法人を設立して最初にやるべきことは、銀行口座の開設です。
取引先からの入金に必要なのはもちろん、振込や銀行融資を受けるときにも銀行口座は欠かせません。
しかし、現実的には新規設立の法人が銀行口座を作るのはそれほど簡単なことではありません。
法人口座を犯罪に悪用するケースが増えているため、銀行の審査も厳しくなっているからです。
今回は銀行口座開設の注意点について解説しましょう。
法人口座開設に必要なもの
まずは銀行に出向く前に一般的に法人口座開設に必要な書類を準備しておきましょう。
インターネットで申込む場合でも書類の郵送は必ず必要になります。
代表者印の作成・登録と印鑑証明書
法人口座開設前に法人登記をすませておくのはもちろんですが、代表者印の作成と印鑑登録も必要です。
事業をする上で会社としての印鑑が必要になるので下記の印鑑を準備しましょう。
・社印(角印)
・社名・住所・代表者名入りのスタンプ
上記の他に銀行印も必要ですが、銀行印は代表者印と兼ねてもかまいません。
しかしなるべく用途別の印鑑を作成することが、紛失や悪用のリクスを少なくします。
代表者印は法務局に印鑑登録をして、代表者印鑑証明書も準備しておきましょう。
社印は領収書の発行などに使用します。
本人確認書類と委任状
法人口座開設には、登記簿謄本と代表印・印鑑証明書以外に、口座開設に来た人の本人確認書類が必要になります。
代表者本人が口座開設に出向く場合は必要ありませんが、通常は経理担当社が口座開設するため委任状が必要となります。
本人確認の書類としては顔写真のある運転免許証やパスポート(外国人の場合は在留カードなど)が一般的です。
事業実態確認書類
設立間もない法人の場合は、上記の書類以外に「事業実態確認書類」が必要になることがあります。
・許認可の登録または届出が必要な事業の場合、官公庁から発行された許認可証明書類
・法人事務所の建物登記簿、賃貸借契約書
・国税または地方税の領収書
実態のある法人で、ペーパーカンパニーでないことを証明できればいいので、上記の書類のうち、いずれかひとつを提出すれば問題ありません。
個人事業主の場合
個人事業主は基本的に法人口座の開設はできませんが、個人口座のビジネスアカウントは開設できます。
個人名に屋号を加えた名義の口座が開設できますが、開業したばかりで事業の実態を証明できない場合は開設を断られることもあります。
その場合は、ネットショップなどの事業であればWEBサイトのURLなどで証明できることもあります。
一般的に都市銀行は個人事業主のビジネス口座開設は厳しいので、比較的作りやすいネット銀行を利用するといいでしょう。
おすすめのネット銀行はジャパンネット銀行
個人事業主が口座開設する際におすすめの口座は、ジャパンネット銀行のビジネスアカウントです。
ネットビジネスの場合はネットバンクに開設すると、取引先もネットバンクということも多いので振込手数料などの面でもお得です。
ジャパンネット銀行なら、ビジネス口座を開設するために決算書を届ける必要もないので、事業を開業したところの方にもおすすめできます。
ただし、通常の口座開設に必要な本人確認書類の他に、営業内容の確認が必要になります。
・開業6ヶ月未満の場合(ホームページURLと確認書類A)
・ホームページを持たない場合(確認書類AとB)
・A.会社実態の確認資料(いずれか1点)
個人事業開業届出書(控)
青色申告承認申請書(控)
確定申告書(控)
国税または地方税の領収書または納税証明書(発行日または領収日より半年以内)
主たる事務所の建物登記簿謄本(原本)
主たる事務所の建物賃貸借契約書(控)
・B.事業内容の確認書類(いずれか1点)
各行政機関発行の許認可証
会社案内、パンフレット、チラシなど
事業を開業したところの方なら、確認書類A・Bからそれぞれどれか1点ずつ提出して口座を開設しましょう。
銀行別の法人口座作成手順
同じ法人口座でも金融機関によって開設の手続きに違いがあるので、銀行別に解説しましょう。
都市銀行(メガバンク)
基本的に都市銀行では各支店に出向いて口座開設をしますが、みずほ銀行ではネットで解説ができます。
そのため口座開設に必要な書類などは事前に電話確認し、二度手間にならないよう事前に準備しておきましょう。
基本的には申込してから口座開設までに2週間くらいはかかるので、口座が必要となる時期から2~3週間前には申込しましょう。
法人の実態がわからない場合は審査で却下することもあるので、設立間もない場合は最初から「事業実態確認書類」を準備して行きましょう。
三井住友銀行の必要書類
・履歴事項全部証明書
・法人の印鑑証明書
・来店者本人を確認する公的資料(運転免許証、旅券(パスポート)等)
・来店者本人が法人に代わって取引を行うことを確認する資料等(委任状等)
