2019/01/21

これから起業をしようと考えている方の中には、個人事業主でやっていくか、会社を設立して法人としてやっていくか悩んでいる方も多いでしょう。

事業の種類や規模によって、どちらを選ぶべきか判断が分かれるところです。

この記事では、個人事業と会社設立のどちらを選ぶべきなのか、それぞれの特徴とメリット・デメリットを比較して考察していきます。

個人事業主の特徴とは

個人事業主とは、会社を設立せずに個人で事業を行うことです。

フリーランスということもあります。

「個人でないと事業はできないの?」と思われるかもしれませんが、従業員を雇用することや家族に手伝ってもらうことはなんの問題もありません。

そうなると会社を設立するのとどう違うのか、今ひとつわかりにくいですよね。

個人事業主の特徴は、大まかに以下の2つが挙げられます。

・開業までの手間がかからない
・コストを抑えられる

開業までの手間がかからない

個人事業主の特徴は開業までの手間がかからないことです。

個人事業主の開業方法はとてもシンプルで開業届を税務署に提出すれば完了します。

これに対して法人を設立するためには、定款や登記の手続きが必要。

設立までに時間も手間もかかってしまいます。

個人事業主であれば、節税効果の高い青色申告をできるだけではなく、会社を設立する場合と比べてさまざまな手続きの手間を軽減可能です。

個人事業主に一度なった後でも会社を設立できるため、事業を軌道に乗せる前までの繋ぎとして個人事業主からはじめるのも選択肢になるでしょう。

コストを抑えられる

個人事業主は会社を設立する場合と比べてさまざまなコストを抑えられます。

会社を設立する場合まず真っ先にかかるのが、登記にかかるコストです。

株式会社の登記であれば、費用が20万円ほどかかります。

登記が終わった後でも、法人になってしまうと個人事業主にはないさまざまな費用がかかります

【会社設立にかかる費用】
・税理士に支払うお金
・従業員の社会保険
・法人住民税の均等

これらの費用がかかってくるため、利益が十分になければ会社設立の経費と税金が重くのしかかってくることも。

個人事業主であれば、このような経費がかかることはありません。

個人事業主に向いている仕事は?

