2018/03/20

金融機関が融資をする対象は大きく分けると二つあります。個人と法人(企業)です。

個人をさらに分けると自営業者か一般個人ですが、法人はそれらとは別に社会性を帯びた存在として金融機関と融資取引ができます。

日本の場合、法人の99%が中小企業であり資金調達のために中小企業向け融資を必要としています。

また中小企業のうち、従業員数が数名と個人ベースの自営業者とほぼ実態が変わらないレベルの会社もたくさんあります。

また個人が銀行から融資を受ける場合、資金の使い道として事業性向けと個人向けが考えられます。

そこで今回の記事では個人が銀行融資を受ける場合、どのような金融機関があり、どのような貸付が受けられるか、あるいはその審査はどのようになされるかなど、元地方銀行行員の筆者が銀行融資と個人の関係を解説します。

個人に関する融資の種類と取引金融機関

自営業者あるいは個人が融資を受ける場合、その資金ルートや融資の種類にはどのようなものがあるでしょうか。資金ルート別に順番に説明します。

自営業者に対する事業資金

自営業者に対する融資は公的機関ルート、民間ルートの二つがあります。

まず公的機関ルートとして政府系金融機関の日本政策金融公庫融資(以下日本公庫)があります。

日本政策金融公庫イメージ

こちらでは法人・個人問わず事業者に対する一般融資も扱っていますが、特徴的なのは民間金融機関では取扱いが難しい開業資金を取り扱っていることです。

銀行・信用金庫等では事業の実績がないと創業資金融資は困難ですが、日本公庫の場合、その事業目的のひとつが新規開業者に対する資金サポートを通じて経済を活性化させることにあるので、開業資金の融資実績も豊富です。

ただし日本公庫の融資の原資は税金なので、当然審査も厳格です。

特に開業資金融資の場合は開業計画書、資金計画書等、提出する書類も多く、また審査担当者の質問もシビアなので、できれば計画書作成の段階で顧問税理士やコンサルタントなど専門家の支援を受けておくほうがベターです。

一方民間ルートとしてはまずは銀行・信用金庫等の事業融資があります。

銀行等民間金融機関の融資の場合、その原資は顧客から集めた預金ですので、銀行は融資を通じて必ず利益を出さなければなりません。

そのため事業者の倒産等による貸し倒れは避けなければならず、審査は公的融資よりさらにシビアになります。

リスクを避けるためにどうしても実績主義になりがちで、特に事業実績のない新規開業者向け融資には消極的です。

しかしただ消極的だけでは商売にならないので、信用力に乏しい事業者への融資には銀行でも信用保証協会付き融資を活用しています。

信用保証協会とは「信用保証協会法」に基づき設立された公的機関で、信用力に乏しい事業者に対する融資の保証行為を通じて中小企業・小規模事業者の資金調達をサポートする役割を担っています。

信用保証付融資のイメージ

仮に事業者が経営不振等で銀行に融資が返済できなくなっても、保証協会付き融資の場合、保証協会が債務者に代わって銀行に融資を返済してくれるので、銀行も安心して融資をすることができます。(これを代位弁済と言います)

ただしこれは最後の清算方法なので、保証協会と銀行は密接に情報交換会を行いできる限り貸し倒れの未然防止を図っています。

さらに民間融資としてはノンバンクと呼ばれる専門の貸金業者である消費者金融のビジネスローンがあります。

銀行融資に比べて審査の書類も少なく審査スピードが早いのが特徴で、事業経費の資金調達を急ぐ事業者には大変ありがたい存在です。

さらに個人自営業者の場合、事業と個人の分野があいまいなものが多く、資金を借りてもその資金の振り分けが難しいケースが多々あります。

その点、ノンバンクとりわけ大手消費者金融では資金使途を事業資金に限定していない場合も多く、最初から事業資金にも生活資金にも使えるようなローンとして販売しています。

個人事業者には大変使い勝手の良いローンです。

個人に対するローン

一方、一般個人に対する銀行融資としては、住宅ローン・教育ローン等の目的別ローン・フリーローンやカードローンがあります。

住宅ローン・教育ローン等はその資金の利用目的が制限されていますが、その分金利が低いとか返済期間が長めという特徴があります。

一方フリーローン・カードローンは資金使途が決められておらず基本的に自由に使えますが、その分金利が高い特徴があります。

銀行・消費者金融問わずそれぞれ上記の個人ローンを販売していますが、銀行は主に住宅ローン・目的別ローンなどの販売実績が多く、消費者金融はカードローン等、キャッシング(小口融資)の販売が得意です。