三菱UFJ銀行の必要書類と口頭説明内容
・履歴事項全部証明書
・印鑑証明書
・来店者の「公的な本人確認資料」
・委任状等(来店者が法人の代表権を持っていない場合)
・主たる事業は何か、また謄本上事業目的が多岐にわたる場合、その内容について説明
・実質的支配者についての説明(議決権の25%超を保有する個人がいる場合)
みずほ銀行の必要書類
・法人の本人確認書類(履歴事項全部証明書など)
・事業内容の確認書類(履歴事項全部証明書・定款など)
・来店者の本人確認書類(運転免許証・パスポートなど)
・当該法人の取引であることが分かる書類(委任状など)
・印鑑
地方銀行・信用金庫
地方銀行や信用金庫も必要書類等はメガバンクとほとんど変わりありません。
地元に密着しているところが多いので、法人の実態確認は直接訪問することも多いようです。
メガバンクは受付件数も多いので、1件ずつ訪問することができないので書類審査だけになります。
しかし、特に信用金庫の場合は申込件数も少ないので訪問したほうが早いということなのでしょう。
そのため口座開設にかかる時間もメガバンクよりは短く、1週間以内には開設可能です。
ネットバンク
ジャパンネット銀行や住信SBIネット銀行などのネット専業銀行では、オンラインで法人口座の開設を行います。
基本的にはどのネット銀行でも申込はオンラインで行ない必要書類は別途郵送するという流れです。
必要書類は法律によって決められているのでメガバンクと違う点はありません。
書類の送付などがあるので口座開設までには意外と時間がかかり、2週間程度は見込んでおきましょう。
銀行の選び方
法人口座はひとつでなくてもかまいませんが、メインとして利用する口座はひとつに決めておきましょう。
どの銀行にするかという選び方にはいくつかあります。
・将来メインバンクにしたい銀行
・振込手数料などが安い
事業内容によって口座を開く銀行は大きく違ってくるでしょう。
ネット関連の事業であれば取引先もネットバンク利用が多いので、同じネットバンクにすると振込手数料などは格安になります。
将来、事業規模を拡大したい場合は、やはりメガバンクに口座開設してメインバンクとして取引をするといいでしょう。
いずれにしても自分の事業内容や規模、取引先も考慮して口座開設しましょう。
法人口座開設を断られるケース
法人口座開設は申込すれば必ず開設できるというわけではありません。
法人口座開設には審査があるので、審査基準に満たなければ口座開設を断られることもあるのです。
実際口座開設を却下される理由を解説しましょう。
資本金が低い
株式会社設立の資本金に下限がないため、1円株式会社も設立しようと思えば可能です。
本来、資本金は事業を運営していく上で必要な金額を準備するものなので、低すぎる資本金は事業を継続する意思がないとみなされることがあります。
特に都市銀行や地方銀行では低すぎる資本金の法人は、口座開設できない可能性が高くなります。
口座開設以前に資本金を十分な額を準備して法人を設立するか、個人事業からスタートさせるかを十分検討しましょう。
事務所がない
特にネット関連の事業では事務所(オフィス)がないというのはめずらしくありません。
都市銀行・地方銀行では事務所なしの法人が口座開設をすることは難しいと考えましょう。
ネットショップであればWEBサイトのURLでも事業の実態を証明できるネットバンクで法人口座を解説しましょう。
一般銀行と比べるとネット事業に理解があるネットバンクのほうが、法人口座は作りやすいでしょう。
事業目的が不明
会社の定款には事業目的が記載してありますが、中にはあらゆる事業内容を記載してあって、本業が何なのかわからない定款があります。
将来の可能性も考えて記載しているのかもしれませんが、定款の変更はいつでもできるので設立当初の約款の事業目的はシンプルにしましょう。
すでに複数の事業目的を記載している場合は、銀行が不審に思わないように事業がわかる資料も準備しましょう。
顧客との契約書やホームページなども資料のひとつとなります。
まとめ
法人にとっての銀行口座は事業をする上ではなくてはならないものです。
どこの銀行の口座をメインに利用しているかで、その法人の事業規模が図れる場合もあります。
事業規模を拡大して行くつもりであれば、やはりメガバンクの法人口座を取得しておくと事業にも良い影響があります。
一方で、ネット事業がメインの場合は取引先もネットバンクが多いので、ネット銀行の口座が便利なこともあります。
一般銀行のネットバンキングでは振込の着金は午前9時以降ですが、同じネットバンク同士では午前1時ころには着金が可能です。
法人口座は銀行で選ぶこともありますが、反対に効率や利便性、手数料の節約を考えて作ることも大切です。
自分の事業にとってメリットのある法人口座を選びましょう。