2017/09/27

格付とよく比較される言葉にランキングがあります。

厳密に書くと格付とランキングはやや違いがあります。

ランキングはある特定の属性だけを取り上げてそれを絶対評価で並べた結果に過ぎませんが、格付はそこにいくつもの要素や属性を入れて一定基準の下に評価を行い、そのグループの中で相対的に評価した結果です。

そこで今回の記事ではその格付を取り上げ、格付の現状とその影響、また格付が銀行活動とどのように関わりを持つのか、また銀行を取り巻く環境の変化の中でどのように格付を活用していくかなど、幅広く解説します。

格付がなぜ必要か?

会社や個人は他社や他人と経済活動を通じて関わりを持ちます。また今日、その関わりは国内だけにとどまらず海外まで及んでいます。

さらに経済活動にはモノの売買やサービスの提供だけでなく、持っているお金をどのように株式や債券等に投資して収益を得るかなどの投資活動もあります。

しかしいくら国内・海外での経済活動が活発化しても、初めての取引や投資にはリスクが付きものです。

誰しも取引や投資にはそのリスクを最小限にしたいと考えます。

そこでその判断に利用されるもののひとつがこの格付です。

格付とはもう少し長く表現すると信用格付ランキングと呼ぶことができます。

取引や投資(たとえば個人向け社債の購入)には情報が必要です。

企業なら会社情報やその財務内容、そして企業格付、株式や債券の投資には株式・債券情報、およびその格付などの投資家に対する情報が必要になります。

しかし、取引や投資する会社・個人がその詳細な情報を自由に手に入れることができたり、さまざまな情報を精緻に分析できるプロフェッショナルばかりではありません。

そこには一般の中小企業や個人ベースの投資家も入ってきます。

それらの企業や個人が判断するのに頼りにするのがこの格付情報です。

格付情報には企業グループ別、あるいは金融機関別、さらに個々の会社や個別債券に対する格付情報もあります。

取引や投資をする者はこれらの格付情報を積極的に利用して、個々の取引先や投資対象の信用力を測りつつ、取引を開始したりお金を投資しているのです。

しかしそのためにはまずこの格付自体が信用度の高いものでなければなりません。

そこで格付はどのような機関で行われているか、さらに少し深く入っていきましょう。

主な信用格付業者

現在日本では金融庁に登録されている格付業者は7社です。

ただし同じ企業グループに属している会社もあるので実質以下の5社となります。

さらに格付業者は国内に本社があるものと海外に拠点があるものとに分かれます。

国内に拠点がある業者

日本格付研究所(JCR)
格付投資情報センター(R$I)

海外に拠点がある業者

S&PGlobalRating(スタンダード&プアーズ・グローバル・レーティング・ジャパン)
MOODY’S(ムーディーズ・ジャパン)
Fitch Rating(フィッチ)

格付で何が分かるか?

これら主要格付会社5社で発行されている格付情報から何が分かるかというと、「その企業や企業グループ、あるいは個別の債券などがその債務を最後まできちんと約束通り支払いしてくれるか」というその信用リスクの度合いです。

いわば格付は債務に対する支払いの確実性を示した指標とも言い換えることができます。

取引や投資に当たり、当事者はこれら格付業者が出した格付情報や発行登録書を徹底比較して、その債務履行能力を判断する必要があります。

また取引・投資は長期に渡ることも多いので、関係者はその格付対象がどのような格付推移を辿っているか、あるいはこれからどちらの方向に向かっているのか(安定的、ポジティブ、ネガティブ)、常に格付情報更新履歴にも注意を払っておく必要があります。

格付の方法

格付の方法には大きくふたつの方法があります。定量評価と定性評価です。

格付評価においてそれらは最終的に総合して勘案され評価が出されます。

定量評価

定量評価では主に過去のデータに統計的処理を施して将来の信用リスクを判断します。

たとえばよく似た業種・規模の会社が500社あり、その中で一定期間の間に5社が潰れたとしたらその倒産リスクを1%と判定する手法です。

これは大きな環境変化がなく同様な経営環境が続く限りかなり有効な判定方法ですが、あくまで静態的な分析手法なので、急激な環境変化があった時には使いにくいデメリットもあります。