個人事業主に向いている仕事としてあげられるのは、時間的な制約がない仕事、または消費者を対象にした仕事です。

例えば以下のような仕事が挙げられます。

【個人事業に向いている仕事】
・ライター、デザイナー、そのほかノマドで成立する仕事
・小売業や飲食業

ライターやデザイナーなど自分だけでも仕事が成り立つ仕事であれば、時間制約にとらわれず仕事ができます。

小売業や飲食業も個人事業主に向いた仕事です。

個人事業主のデメリットとしては法人ほどの信用がなく取引に影響することが挙げられますが、

小売業や飲食業は個人を相手にする仕事のため、信用度の影響をそれほど受けません。

これらの仕事であれば、個人事業主ではじめるのがおすすめです。

ただし年商1000万円を超えるあたりから所得税など税金負担が大きくなってきます。

そのためまずは個人事業主からはじめて年商1000万が見えてきてから法人化を考えてみるとよいでしょう。

法人の特徴とは

法人は民法上では「法人とは、自然人以外で権利・義務の主体として認められるもの」と定義されています。

個人事業主の状態ではできない法律上の行為が可能になると考えるとわかりやすいでしょうか。

個人事業主と比べるとさまざまな節税効果があります。

法人の特徴としては以下の通りです。

・個人事業主よりも高い節税効果を持つ
・個人事業主よりも信用度が高い
・許認可事業が可能になる
・規模に応じて株式会社と合同会社を選べる

個人事業主よりも高い節税効果を持つ

法人化することで個人事業主よりも高い節税効果があります。

その理由は以下の通りです。

・経費にできる範囲が個人事業主よりも広い
・所得税よりも法人税の方が税率が一定のため安定している
・欠損金を繰り越しできる

個人事業主と比べて登記費用やランニングコストが発生するものの節税効果が高いため、一定水準以上の売上を上げているのであれば、法人にした方が出費を抑えられます。

特に法人になると税率が一定になるため、利益が増えるほど累進課税と比べて高い節税効果を実感しやすくなります。

個人事業主よりも信用度が高い

法人は個人事業主と比べて信用度が高いことがメリットです。

【信用度が高いメリット】
・銀行融資を受けやすくなる
・BtoBの仕事を受けやすくなる
・人材を集めやすい

個人事業主の場合には、どうしても信用を得るまでにある程度の時間が必要になってしまいます。

銀行融資や助成金の審査も通りやすくなり、資金調達が個人事業主の場合と比較してかなり有利に。

法人の場合は求人で人を集めやすいなど人材を集めるのも、人材を探すのもぐっと楽になります。

許認可事業が可能になる

法人になることで許認可が必要な事業を開業できるようになります。

許認可事業とは、事業の中でも行政機関に手続きし許可を受ける必要がある事業のことです。

具体的には例えば以下のような事業があります。

【許認可事業の例】
・不動産業
・クリーニング店
・旅行業
・介護事業
・運送業

これらの事業を許可なしで行うと、刑事罰の対象になり逮捕されてしまうことも。

そのため許認可事業をはじめたいのであれば、会社設立が必須条件です。

もし何らかの事業をはじめるなら許認可事業なのかどうか確認してからにしましょう。

規模に応じて株式会社と合同会社を選べる

「会社設立=株式会社を設立する」

というイメージの人も多いかもしれませんが、株式会社の他に合同会社という選択肢もあります。

合同会社は株式会社と同じ法人でありながら、設立などにかかるコストを抑えて設立できる法人です。

登記費用で比べてみると、株式会社の場合には20万円程度かかりますが、合同会社であれば6万円程度に抑えられます

合同会社はコストを抑えられるだけではなく、組織図の自由度も高いため、経営の自由度が高くスタートアップなどの会社で採用されることが多いです。

「売上がある程度あり法人化を検討したいけれど、株式会社ほどの経費をかけたくない」

という人に特におすすめの選択肢だと言えるでしょう。

個人事業と会社設立のメリット・デメリット徹底比較

「個人事業と会社設立はどんなメリットがあるのか今ひとつわかりにくい」

そんな人も多いのではないでしょうか。

個人事業主でもある程度会社のように人を雇えますが、税制面や信用度で違いがあるのです。

ここで、両者のメリットデメリットを徹底比較してみましょう。

まずは比較表をご覧いただき、そして詳細を解説していきます。

  個人事業 会社設立
メリット ・事業をすぐにはじめられる
・会計処理が法人よりも難易度が低い
・所得が少ない場合税金も安くなる
・社会的信用度が高い
・家族に社会保険を適用させられる
・節税効果が高い
・有限責任のため負債を負った場合のリスクが少ない
デメリット ・社会的信用度が法人よりも低い
・事業に失敗して負債が残った場合でも全額返済義務がある
・利益が増えるほど納税額が高くなる。
・登記が必要なため手間がかかってしまう
・ランニングコストがかかり、赤字でも税金がかかる
・事業の廃止にも費用がかかる

