2019/03/08

会社が倒産すると聞くと、赤字になってやっていけなくなったのかと思うかたがほとんどでしょう。

記憶に新しいタカタ株式会社の倒産も、エアバッグのリコールにともなう795億円の大幅な赤字決算が原因となりました。

しかし、同じく2017年に倒産した企業の統計を見てみると、赤字で倒産した企業の割合は53.7%、裏を返せばほぼ半数の企業は黒字で倒産しているのです(東京商工リサーチより)。

黒字経営なのに倒産するとは一体どういうことなのか、今回は黒字倒産について解説していきます。

黒字倒産とは

黒字倒産を一言で言うと、帳簿上の収支が黒字だが手元に現金が不足しているために、銀行や取引先など外部への支払いが滞り、経営が続けられなくなる状態のことです。

会社の収支にはタイムラグがある

会計上の処理と実際のお金の動きはタイムラグがあります。

黒字かどうかだけに目を配っていると、そのタイムラグに気付けず、黒字倒産という事態に発展してしまいます。

その状態を作ってしまう一つの事例が、売掛金や買掛金がある取引で支払いができなくなる場合です。

売掛金や買掛金とは、実際に現金でやり取りするわけではなく、いわゆる後払い(ツケ払い)のこと。

ケーススタディ

説明を簡略化するため、会社には手元に現金がない状態だとします。

 

1月:ある会社AはB社から商品を1000万円分買掛金で仕入れた(3月に支払う予定)
2月:A社は売り上げを売掛金で1500万円売り上げた(4月入金予定)
3月:B社へ支払わなければいけない買掛金1000万円は売掛金が現金になっていないため支払えず、倒産する

この場合、A社の売り上げは売掛金も利益として計上するため、2月時点で500万円の黒字です。

にも関わらず、3月に支払うべき1000万円を支払えるだけの現金が手元にありません。

そのために支払いが滞り、倒産になってしまうのが黒字倒産です。

逆に言えば、例え赤字であっても手元に現金があって支払いが滞っていなければ、赤字であっても倒産はしません。

黒字倒産はなぜ起こる?

黒字倒産の原因を一言で言えば「手元に支払いするための現金が足りていない」から。

ただそこに手元の現金が不足するに至る理由もいくつかあります。

・買掛金の支払いができなくなる場合
・納税ができない場合
・銀行からの借入金が返済できない場合
・取引先の倒産により資金が回収できなくなった場合

「今年は黒字になりそうだから安心だ」

そう経営者の方が考えているなら、それは間違い。

手元に現金がない限り、どんなに売上を上げて黒字であっても黒字倒産のリスクは存在します。

手元に十分な現金がないのであれば、取引先の倒産や売掛金などで支払いが滞らないよう、現金を手元に残すための対策が必要です。

黒字倒産に予兆はあるのか

「自分の会社が黒字倒産しないか不安」という経営者の方も中にはいるでしょう。

黒字倒産をするときには、なんの予兆もないなんてことはありません。

黒字倒産の予兆としては以下のものがあるでしょう。

・損益計算表(特にキャッシュフロー)が赤字になっていないか
・貸借対照表の自己資本比率が低くなっていないか

こうした兆候がもしみられるようであれば、資金繰りの改善に取り組んだ方がよいでしょう。

ですが、きちんと帳簿をとり資金繰りの状態を確認していればそれほど難しいことでもありません。

損益計算表(特にキャッシュフロー)が赤字になっていないか

黒字倒産の予兆は損益計算表を見ることである程度掴めます。

損益計算書だけを見ていると売掛金や買掛金、銀行からの融資の返還など支払いが終わっていないものまで帳簿に記載されてしまうため、手元の現金の状態がわからないことも。

もちろん最終的に赤字であれば、手元の現金も減っていくことは間違いありませんが、黒字だからと言って、手元に現金があるとは言い切れません。

手元の現金の状態を確認するときにはキャッシュフローの中の、収入と支出の状態を見てみましょう。

たとえ損益計算書で黒字であったとしても、収入よりも支出の方が多くなっている場合には要注意です。

というのも、手元から現金が流出していることを意味しているから。

支出のマイナスが続いている場合、手元に支払いするための十分な現金があるかどうか注意しましょう。

貸借対照表の自己資本比率が低くなっていないか

貸借対照表の自己資本比率にも注目しましょう。

自己資本比率とは、純資産÷(純資産+負債)で表される比率のことです。

この比率は銀行からの借り入れなど負債が多いほど低くなり、負債が少ないほど高くなります。

つまりこの自己資本比率が低い状態の場合とは、持っている資本に対して支払わなければいけない負債が多いということです。

上場企業の自己資本比率の平均は40〜50%だと言われています。

もしこれが20%を下回る場合には、黒字倒産になりやすい状態。

月々のキャッシュフローに問題があると、黒字倒産を引き起こしかねませんので、より注意が必要になります。

どう対策すればいいのか

もしキャッシュフローに問題がある場合や、自己資本比率が低いのであれば、事前に対策しておかないと、いつ自分の身に降りかかってもおかしくはありません。

具体的な対策としては以下の方法があるでしょう。

・入金サイクルと支払いサイクルの調整
・資金繰り表を作成し在庫管理を行う
・大口の案件は着手金や前金をもらうようにする
・与信管理を行う
・資産の現金化
・銀行に返済期間の延長をお願いする