定性評価

一方、定性評価とは数字には表すことができない要素を判定する評価方法です。

たとえば前に述べた急激な環境変化とはどんなことを指すでしょうか。

税制面の変更や業界の規制緩和などがこれに当たります。

これらの要素を盛り込んで、できるだけ現実を反映できるよう正確に定性評価がなされます。

長期格付・短期格付

格付にはもうひとつ、長期格付・短期格付という分類があります。

長期格付は1年以上の期限を超える債務対象に対し実施され、短期格付は1年以内の期限の債務を対象としています。

そして格付というのは基本的に長期発行体格付を意味し、短期発行体格付はあくまで長期発行体格付を補完するものとして位置づけられています。

格付符号の見方

格付においてはその評価の方法に特殊な符号(記号)が使われています。

格付業者主要5社で使われている符号の使い方には少しずつ違いがありますが、混乱を避ける意味からなのか、極端に異なる運用をしている業者もありません。

そこでこの記事では、日本に拠点を置き国内での格付評価に大きな影響力を持っている日本格付研究所の格付符号を取り上げ、各符号の意味するところを一覧表に示しました。

さらに海外の格付に大きな影響力を持ちその拠点をアメリカに置くS&P(スタンダード・プアーズ)の格付符号を横に並べて比較してみました。

当然ランクが上に行くほどその格付は高く下に行くほど低くなります。

また格付ランクにより、投資に適格な対象と投機的な対象に分けられます。

格付で「投機的」と判定されると、市場では投資に不向きまたは不適格と判断され、その対象となった企業は資金調達のために資金を出してくれる相手に対し、信用を補完するため担保を出す必要性に迫られたりします。

またそれが債権の場合は、より高い金利を付けないと投資家から購入してもらえないという事態も起こります。

そのため、格付される対象は格付評価を落とさないよう、必死になって収益性の改善に努めたり、資産の良化に努めているのです。


※AAからBまでの格付け符号には同一等級内での相対的位置を示すものとして、+または−の符号による区分を付す

銀行を格付する意義およびその影響について

格付についての対象は国や一般企業・個別の債券等にとどまりません。銀行を含む金融機関もその対象です。

銀行は一般のお客様から預金を預かり、貸出や有価証券投資で資産運用を行い、最終的に利益を出して健全な経営をしながら、常に顧客からの預金払い戻しに応じる体制が取れていなければなりません。

つまり銀行は預金者に対し常に金融債務を負っている立場なのです。

しかし仮に銀行に対する格付業者の格付評価が低いと、いざという時の支払い能力が弱いということになり、それを知った取引先が次々にその銀行から離れていき、最終的には取り付け騒ぎから倒産の可能性さえあります。

そのようなことが起きないよう、常に金融機関は運営サイトを通じて情報開示に努め、顧客に企業として利益を出して自己資本比率の充実に努めていることをアピールし、また自行の格付の動きにも常に注意を払っておかねばならないのです。

また格付結果は金融株式相場にも強い影響力を持っています。

格付の高い銀行は高い株価を維持できているし、格付の低い銀行はやはり株価は低くなっています。

格付評価と株価の間には常に強い相関関係があると私は考えています。

預金保険制度(ペイオフ)

一般企業の場合、仮に格付が低く経営に失敗して最終的に倒産したとしても、その被害の範囲は取引先や株主・従業員と限定的です。

しかし銀行の場合、いったん倒産でも起きるとその影響範囲は広く、その銀行の預金者・融資取引先までにとどまらず、他の銀行まで連鎖で信用不安が広がることから、一挙に信用収縮が起きて甚大な影響を社会に及ぼします。

それだけに金融業界としても金融不安の連鎖から取り付け騒ぎが起こらないよう、セーフティネットを常に準備しておかねばなりません。

1990年代に発生したバブル時代の金融危機の反省から作られたそのセーフティネットが預金保険制度(ペイオフ)です。

預金保険では、仮にその銀行が倒産した場合、利息の付かない決済性預金(当座預金など)※を除き、利息の付く普通預金や定期預金等を1金融機関、1個人当たり1,000万円まで保護してくれます。

また外貨預金などはその対象外となっています。

この預金保険制度(ペイオフ)があることで、銀行が仮に格付業者により低い格付評価をされ信用不安が広がった場合でも、顧客は慌てず安心した行動が取れるので、取り付け騒ぎが起こりにくくなっているのです。

※利息の付かない決済性預金(当座預金や無利息型普通預金など)は全額保護してくれます。

主なフィナンシャルグループ・個別銀行等の格付結果

そこで今回、私の興味ある金融機関グループや個々の銀行・信託銀行等の格付について、日本格付研究所(JCR)による格付を調べてみましたのでご覧になって下さい。

銀行名・金融機関グループ名 格付/見通し
三菱UFJフィナンシャルグループ AA-/安定的
三井住友フィナンシャルグループ AA-/安定的
みずほフィナンシャルグループ AA-/安定的
日本トラスティサービス信託銀行 AA+/安定的
三井住友トラスト・ホールディングス AA-/安定的
新生銀行 BBB+/安定的
ジャパンネット銀行 A+/安定的
楽天銀行 A/安定的
住信SBIネット銀行 A/安定的
セブン銀行 無格付
オリックス銀行 無格付