個人事業のメリット

・事業をすぐにはじめられる
・会計処理が法人よりも難易度が低い
・所得が少ない場合税金も安くなる

事業をすぐにはじめられる

個人事業のメリットは開業届を出すだけなので、手軽にはじめられることです。

開業届に記入する内容もそれほど難しくないため、その日のうちに提出することも難しくありません。

会計処理が法人よりも難易度が低い

個人事業主は法人化するよりも会計処理が簡単で、かつ青色申告での確定申告が可能という税制上のメリットもあります。

法人化した場合には会計処理が非常に複雑なため税理士にお願いすることが多くなり、そのための経費が必要に。

個人事業主であればそうした経費を払わずともオンライン会計ソフトを活用すれば十分に確定申告が可能です。

所得が少ない場合税金も安くなる

個人事業主の場合には売上が低い場合、納税額が少なくなることがメリットです。

なぜなら利益の額が増えるほど税率が上がる累進課税が適用されるから。

所得が増えるほど税金の額が増えますが、逆に売上がそれほどない場合には税金が安くなります。

法人の場合には赤字の場合でも法人住民税の均等割という税金がかかり、経営を圧迫してしまうことも。

個人事業主であればこのようなリスクはないと言えるでしょう。

個人事業のデメリット

・社会的信用度が法人よりも低い
・事業に失敗して負債が残った場合でも全額返済義務がある
・利益が増えるほど納税額が高くなる。

社会的信用度が法人よりも低い

個人事業主のデメリットは社会的信用度が低くなることです。

銀行などの金融機関で融資を受けることもできますが、審査に通りにくくなります。

さらにクレジットカードの発行が難しい場合も。

会社によっては法人ではないと取引に応じてくれない場合も。

自分次第で信用度を上げられるとも言えますが、最初のうちは信用度の低さに悩まされる場合もあるかもしれません。

事業に失敗して負債が残った場合でも全額返済義務がある

事業が失敗してしまった場合に個人事業主と法人の場合で責任問われ方が変わります。

法人の場合には有限責任のため、経営者個人に負債の返済義務が発生することはありません。

一方で個人事業主の場合は無限責任のため、負債が残ると個人の財産を返済に充て、全額返済しなければいけなくなってしまいます。

そのため負債が残った場合のリスクは、個人事業主の方が高くなるので、安易に負債を負うのは避けるべきでしょう。

利益が増えるほど納税額が高くなる

個人事業主の場合、累進課税のため利益が高くなるほど税率が高くなります。

4000万を超えているような場合は、利益の45%が所得税として徴収されるほど高額に。

利益が一定以上の金額場合には、法人化している方が納税額を抑えられこともあります。

個人事業主から法人になることもできるため、ある程度売上をあげたら法人化させる人も少なくありません。

会社設立のメリット

・社会的信用度が高い
・家族に社会保険を適用させられる
・節税効果が高い
・有限責任のため負債を負った場合のリスクが少ない

社会的信用度が高い

法人化するメリットは社会的信用度が高いことです。

銀行で融資を受けやすくなり事業資金を集めやすくなりますし、法人相手の取引スムーズに進みやすくなります。

求人を募集する場合でも募集が集まりやすくなり、さまざまな場面でスムーズにことが進みますよ。

家族に社会保険を適用させられる

個人事業主の場合には自分のみが社会保険の対象でしたが、法人化すると家族も社会保険に加入させることができます。

保険も控除の対象にでき、半額もしくは全額控除が受けられるというメリットも。

節税効果が高い

法人化すると節税効果が高くなります。

累進課税から法人税に切り替わるため、税率が一定になるためです。

また役員報酬や社員の給与、退職金なども経費にでき、経費の適用範囲も広がります。

有限責任のため負債を負った場合のリスクが少ない

法人の場合有限責任のため、負債を負ってしまった場合返済義務がなくなる場合があります。

もし事業に失敗し負債が残ってしまった場合でも、保証人になっていなければ、負債が残ってしまった場合でも返済義務がなくなります。

会社設立のデメリット

・登記が必要なため手間がかかってしまう
・ランニングコストがかかり、赤字でも税金がかかる
・事業の廃止にも費用がかかる

登記が必要なため手間がかかってしまう

会社を設立するためにはまず登記をしなければいけません。

さらに登記申請には以下の経費がかかってしまいます。

・登録免許税
・定款認証料
・収入印紙代
・謄本作成料

総額で20万もの経費が必要になり、定款やさまざまな書類を作成しなければいけません。

ランニングコストがかかり、赤字でも税金がかかる

また法人化すると、ランニングコストがかかります。

【法人のランニングコスト】
・社会保険の費用
・税理士への報酬
・法人住民税の均等割

法人化すると従業員に社会保険の加入が義務付けられるため、従業員が増えるほど、社会保険の保険料が増大します。

それ以外にも法人化すると会計計算が複雑になるため税理士に依頼し、報酬を支払う必要がでてきます。

法人住民税の均等割とは、会社の利益に関係なくかかる税金で一律7万円の税金を納税しなければいけません。

そのため赤字の場合でも負担しなければいけなくなる税金です。

これらの費用が法人化するとかかるため、ある程度の売り上げを上げなければ個人事業主の場合よりも負担が大きくなってしまうことには注意が必要です。

事業の廃止にも費用がかかる

法人化すると、会社を廃止する場合にも登記する費用がかかります。

設立する段階で廃止のことを考えるのはおすすめできませんが、解散登記費用と、清算結了登の費用32,000円が最低限かかることは覚えておきましょう。

個人事業からスタートして法人化も可能

個人事業主からスタートして、あとで法人化することもできます。

個人事業主であれば会社を設立するよりもランニングコストがかかりませんし、節税効果を発揮するタイミングでうまく会社を設立すれば、消費税の納税を最大2年間遅らせられるというメリットも。

「どのくらいのタイミングで法人化させるべき?」

ということがわからない人もいるかもしれません。

個人事業から法人化するのにおすすめのタイミングは以下のタイミングが挙げられます。

【法人化のタイミング】
・売上が1000万円を超える前
・利益が800万円を超えるとき

売上が1000万円を超える前

売上が1000万円を超える前が法人化するべきタイミングの一つです。

このタイミングで法人化すると、消費税の納税を2年間先送りにできます。

1000万円を超えてしまうと、先送りできなくなり、消費税の納税義務が発生してしまいます。

利益が800万円を超えるとき

法人化するべきタイミングの一つは利益が800万円を超えるときです。

というのも法人化すると、このくらいのタイミングで法人税の節税効率が個人事業主よりも高くなるから。

個人事業主の場合、累進課税のため利益が高くなるほど納税額もどんどん高くなってしまいます。法人化すると、法人税が適用され利益額に関わらず一律の納税額に。

そのため売上が大きくなるほど節税効果も高まります。

まとめ

事業を開始するまでのスピードやコスト、社会的信用など、個人事業でやっていく場合と会社を設立して法人としてやっていく場合では大きく異なります。

どちらかが優れているというわけではありません。

ビジネスプランによって最適な方法が分かれます。

何を生業とするのか、何を優先して事業を進めていくのかを考えて、どちらの方法が自分のビジネスに適しているのかを考えていきましょう。

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