入金サイクルと支払いサイクルの調整

黒字倒産を回避したいなら、入金サイクルと支払いサイクルを調整するのがおすすめです。

簡単に言えば、相手からの入金を早め、自社の支払いを遅らせることができれば、手元に現金がある状態を作りやすくなります。

取引先と交渉する必要がありますし、絶対延長できるというものでもありませんが、まずは交渉してみましょう。

資金繰り表を作成し在庫管理を行う

黒字倒産を回避するには資金繰りを改善しましょう。

資金繰りとは、手元にあるお金と出て行くお金の管理をすることです。

そのためにはまず資金繰り表を作成することがおすすめ。

この資金繰り表とは特定の期間の現金収入と現金支出を分類し集計することです。

この資金繰り表では、以下の3つに分けて処理します。

・営業資金(売上、仕入れ、給与など)
・投資(固定資産の購入や売却)
・財務(借入と返済)

資金繰り表を作成することで現金の動きを管理しやすくなり、キャッシュフローが悪くなっても気が付きやすくなりますよ。

 在庫管理表も作っておく

これに加えて在庫管理表を作ることもおすすめです。

在庫管理表を作ることで、余分な在庫の状態を把握しやすくなります。

過剰在庫がもしあるようであれば、その分だけ資金繰りが厳しくなるため、在庫を減らすための対処をすることで、資金繰りが改善する場合もあります。

大口の案件は着手金や前金をもらうようにする

大口の案件は売り上げが大きいですが、実際に売り上がるまでに時間がかかるものも多いです。

支払いサイクルが長くなりがちで、大口の分倒産リスクなどにも配慮しなければいけません。

大口案件の入金遅れ、または倒産になってしまうと、会計処理上は黒字であっても手元に現金が不足するため、黒字倒産のリスクが高まってしまうことに。

着手金または前金をもらうことでそのリスクを緩和できますよ。

与信管理を行う

黒字倒産を避けるためには与信管理を行いましょう。

与信管理とは、取引先の信用情報を調べ、取引をの安全性を管理することです。

外部に調査を依頼することも選択肢です。

この与信審査をすることで、「いくらまでなら仕事をしてもよい」という与信限度を決められます。万が一その企業が倒産になった場合でも、黒字倒産のリスクを踏まえて与信限度を決めることで黒字倒産になりかねない損失を回避できますよ。

資産の現金化

不動産などの資産を現金化するという方法も選択肢です。

直接売買する方法もありますが、その不動産を担保にしてつなぎ融資を行う選択肢もあります。

売掛金があるのであれば、その売掛金を使って現金化する方法もあります。

それがファクタリングです。

ファクタリングとはその売掛金の権利を買い取ってくれるサービスのこと。

このサービスを利用することで、売掛金を早ければ翌日に振り込みしてもらえます。

何より売掛金の権利の売買のため、「借金」ではないこともポイント。

このファクタリングでは手数料が1〜30%かかってしまうため、最終的な利益が減ってしまうことがデメリットです

銀行に返済期間の延長をお願いする

銀行などの金融機関に返済期間の延長または支払額の減額をお願いすることも選択肢です。

銀行に返済期間の延長を行う場合の成功率は20%前後と決して高いとは言えませんが、それでも必要であれば挑戦する価値はあるでしょう。

この場合には、返済が悪化した要因を分析し、キャッシュフローを分析し、返済期限を遅らせることで支払いが滞りなく行えるという根拠を明確にしなければいけません。

赤字でも倒産しない企業がいる理由とは

黒字倒産する企業はいる一方で、赤字でも倒産しない企業も中にはいます。

その理由は以下の通りです。

・現金資産が十分にあること。
・担保になる資産があり融資が受けられる
・赤字でも資金調達できる方法がある

赤字が続けば手元の資産は減っていくため、いずれは倒産します。

それでも、現金の資産が手元にあれば、すぐに倒産するということはありません。

迫りくる黒字廃業

黒字で倒産するのとは別に廃業する場合もあります。

これはキャッシュに問題がなく、利益もしっかり出ているにもかかわらず廃業してしまうこと。

その原因としては以下のものがあります。

・今後の見通しを考えたときに、事業を継続できないと経営者が判断した場合
・技術が伝承できておらず高齢化が進んでおり、後継者がいない場合

これらの事態を回避する方法は事業を継続していけるための後継者作りや仕組み作りをできるだけ早い段階から始めましょう。

どうしても時間がかかる取り組みなのは間違いありませんが、2〜3年じっくりと時間をかけて対処していけば、継続していける可能性は十分にあります。

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