格付には別途ポジティブ・ネガティブ・安定的等の見通しを示す符号が示されています。

いわばその格付の将来的な方向性です。

取引や投資をしようとする当事者はむしろこちらの格付の方向性が大事だと私は考えています。

特にネガティブ表記の場合は、投資等の行動の前に、その企業の詳細情報を有料でも情報機関から取り寄せて、より綿密にかつ注意深く分析をして判断することが適切です。

今回、セブン銀行・オリックス銀行は日本格付研究所の格付では「無格付」となっていましたが、他の格付業者で検索すればその会社が格付されている場合もあります。

必要に合わせて他の格付業者も利用するといいと思います。
※ただしJCRは今回分は無料で公開されていましたが、有料対応している格付会社もあります。

銀行格付と私の個人的体験

この格付の記事を書きながら、同時にある出来事が私の脳裏に浮かんできました。

それは私が30歳代後半、年代で言えば1990年代の中ごろ、地方銀行の行員として仕事をしていた頃の話です。

仕事の合間に銀行から研修の機会をもらい、東京に本社がある「東京短資」という会社を訪問見学する機会がありました。

参照:東京短資株式会社

この会社の業務は、全国にある多くの銀行を顧客に、資金が余っている銀行から不足している銀行へ資金を動かす、いわば仲介業としての役割を果たす仕事です。

またこのような極めて短期(1日程度)の資金を銀行間でやり取りする取引の事をコール取引と言います。

資金の余っている金融機関は地元での貸出先が少なく預金は多く集まる地方銀行や信用金庫など、一方コール物の借り手は多くの融資先がある都市銀行や都市に本店を置く大手地銀がメインでした。

この市場はインターバンク市場と呼ばれ、毎日多くの資金が短資業者を通じて余裕先から不足先へと流れていました。

私はその動きを東京短資の取引ボードを見ながら研修していたのですが圧巻でした。

巨大な額のお金が銀行から銀行へと瞬時に次々と動いていました。

ところが取引ボードを眺めていて不思議なことに気が付きました。

そのボードの一角にひとつだけぽつんと孤立した状態である銀行名がありました。

その銀行はすでに倒産し他の銀行に吸収されて存在しないのですが、兵庫銀行という名前の地方銀行でした。

兵庫銀行はその時は借り手の一行でしたが、なぜか、この銀行がいくら高金利で他行から資金を借りたいと提示してもどこからも応じてくれる銀行がないのです。

理由は簡単でした。

当時、兵庫銀行は過剰貸付から不良資産が積み上がり、その結果、業界に倒産のうわさが流れて非常に信用リスクの高い銀行だったのです。

そのため他の銀行も、たとえ1日といえども兵庫銀行にはお金を貸すことには消極的だったのです。

兵庫銀行に対しては当時の格付会社の評価もかなり低かったと記憶しています。

兵庫銀行は個人預金残高含む総資産量で、当時銀行ランキングでも高かったのですが、いくら総資産や預金量でランキングが高くてもその資産内容が悪ければ話は別です。

それが格付業者の格付に的確に反映されていたわけです。

このように銀行の信用を判定するには格付情報がとても重要であることがこの件からもよく分かります。

ネット銀行と格付

ところで最近、人気のある銀行といえばまずネット銀行が上げられます。

さらにネット銀行は銀行業務のみならず、ネット証券、ネット保険会社などとも提携して業務展開している所も多いです。

雑誌などのネット銀行関連記事でよく見かける顧客満足度調査でも一般の銀行より高い評価になっているし、オンラインを使った口座開設の記事なども特集として組まれています。

なぜネット銀行に人気が集まるかというと、インターネットを使ったその利便性です。

銀行の店舗に行かなくても自宅のパソコンやスマホ等から取引できるその利便性の高さが顧客に支持されています。

またネット銀行は実店舗を持たず全ての銀行業務をネット上で完結できる銀行なので、店舗の運営費やそれに係る人件費を金利や各種サービスの拡充に回すことができます。

たとえばネット銀行の普通預金金利や定期預金金利は一般銀行の預金金利より高くなっています。

また振込手数料や提携銀行・コンビニATM利用手数料を無料対応しているのもネット銀行の特徴です。

このようにネットをフル活用して金融商品やサービス内容の拡充に努めているのがネット銀行が利用者に人気のある理由ともいえます。

一方、格付の面から見ても、ネット銀行の格付はA+~A、見通しも安定的(著者調べ)と決してメガバンクの格付に引けを取りません。

今やネット銀行もその影響力は実店舗のある一般銀行と変わらないほどの、あるいはそれ以上の存在となってきたといえるでしょう。

まとめ

銀行を格付評価と絡めて、その定義や影響力、およびその活用方法について色々解説してきましたがいかがでしたか。

格付を学ぶと、銀行知名度の高さやその銀行が預金残高トップクラスという理由だけで、その銀行を取引金融機関に選ぶ愚かさが良く分かります。

肝心なことは何事にも判断においては可能な限り色々情報を集めて多面的に検討を加えることです。

最終的な結果を出すことを急ぐ必要はありません。

格付情報はその判断のための有益かつ重要な情報をわれわれ利用者に提供してくれるものと確信しています。

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