しかし最近では銀行と消費者金融の垣根を超えて提携が進んでおり、銀行も個人向けカードローンの販売により力を入れるようになってきています。

個人自営業者に売掛金がある場合の資金調達方法・ファクタリング

法人・個人問わず、事業者の中に売上代金の一部が売掛金となっている業者がいます。

掛売というのは昔からある商売の慣習のひとつで、商品や仕掛品を販売しても直ぐには現金で代金が回収できず一定期間後に入金される形態のものを売掛金と呼んでいます。

商品を販売した事業者から言えば、帳簿には売掛金はあっても実際お金にはなっていないので手元にそれに対応した現金がありません。

一方では仕入代金を支払ったり従業員には給与を払う必要から一定の運転資金が必要ですが、自己資金を欠いていたり、すでに銀行から体力ギリギリの融資を受けてもうそれ以上融資を受けられない事業者もかなりいます。

そこでこの売掛金という債権を使って資金調達できないかと考えだされた方法がファクタリングです。

3社間ファクタリングのイメージ

方法としては、まず売掛金のある事業者はファクタリング会社にその債権を売却します。

するとファクタリング会社はその債権を買い取って金利分を引いた残りの金額を業者に即日振込します。

そこで売掛金を買い取ったファクタリング会社は支払期日に売掛先に請求して回収することになります。

ファクタリングを使った事業者のメリットは銀行に融資を頼むことなく資金調達できることです。

またファクタリングは融資でなく債権の売買なのでその記録が事業主の決算書・確定申告書には残りません。

銀行に知られることを気にすることなくファクタリングを利用できます。

このように事業者は融資以外の方法で自分の商売の資産をうまく使って資金効率を上げることもできます。

銀行融資(事業性資金)の必要書類

銀行が個人自営業者・中小企業(法人)に事業資金を融資する場合、審査で共通する必要書類は事業計画書・返済計画書・資金繰り表などです。

一方で違いは事業の成績を示す書類で、法人は決算書ですが、個人自営業者の場合確定申告書です。

確定申告書イメージ

法人が提出する決算書は、法人の資産・負債・自己資本の状態を示す貸借対照表と事業年度の売上・経費・利益のバランスを示す損益計算書からなっており、企業の実態を明瞭に示していますが、個人自営業者の場合、決算書に比べて作るのが簡単な確定申告書なので詳細に欠ける面があります。

そこで一般的に決算書の方が確定申告書に比べて銀行での信用度も高く、それが融資審査にも反映されるので、法人が個人自営業者より金利を低く借れたり融資額が大きくなることが多くなります。

