する日の日付を記入します。
記名押
本店所在地の住所、会社名、代表社員の住所、代表社員の名前の順に記載します。代表社員の名前の横には会社の代表印を押します
法務局名
書類を提出する法務局名を記入します。合同会社設立の申請は、最寄りではなく、本店所在地を管轄する法務局で行います。
事務所と自宅が分かれている場合は注意しましょう。
登記すべき事由
登記申請書と同様の書類を用意するのですが、CD-R等を使います。
http://www.moj.go.jp/MINJI/MINJI50/minji50.html
提出するCD―Rに保存する内容は簡単なテキストです。
テキストファイルに下記の内容を打ち込んだらCD-Rに保存して提出するのです。
http://www.moj.go.jp/MINJI/MINJI50/0101.txt
法務局はオンラインを推奨していますが、設定が煩雑なのでおすすめ出来ません。
http://houmukyoku.moj.go.jp/tokyo/page000046.pdf
台紙に収入印紙を張り付ける
6万円分の収入印紙を張り付けた台紙が必要です。
紙提出当日に法務局で購入できるので台紙用の紙だけを用意すれば問題ありません。
合同会社設立登記申請書を作成する際、会社の印鑑(社印)も作ってカード交付申請書を作成し、印鑑証明をしましょう。
後は、必要に応じて財産引き継ぎ書や資本金の額の計上に関する証明書、自分で法務局に行かない場合は委任状も用意します。
手元には会社保存用の定款を残します。
書類のまとめ方
これらの書類がそろったら下記の順番で書類一式をホッチキスで止めて、法務局へ登記申請するのですが、クリップ止めの状態で持ち込んでも構いません。
- 1.合同会社設立登記申請書
- 2.定款(電子定款はCD-R・紙定款は謄本)
- 3.代表社員、本店所在地及び資本金決定書
- 4.代表社員の就任承諾書5.
- 5.払込み証明書
- 6.財産引継書(現物出資しないなら不要)
- 7.資本金の額の計上に関する証明書(物出資しないなら不要)
- 8.委任状(税理士に依頼した場合等、代理人申請の場合のみ必要)
先に相談窓口でチェックしてもらってから、印紙を貼ってホチキスで留めて、印鑑届書と一緒に申請窓口に提出すれば完了です
法務局での登記申請方法
ここからは実際に法務局で合同会社の設立登記をする流れを解説します。
申請前チェック
前述の必要書類を揃えたら法務局の法人登記申請部門の窓口へ向かいます。
ここで提出前の相談を受け付けてくれるので書類をチェックしてもらうと良いでしょう。
印紙を購入
次に印紙を買っていない場合は、法務局内で購入します
事前に印紙だけ買いに来る必要はありません。窓口で書類に不備がない状態が確認されてから、提出当日に購入したほうが、手間が省けるからです。
書類の提出と再訪問
印紙を張り付けたら法人登記窓口に所定の書類を提出して完了となります。
窓口で書類が受理されると登記完了予定日が記載された紙を渡されるので、登記完了日に改めて法務局を訪問することで、法人印鑑登録カードと謄本がもらえます。
法務局による商業・法人登記の申請方法の書類にあるように、郵送やインターネットでも登記可能ですが、実際に訪問することで明らかな不備があれば即座に指摘されるため、修正出来るメリットがありますし、何より確実です。
まとめ
合同会社を設立するために必要な書類は、資本金を現金で用意した場合は7~9枚程度、現物出資がある場合は10~12枚程度用意しなければなりません。
初めて会社を設立する場合であれば、記載事項が正しいかどうか、税理士や司法書士、社労士などの専門家に確認してもらうのも方法です。
自分で全て揃えて、完璧な状態で登記申請できれば、会社の設立にかかるコストをかなり抑えることができますが、不備があれば設立までに相当な時間を要することになります。
本番は会社設立後なので、設立に時間を取られないように必要書類についてしっかりと把握しておきましょう。