個人自営業者の銀行融資における審査ポイント

個人自営業者に対する銀行融資の審査ポイントは以下の5点です。

返済財源・返済比率

そもそも融資の審査において事業利益が黒字でないと返済財源がないので経常利益のチェックは重要なポイントです。

さらに黒字が毎期安定しているか、今年度赤字であっても次期に黒字転換できるか、も大事なポイントです。

また年間所得額の判定において確定申告書だけでは信頼性に欠ける場合、事業者に依頼して公的機関発行の納税証明書を出してもらう場合もあります。

もちろん納税したかどうかもチェックします。

納税もしない経営者は銀行の返済も簡単に延滞しますからね。

融資の年間返済額を返済財源(経常利益+減価償却費)で割って計算する返済比率のチェックも大事です。

その比率が適切かどうか、業者の売上規模や業界データとも照らし合わせて総合判断します。

返済比率が過大と判断すれば顧客と相談し、融資額を減らしたり返済期間で調整する場合もあります。

資金使途

その資金がどのように使われるかは銀行融資の大事なチェックポイントです。

銀行では個人自営業者に融資した場合、その融資が事業目的でなく生活資金等、個人目的に使われることを特に嫌います。

あくまで融資金は事業目的に使われて利益となって帰ってくることを融資の基本姿勢としているからです。

しかしノンバンクの場合は資金使途にそこまで厳格でないので、主にどちらの金融機関を利用するかは個人自営業者の判断によります。

資金繰り表

事業者にとって経営上最も大事なことは日々の資金繰りです。

資金繰りと言うのは簡単に言えば、毎日のお金のやりくりの事です。

そしてお金のやりくりを帳簿にしたのが資金繰り表です。

事業の場合、黒字倒産という言葉があるように損益計算書上、黒字であっても毎日の資金繰りが失敗すれば倒産してしまいます。

そこで銀行は融資に際し、事業者が毎日・毎月の資金繰りがきちんとできているか、出してもらった資金繰り表を入念にチェックして審査判断します。

長期資金は言うに及ばず、短期資金の判断においても資金繰り表を銀行は重要視しているので、そもそも資金繰り表がないような個人自営業者への融資は消極的になります。

担保・保証人

担保のイメージ

著者が銀行員時代、大きな金額の融資に関しては、担保や保証人は欠かすことのできない融資条件でした。

しかし最近は金融庁の指導もありかなり取り扱いが変わってきています。

そのひとつが連帯保証人で、以前だと個人事業者の配偶者や両親の連帯保証人は当然という感覚でお願いしていました。

しかしそれも金融庁が原則連帯保証人に取らないよう示達したことを契機にその流れが一変してしまいました。

現在、信用保証協会融資では個人自営業者なら、その融資に対して保証能力に関わりなく、配偶者や両親は連帯保証人に取らなくなっていますし、銀行の取り扱いも同じになっています。

ただ法人の代表者(経営者)に対しては今も法人の連帯保証人となることを求めている金融機関は多いです。

ただこれまで当たり前だった連帯保証人を取らなくなったことで、現場が混乱することは目に見えていますし、個人事業者もちゃんと事業で利益を出さないと融資が借りにくくなることは間違いないと私は判断しています。

一方、その分、融資における担保の重要性は以前にも増して増えています。

金融庁もさすがに担保の取り扱いまでは踏み込んでいないので、担保物件が用意できない信用力に欠ける事業者はこれからは資金調達の手段がさらに狭まると筆者は予想しています。

自己資金

融資に際し、自己資金の有無もチェックします。

もちろん自己資金は大きいほど審査で有利ですが、どのようにその自己資金が形成されてきたかのプロセスチェックも重要です。

経営者の事業資金に対する姿勢を図るモノサシのひとつです。

その点、日頃から自己資金を積み立てる目的で法人積立をコツコツとその融資を受ける銀行で行ってきた経営者はプラスに評価されるでしょう。

またこの点では、日本政策金融公庫は銀行以上にこの自己資金の形成過程に関心が強く、わざわざ預金通帳を持参させてその蓄積プロセスをチェックするぐらいです。

個人に対する銀行融資

個人に対する銀行融資としては担保型および無担保型があり、担保型個人融資の代表が住宅ローン、無担保型融資の代表が銀行カードローンです。

またその中間にある個人ローンのうち、資金の利用目的が決まっているのが自動車ローン、ブライダルローン等の目的別ローン、資金使途自由なのがフリーローンです。

いずれのローンも事業資金融資と比べてその審査方法は簡素化されていて、共通なのはスコアリングと呼ばれる自動判定方式です。申込書に記載された本人の個々の属性(年収、勤務年数等)を銀行のスコアリングシートに入力すると自動的に合否判定してくれます。

不特定多数の属性の異なる個人をできるだけ効率的に多く迅速に審査判断するにはとても合理的な方法です。

以下ではその詳細を解説します。

審査書類

個人ローンに関する審査書類はほぼ各銀行共通です。

本人確認書類と年収確認書類が基本になります。

ただし住宅ローンに関しては別に建築・購入物件に対する審査があるので物件に関する資料が必要です。

本人確認書類には、運転免許証、パスポート、保険証などが主に利用されます。また訪日外国人の場合は、銀行融資では特に厳しく、永住許可を受けていることがまず前提です。

一方消費者金融の場合はそこまで厳格でなく、日本国内に住む外国人が「在留カード」もしくは「特別永住者証明書」を持っていればカードローンなら申し込みできます。

また年収確認書類も原則必要です。

ただし最近は銀行も個人ローンの種類によって一定の融資額まで年収確認書類の提出を不要としている所もあります。

たとえば銀行カードローンの場合、最大希望限度額300万円以内なら多くの銀行で年収確認書類を不要としています。

一方、住宅ローンやブライダルローンなど、融資金額が比較的大きい、あるいは返済期間が長期になるローンの場合は年収確認書類を省くことができません。

また会社員に比べて個人自営業者の場合は、銀行による所得判定が難しいことを理由に個人ローンの審査が厳しくなる傾向があります。

会社員なら毎月の給与があり判断がしやすいのですが、自営業者の場合、売上や利益が景気の変動の影響を受けやすく、所得判定が難しい点があります。

それだけによほど安定して利益を出している自営業者を除き、銀行は個人自営業者に対し消極的な傾向があります。

また自営業者の場合、原則として申込金額に関わらず年収確認書類の提出が必要です。

審査基準

銀行融資で個人ローンの審査基準については、銀行ごとに個別のものがあり公開されていないのでこれらはあくまで推測に基づくものですが、主に①返済能力②信用判定から成り立っています。

【1】返済能力の判定

個人ローンに対する返済能力は個人年収の高さと返済比率から判断されます。

個人年収が高ければ高いほど評価は上がりますが、申込者に他社で多額の借入があれば、当然毎月返済額も大きくなるので、年収の高さだけで判定することは難しくなります。

そこでさらに借入額(カードローンの場合、利用限度額)、金利、借入期間を考慮に入れて出した返済比率を出して、その比率が適切かどうかチェックしなければなりません。

一般的に返済比率が35%以内に収まることが必要で、40%を超えると銀行も認可を出すことに慎重になってきます。

また返済能力を測る上で重要なのは、会社員の場合、その勤務先からの定例給与ですが、その会社でどれだけ長く勤務しているかも重要なポイントです。

さらに銀行としても申込者がちゃんと勤務先で働いているかどうか、直接会社に電話を掛けて確認します。この手続きを在籍確認と言います。

在籍確認の手続きがきちんと完了しないと個人ローンは利用できないので、申込者としては銀行からの連絡が勤務先にちゃんと付くよう、電話登録先は必ず勤務先の代表電話にしておかねばなりません。

これは個人自営業者も同じで、銀行は在籍確認の電話を住所地の自宅にしますので、確認がきちんと取れるよう段取りしておく必要があります。

【2】信用判定

個人ローンの場合、返済能力判定と並んで大事な審査ポイントは本人の信用判定です。

この信用判定において取引金融機関の銀行がまず一番にすることは、加盟している信用情報機関に対し申込情報に基づいて個人信用情報照会することです。

銀行の場合、まず全国銀行個人信用情報センターに信用照会を行い、必要に併せて他の信用情報機関、JICCやCICも活用します。

具体的には、その申込者の過去の返済状況についての履歴を確認し延滞や滞納がなかったかどうか・債務整理や自己破産などブラック情報の登録がないかどうかなどをチェックします。

さらに、申込者が個人ローンを申し込みするたびにその取引金融機関を通じてその事実が信用情報機関に新規登録されるので、銀行としても他社での申し込み状況、件数・金額なども併せてチェックして本人の信用判定を行います。

もちろんブラック情報が登録されていたり、あまりに短期間に個人ローンの申し込みが繰り返されていると、将来融資をしても銀行がトラブルに巻き込まれる可能性もあるので、その懸念から融資を断ります。

個人ローンを利用したい人は、常日頃からどのような返済であれきちんと期日を守って返済し、自分で信用を落とさないよう心掛ける必要があります。

まとめ

銀行融資と個人をキーワードに事業融資、個人ローンの面から解説してきましたがいかがでしたか。

銀行融資を個人で借りる場合、最初にすることは公的機関やノンバンクなど、他の金融機関との比較です。

まずはそれぞれの金融機関の特徴をシッカリつかんだ上で、銀行融資を利用することがベストな選択なのかどうか、きちんと判断しなければなりません。

たとえば、銀行融資の条件が十分整っていないにもかかわらず「金利が安い」という理由だけで銀行窓口に融資の依頼に飛び込んでいくのは無理があります。

今は昔と異なり、個人でもインターネットで必要な情報が十分得られる時代です。

多少、融資の条件に足らないところがあっても熱心に探せば自分に合った金融機関が見つかる時代です。

しっかりした情報収集の下で、銀行・信用金庫等で自分の融資条件でも申し込みができそうな所があれば、正面から堂々と融資の相談に出向いてもらいたいと筆者は考えています。

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